第139話 マリーンM1895
「(よ~し、エチレンをクラッキング処理すればトルエンが手に入る・・・・・・。トルエンを硫酸と硝酸を混ぜた混酸で硝化すればジニトロトルエンの完成だ。クラッキングとか硝化とか、本来なら工業プラントでしかできないものだけど、そこは錬金術スキルで何とかしてみせる・・・・・・緩燃剤であるジニトロトルエンが出来れば、無煙火薬の燃焼速度問題も解決だ! よしよし、面白くなってきたぞ!)」
次に石動はロサを見ると、駆け寄って両手をとる。
面食らったように立ち尽くしていたロサは、石動の反応にどうしたらいいかわからない様子だった。
「ロサ、君のおかげで重大な問題が解決できそうだよ! ありがとう!」
「なんだかよくわからないけど、役に立ったのならよかったわ」
ようやくロサも安心して表情が和らぎ、石動につられて笑顔になっていた。
石動にとってコークスなんてありふれたもので、全く珍しくもないものだ。
ロサとラビスの会話が無ければ、石炭からコークスを作る際にエチレンが抽出できるなんて、なかなか気がつかなかったに違いない。
たとえ気がついたとしても、もっと時間がかかっていただろう。
ロサの頬が少し紅くなっている。
それを見て、石動もずっとロサの手を握ったままだったのに気がついたが、なんとなく離すタイミングを逃してしまい、どうしようか迷ってうろたえる。
いい歳して何してるんだと、石動は自分でも思いながら、耳が熱くなった。
ロサの頬がますます紅くなり、少しもじもじしている。
「・・・・・・えっと、じゃあ、今日ももう少し頑張ろうか」
「えっ、ええ、私も作業に戻るね」
ラビスが砂糖を吐くようなうんざりした顔で、コークスを取りに作業室を出ていったのは、ふたりの雰囲気にあてられていたたまれなくなったからだろう。
それから二日後、石動はまたクレアシス王国郊外の岩山に来ていた。今回はロサも一緒だ。
ラビスから連絡があり、明日にはエチレンガスをいくつかの容器に密封した状態で持ってきてくれるらしい。
そこで今日はその前に、中距離で使える連発銃の試射ということで、石動は新たに造った銃を持ってきていた。
今回、石動が造ったのはマリーンM1895レバーアクション・ライフル銃である。
西部劇などでおなじみのレバーアクションライフルは、そのほとんどがウインチェスターM73か、M92モデルだ。
銃器設計の天才ジョン・ブローニングが改良したウィンチェスターM92やM94は、レバーアクション・ライフルとして完成されたものだったが、弱点としてレバーを操作するとフレーム上部がガバッと開いて上部から排夾する構造のため、機関部が露出することがあげられる。
そこから埃や砂塵が入り込みやすいうえ、フレームにスコープを取り付けるのが難しい構造になっているのだ。
そこでマリーン社はフレームを堅牢な一体型とし、側面排莢とすることで、機関部が露出しないレバーアクション・ライフルを製造し人気を得た。
堅牢な一体型フレームに新型のロッキングボルトシステムを備えたこのライフルは、最近アメリカの有名射撃インストラクターであるクリス・コスタ氏が「レバーガン・トレーニング」の中で、カスタムしたマリーン社のレバーアクション・ライフルを使用したので大人気になっている。
時代遅れの銃と思われていたレバーアクション・ライフルのカスタム内容としては、ハンドガードをM-Lokハンドガードに変えてフラッシュライトなどを装着し、
現代的にモディファイされたその姿は、もはや西部劇の面影はないほどカッコイイ。
また
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