第166話 幕間「旅の途中~ワイバーン討伐~」5/6
そして今、
昨日のうちに、昼間倒したワイバーンの死体を検分してみた。
表皮の細かい鱗は割と固く、鎖帷子のような働きをするようだ。
試しにフィリップに剣で斬りつけてもらったが、なかなか刃筋が通らないので効果的な斬撃ができないようだった。
実際にワイバーンの素材で皮鎧を造ると、軽くてしなやかなのにプレートメイル並みの防御力があるので、非常に高価で取引されるらしい。
しかし、銃弾に耐えられるほど強くはないのは既に実証済みだ。
上位個体である亜竜に進化していて、鱗が堅そうな黒いヤツには徹甲弾を。
普通のワイバーンには、散弾も45-70弾も通じたので、ダムダム弾を使えば更に効果的だろう。
まず徹甲弾のクリップを手に取ると、モーゼルライフルのボルトを開き、一気に装填した。
ボルトを閉じて一発目を薬室に送り込む。
距離は100メートル程なので、タンジェントサイトを100の目盛にあわせると、膝撃ちの姿勢で黒いワイバーンの眉間を狙う。
上位個体の鱗は普通のより堅いかもしれない、という経験値から考えても、徹甲弾で確実に倒しておかねばならない。
集中して呼吸を整えた石動は、静かに引き金を落とす。
ズダーンッ!
8ミリモーゼル弾の鋭い銃声と共に、黒いワイバーンの頭にパッと血飛沫が上がるのを石動の鋭い眼は見逃さなかった。
「(ヨシッ、貫通している)」
ギュアァァァァァァッ!
突然の攻撃に頭をもたげ、苦しむような叫び声をあげる黒いワイバーン。
その叫び声に他のワイバーン達も眼を覚まし、何事か? とキョロキョロしている。
石動は冷静にボルトを操作して次弾を装填すると、動いている頭は狙わず、羽の付け根と心臓付近を狙って残りの4発を立てつづけに撃ち込んだ。
叫び声を上げ続けている黒いワイバーンだが、巣から出る気配はない。
どうやら動けないようだ。
石動は次にダムダム弾のクリップをとり、また一気に
ダムダム弾の威力は凄まじく、初弾を頭に受けた子供のワイバーンは、文字通り頭が爆発したように無くなった。
次弾は、悲鳴のような叫び声をあげる母ワイバーンの羽の付け根に着弾し、ほとんど羽がもげてしまう。3発目は母ワイバーンの胸に大きな穴を空け、母ワイバーンの動きが止まった。
つがいで寝ていた2匹は巣から出て、こちらに向かって飛び立とうとしていた。
既に飛び立った1頭目は無視して、石動はもう一頭の飛び立とうと羽を広げたワイバーンの羽の付け根を狙って撃つ。
4発目は飛び立つ寸前だったワイバーンの羽を片方吹き飛ばしたので、撃たれたワイバーンはバランスを崩し転倒し、倒れ込む。
石動は5発目を、倒れたことで無防備になったワイバーンの頭に撃ち込み、頭の半分を消失させた。
怒り狂って飛来した生き残りのワイバーンは、こちらを襲おうとするが、林立する岩柱が邪魔で、狭い隙間にいる一行を襲えないで苛立っている。
どうしても下に降りられずに、空中で喚いていた。
「任せて」
ロサが石動に短く声を掛ける。
そしてホバリングするような形になっているワイバーンに、ロサが腰だめでマリーンM1895の連射を浴びせた。
至近距離で45-70弾を5発も胸に撃ち込まれたワイバーンは、たまらず逃げようとするが、途中で力尽きて地面に落ちてしまう。
再びダムダム弾のクリップをとると、素早くモーゼルライフルに再装填した石動は立ち上がって周りを見渡し、もはや動いているワイバーンがいないことを確かめた。
「イェーイ! やったね!」
近寄ってきたロサと笑顔でハイタッチを交わす。
そして、呆然としてこちらを見ているフィリップ達護衛騎士と冒険者に向かって、微笑む。
「さあ、止めを刺しに行きましょうか」
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