第75話 再会
念のため、最後の長身男の倒れている場所に向かってみると、なんと弱弱しいながらまだ息があった。
長身男はビクンッと痙攣したかと思うと、全身が弛緩し、死んだことが分かった。
「そう言えば、コイツらの名前も何も知らないままだったな・・・・・・。何だったんだ」
膝を着いて長身男の首筋に手を当てて確認していた石動は誰にともなく呟いた。
ラタトスクが再び念話でひそひそと呟いて警告してくる。
「さてと・・・・・・」
ラタトスクの警告を聞いた石動は立ち上がり、弓矢を拾って近づいてきたロサが自分の背後に回ったことを確認すると、目の前の森の木々に向かって話しかける。
「そろそろ出てきてくれるとありがたいんだがな。出てこないつもりなら強制的に出てくるように仕向けることになるけど?」
石動がゆっくりとシャープスライフルを構えて、右手奥の太い樹に狙いをつけた。
「いや、それには及ばぬ」
そう言いながら樹の影から巨体が現れる。それはドゥエイン・ジョンソン似のエドワルド・レーウェンフックだった。
「あんたもこいつらのお仲間かい?」
油断なく銃口をエドワルドに向けながら、石動は穏やかに話しかけた。
「無論、違うぞ! 吾輩は街でお主らが出立するのを見かけて、旅に合流して昨晩の話の続きをするのも良かろうと思い、急ぎ街道に出たのじゃ。
すると、こ奴らがお主たちをつけ回しているのに気付き、いざとなったら助太刀しようと跡をついてきたのだ」
エドワルドは、三人が倒れ伏す惨状を見ながら苦笑いを洩らす。
「全く余計な心配であったようだけどな」
「助太刀というわりには、ずっと樹の影からロサが人質になるのをただ見ていたようだが?」
石動はグッとシャープスライフルの狙いを定め、返答如何で直ぐにも発砲できるように引き金に指を添える。
エドワルドは悪びれもせず、頭をポリポリと掻き、恥ずかしげに下を向く。
「面目ない、出るタイミングを逸してしまってな。あっと思った時には既に始まってしまっておったし。
娘が盾にされたときは、吾輩が現れることであのハゲの注意を逸らして隙を作れるかと思い、樹の影から出ようとしたんじゃが・・・・・・その前に」
パッと顔を上げたエドワルドは、顔を紅潮させ好奇心丸出しで石動に歩み寄る。
「お主のその変わった槍は何じゃ?! 雷鳴の様な音と共に足を吹き飛ばしおった! 魔道具か?! どういう仕組みなんじゃ?! ちょっとだけでもいいから見せてくれんかのぉ」
でかい眼をキラキラさせながら笑顔で近づくエドワルドに、石動はすっかり毒気を抜かれてしまった。
フードの中のラタトスクに頭の中で話し掛ける。
「(ラタちゃん、どう思う?)」
『う~ん、嘘は言っていないようだけど・・・・・・読めないな。一つ確かなのは山脈を越えたところの帝国領の領主の息子って言うけどレーウェンフック家って私のデータベースに無いんだよね』
「(ラタちゃんって、帝国の貴族たちまで詳しいの?!)」
『貴族だけではなく地方領主やその分家などまでデータベースに網羅してあるよ』
「(スゲー! でもそれにも無いなら要注意という事だね。了解)」
ラタトスクとの会話を終えた石動は銃口を下げて構えを解き、ニコニコと笑顔のエドワルドへ向き直る。
「話は分かりました、エドワルドさん。とりあえず、話は後にして、この場をどうにかしてから街道に戻ろうと思います」
「その槍を見せてもらうのは・・・・・・?」
「却下です」
「そんな殺生な」
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