第100話 素材の店

*100話記念!

 二話連続公開します。こちらが一話目です。


 いつも応援頂き、ありがとうごさいます。これからもよろしくお願いします。


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「こちらこそよろしくお願いします。ええと、商隊でご一緒した責任者の方は・・・・・・」

「ああ、コムルパなら今朝早く、サントアリオスに戻っていったよ。必要事項は私が引継ぎしているので安心してくれ」

「そうでしたか。分かりました」


 石動イスルギは「(そうか、彼はコムルパという名前だったのか・・・・・・)」と思いつつ、オルキスの言葉に頷く。


「それで、なにか用事でもあったのかな? 衛兵隊からはまだ連絡はないぞ」

「ええ、実はお尋ねしたいこととお願いしたい件がありまして」


 石動は錬金術の素材について詳しい情報が無いかを尋ねてみる。

 併せて何処かドワーフの工房を紹介してもらえないかをお願いしてみた。


「ふむ、錬金術の素材と一口に言ってもどのようなものがあるか、私では分からないな。詳しいものに調べさせてみよう。ドワーフの工房なら取引している先が幾つかあるから、口を利くことは可能だ」

「ありがとうございます! ではさっそく・・・・・・」

「いやまて、ドワーフという奴らは偏屈でね。いきなり行っては逆効果かもしれない。まず、こちらから当たってみよう」


 オルキスは少し時間が欲しいと言い、明日また再訪する約束を交わす。

 商隊を守って盗賊団を壊滅してくれた恩義はこんなものでは返せないと、オルキスは錬金術の素材を扱っていそうな店や魔道具を造っている店などをいくつも教えてくれた。

 午後からはそれらの店を回ってみることにして、石動達はオルキスに礼を言うと、店を出た。


 オルキスに紹介された店は、錬金術の素材の店というより、ドワーフの工房で使用される様々な鉱石などを扱っている店だった。

 石動が想像していたより、ドワーフは金属を製錬する技術に長けているようだ。


 より強靭な金属を造りたい。

 より軽く折れない金属が欲しい。

 錆びにくい金属は造れないのか。

 店に置いてある鉱石や物質を見ると、そんなドワーフたちの思いが伝わってくるようだ。

 ドワーフに合金を造れる技術があるのが分かり、石動はワクワクしてくる。


 なかでも、クロム鉱石と褐鉛鉱があるのを見つけた時、石動は思わず声を上げそうになった。

 褐鉛鉱はバナジウムの原材料になりうる。

 クロムバナジウム鋼が造れれば、高温高圧に耐えられるので、ライフルの薬室や銃身にうってつけだ。濃硫酸や珪藻土も豊富にあることも確認できた。


 石動がよくわからない石ころや瓶に入った得体のしれない液体をみて、興奮して小さく歓声を上げたり、ガッツポーズをしたりするのを、ロサは冷ややかな目で見ていた。

 いつまでたっても石動が切り上げる様子がないので、ロサがしびれを切らす。

「ツトム、ねぇツトム。ツトムったら!」

「うぉっ、びっくりした。耳元で大声出さなくても聞こえるよ」

「なに言ってんの! 私が何回呼んだと思ってるのよ。ねぇ、わたしお腹が減ったんだけど」


 気がつくと昼食の時間をとうに過ぎ、お茶の時間に近づいていた。

 ばつの悪そうな顔で謝る石動に、ロサが言い放つ。

「ランチはツトムの奢りで良いわね」

「ははーっ。姫の仰せのままに」


 機嫌が直ったロサとともに、遅いランチを食べに行く事にする。

 ふたりは素材の店を出て、街の通りを賑やかな方へと歩きだした。



 ランチの後、まだ夕方までには時間があったので、オルキスに紹介されたほかの店に寄ってみた。

 当初、石動はドワーフを紹介してもらい話を聞いたうえで、いろいろと必要なものを確認してから素材を購入するつもりでいた。

 しかし、店を見て回るうちに、ついには我慢できず、石動はいくつか素材を購入してマジックバッグにしまい込む。


 夕方遅くに宿に戻った石動は、収穫があったので、ほくほく顔だった。

 ロサは退屈を持てあましたという顔を隠そうともしていなかったが、気にならなかった程だ。

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