第136話 ウインチェスターM12トレンチガン
2日後、新しく造りあげたウインチェスターM12
とりあえず、試射して試したいことがあったからだ。
まずは100メートル先の標的でシャープスライフルのサイトイン調整を済ませ、それから遠距離射撃の精度を確認してみる。
200メートルと300メートル先に置いた標的には、50-110WCF弾は良好な成績を叩き出した。
あきらかに黒色火薬弾よりピープサイトの修正目盛が少なくて済んだということは、弾頭があまりエネルギーを失わずに比較的緩やかな山なりの弾道を描いているということだ。
ところが、それ以上の距離になると途端に勢いを失ってしまうことが判明する。
400メートルでは弾道の落ち方が大きくなり、500メートルではそれが更に顕著となった。
弾頭を飛ばす圧力に対し、弾頭自体の重さの方が勝ってしまっているせいだろう。
これでは黒色火薬と変わらず、ヴァージニア・タンサイトで空を撃つような山なりの弾道で狙うしかない。
「う~ん、やはり弾速が足りないな。圧力を上げないと中距離までしか使えないということか。かりに小口径化しても、これでは火薬を改良しないと同じことだな・・・・・・」
やはりなんとかして緩燃剤を配合して、長距離射撃に対応できる無煙火薬を完成させねば、と石動は思いを新たにする。
それと同時に、ぶつかった壁の高さに憂鬱となった。思わず愚痴が石動の口からこぼれ出る。
「あ~あ、どっかにトルエンが落ちてないかなっ! ねぇねぇ、ラタちゃん知らない?」
ラタトスクは日陰の涼しい岩棚で、栗鼠姿のまま丸くなって寝ていたが、薄目を開けて答える。
『知ってるけど知らない。まぁ、気にしなくてももうすぐ見つかるよ』
「なんだそれ・・・・・・意味わからん。はぁ~」
石動はその日、何度目かの深いため息をつくのだった。
気分を変えるために、岩で出来た柱の幾つかに標的を張り付け、
マジックバッグからウインチェスターM12トレンチガン仕様を取り出す。
ヒートシールドと一体となった着剣装置に、以前壊れたシャープスライフルに付けていた銃剣を装着した。
次いで無煙火薬で自作した12ゲージの弾薬を取り出す。
今回作ったのは、9発の散弾が詰まったダブルオーバック《九粒弾》と、弾頭自体にライフリングのような溝を刻むことで、回転しながら安定した弾道で飛ばすことができるライフルドスラグ《一発弾》の2種類だ。
前世界のようにプラスチックが無いので、散弾といえども薬莢は全真鍮製のゴツイものだ。ダブルオーバックの先端はワッズと蝋で蓋をしてある。
石動はまずダブルオーバックを手に取ると、M12の
それから銃を裏返すと銃身の下に設えたチューブマガジンに次々と弾を込めた。
準備ができると、石動はスタートラインと決めた場所に移動して銃口を斜め前に向け、半身になってて構える。
フーッと息を吐くと、心の中で「GO!」と叫んで、突入と見立てた岩柱が何本もある中に駆けこんだ。
色々な高さの岩や砂で出来た柱が林立しているが、標的を張った柱が仮想敵だ。
飛び込んですぐに標的を貼った岩が眼に入った。
バウンッ! ジャキン チリンッ
石動は紙の標的に向けてM12を発砲し、9発の散弾を浴びせるとフォアアームをスライドさせて空になった薬莢を排出させ、次弾を送り込む。
排莢された大きな真鍮製の空薬きょうが地面に落ちて、チャリーンッといい音をたてた。
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