第97話 エドワルドの狙い?
先程、宿屋の従業員がセットしていったらしい。
湯気の立つスープから肉料理や果物、ワインまであった。
エドワルドが既に席に着いていて、石動を手招きする。
「ザミエル殿、まずは食べようではないか! 冷めたらもったいないぞ。吾輩は食べてから風呂を頂くことにする!」
ロサと顔を見合わせて苦笑した石動は、テーブル席に着き、ワイングラスを手に取る。
「「「乾杯!」」」
3人でグラスを合わせ、ワインを飲んだ。
馥郁たる香りの深い味わいのワインで、非常に美味しい。
美味しいワインのおかげもあって、食事も捗った。まるで前世界のホテルのフランス料理の様に凝った料理で、美味しかったとしか言えない。
なんという料理名か、石動にはよくわからなかった。でも、牛肉の赤ワイン煮に似た料理が気に入った。
腹が減っていたので、わりとガツガツ食べてしまった。しばらく食べることに専念し、ようやく3人とも落ち着いてきたので、ワインを楽しむ余裕ができてくる。
ワインのグラスを干しながら、ロサが石動を見て尋ねる。
「ねえ、クレアシス王国に着いたけど、これからどうするの?」
「うん、まずはいろいろと調べたいかな。蝙蝠の魔物がたくさん住むという洞窟に行って、素材が採れるか試したい。ドワーフの山をくり抜く技術も知りたいし、鍛冶も習いたい。錬金術に使う材料や素材も珍しいものがあるはずだし」
「どうやって調べるつもりなの」
「ドワーフの工房や錬金術の素材を売っているところなんかは、ノークトゥアム商会で聞けば何とかなると思う。問題は蝙蝠の洞窟だな。冒険者に聞かないとダメかな・・・・・・」
「私たち冒険者じゃないけど、聞いたら教えてくれるのかな」
うーんと顔を見合わせる石動とロサ。
するとエドワルドがワインのグラス越しにニヤリと笑いかけてくる。
「吾輩、なにを隠そう、冒険者ランクは銀なのだ。明日、ギルドに行って聞いて来てやろうか」
「えっ、無理して付き合う必要はないですよ! エドワルドさんとは、もともとクレアシス王国までという話だったし」
「うむ、吾輩もそのつもりだったがな。盗賊の懸賞金の分配を貰うまで暇だし、何よりお主らと一緒におると面白いわ」
ハハハッと笑うエドワルド。
「なに、モノのついでじゃ。それに今、お主らと別れるとこの宿を出なければならぬ。それはなんとも惜しいでな」
「分かりました。じゃあお言葉に甘えます」
「承った!」
エドワルドがワインのグラスを持ち上げ、石動のそれに合わせると、チーンとグラスが鳴いた。
そのあと懸賞金で思い出した石動が、酔わないうちにと報酬の金貨30枚を3等分して分けようとすると、石動が多めにとるべきだとエドワルドやロサが主張して揉めた。
なんとか二人に納得してもらい10枚づつ分ける。その代わり、懸賞金はそれぞれの倒した人数が違うので、倒した者が倒した分を貰うことで了承させられた。
エドワルドが、食事を終えて「旅の埃を落としてくる」と言って、浴室に入る。
まもなくしてお湯で身体を流す音がし始めた。
その様子を横目に見ながら、石動はエドワルドの狙いはなんだろう、とあらためて考える。
クレアシス王国までの付き合いと言うなら、もう別れても良い頃合いだ。なのになんだかんだと理由をつけて同行しようとする。なにが目的なのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます