第6話 販売ゴーレム

 クラフトできる場所を確保するために、周囲にいるミニゴーレムを一掃した。

 これで、邪魔はされないだろう。

 アイテムボックスから、ブルースライムのコア✕100、ロックバードの石翼✕50、ミニゴーレムの心臓✕10を取り出す。

 合わせると、すごい数だ。これは動画映えるぞ!


「この大量の素材を使って、販売ゴーレムをクラフトします!」


 アプリのアイテムクラフトを開き、『レシビ:販売ゴーレム』を選ぶ。


◆販売ゴーレムの素材

 ・ブルースライムのコア ✕ 100

 ・ロックバードの石翼 ✕ 50

 ・ミニゴーレムの心臓 ✕ 10

  ↓

 ・販売ゴーレム ✕ 1


 と表示されていた。


『販売ゴーレムをクラフトしますか?』


 俺が『はい』ボタンを押すと、地面に置いていたたくさんの素材が輝き出す。

 そして光が収まったときには、販売ゴーレムが出来上がっていた。


 おおっ、大きさは俺と同じくらいだ。触ってみると、ミニゴーレムよりも頑丈そうだ。

 クラフトした販売ゴーレムを確かめていると、アプリに通知が届いた。


『アプリレベルが上がりました』

『アプリに販売ゴーレムの機能が追加されました』

『入手した素材やクラフトしたアイテムなどを販売ゴーレムで売れるようになります』


 やった! 思った通り、クラフトしたアイテムを売れるぞ!

 アプリの『販売ゴーレム』を選ぶ。

 新宿ダンジョンのどこに設置するのかとマップが表示される。マップは俺が訪れた場所しか表示されなかった。

 設置するなら、目立つ場所に置きたい。

 俺は販売ゴーレムをアイテムボックスに収める。


「これから、クラフトした販売ゴーレムをボスモンスターがいる部屋の入口に設置したいと思います」


 そこなら、否応なしに目にとまるはずだ。

 ミニゴーレムを倒して、ドロップ品を回収しながら、先に進んでいく。

 分かれ道が見えてきた。


「右に曲がるとボスモンスターの部屋があるはずです」


 そう言って分かれ道を曲がると、ボスモンスターの部屋の前にはたくさんの探索者が集まっていた。

 どうやら、これから集団で挑むみたいだ。ボスモンスターは強すぎるため、大人数でパーティーを組んで戦うのがセオリーだった。


「見てください! これがボスモンスターの部屋の扉です」


 金属製の分厚そうな開き扉があった。高さは俺の身長の4倍くらいはありそうだ。

 他の探索者の邪魔をしないように、販売ゴーレムを設置するためのマッピングだけさせてもらう。

 終わったところで、そそくさと分かれ道まで引き返す。その頃には、パーティーはボスモンスターの部屋へと入ってしまっていた。


「では、販売ゴーレムを設置します」


 アプリでマップの位置を指定する。ボスモンスター部屋の扉から少し右側だ。


『設置が完了しました』


 ちゃんとできたかを確認してみると、扉の横に鎮座していた。

 良い場所だ。あれなら絶対に目につくはず。

 次は売る物を販売ゴーレムに渡す。


「初級ポーションを10個売りたいと思います」


 アプリを操作して、販売ゴーレムに初級ポーション10個持たせて、価格を指定する。

 どうやら、物々交換ができるようだ。なら、欲張りかもしれないけど、初級ポーション1個に付き、必要な素材はこうしよう。


◆初級ポーション 1個 

【購入に必要な素材】

 ・ブルースライムのコア ✕ 20

 ・ロックバードの石翼 ✕ 5

 ・ミニゴーレムの心臓 ✕ 1


 この素材数なら、初級ポーションを10個売れた場合、販売ゴーレム1体と初級ポーション20個がクラフトできる。

 上手くいけば、新宿ダンジョンでの狩りをしなくても素材を集められるかもしれない。

 そろそろ他のダンジョンにも行ってみたいし、売れてほしいところだ。


「購入に必要な素材はいろいろとありますが、回復効果は折り紙付きです。ぜひ、訪れた際には買ってください」


 そして、最後に残った初級ポーションの1個を飲み干す。

 今日のダンジョン探索の疲れは、どこかに飛んでいった。全回復だ


「これで今日の動画は終わりです。販売ゴーレムを作ってみました。よかったらグットボタン、お気に入り登録をお願いします!」


 笑顔で締め括って、録画を止めた。

 ふぅー、やりきった感がすごい。

 アプリの『販売ゴーレム』を確認する。まだ売れてはいない。

 そのうち売れることを祈るのみだ。


「あれ? このボタンは……」


 動画撮影中は気が付かなったボタンがあった。『ブラックリスト』と書かれている。

 どうやら、販売したくない探索者を選べるようだ。

 試しに開いてみると、たくさんの探索者の名前が一覧で表示された。

 その中に山本亮一(闇短気)という名が目に入った。迷惑系配信者だ。

 もしかして、これが彼の本名なのかな?

 とりあえず、闇短気とブラックリストへ入れておいた。彼のために初級ポーションを売る気はなかったからだ。


「納屋に帰る前に、親孝行でもするか」


 両親に黙って、ダンジョン配信者をやっていることに後ろめたさがあったからだ。

 ブルースライムを10匹狩って、初級ポーションを2個作ろうと思う。

 それをジュースと言って、飲ませるのだ。きっと両親の腰痛が良くなるはずだ。


 最下層から上に引き返す。そして、1層目でお馴染みとなったブルースライム狩りに勤しんだ。


「やっぱり……強くなっているな。ブルースライムなら、いくらでも倒せそうだ」


 すぐにブルースライムのコアが10個集まってしまった。恐るべしチャンネル登録者数。

 登録者数が増えれば、強いモンスターがいるダンジョンも探索できるし、すごいアイテムクラフトができるかもしれない。

 夢は広がるばかりだった。

 初級ポーションを2個作った俺は、アプリで『帰還』を選んで納屋に帰ることにした。

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