第2章 魔法学院(夏休み)

第26話 旅の準備

 色んな事が在ってけれども、やっと、前期末考査も無事終わったわ。


 やっと、夏休み! でも、学校から、魔法学院への見学に参加しなさいって、言われたの。テルースが参加するなら、私も、参加よ。もし、テルースが参加しないなら、私も、不参加よ。当然でしょ。


 でも、ゴールド先生にの前では、そんな素振りを出すことすら、出来なかったわ。でも、テルースも参加するって、後で、聞いて、飛び上がったわ。やったー。テルースと旅行よ。


 今回のメンバーも、ゴールド先生が説明したらしいけど、私は、全く記憶がないの。テルースのことしか、頭には、残っていないの。でも、いいでしょ。テルースに夢中なんだから。


 今度も、また、怒ったふりをしようなぁ。あの後は、テルースが、とても優しかったし、一晩中、私を抱いてくれたの。嬉しかったわ。


 それで、今日は、朝から、張り切って、魔法学院への見学旅行の準備をしていたの。そしたら、テルースったら、暇そうにしているのよ。私が、こんなに忙しいのに。だから、私の手伝いに来てって、言ってヤッタ。


 今は、私の言った通りに、アイテムボックスに服を入れているわ。


 「ユイカ、これも持っていくの?」


 テルースが、急に私に声を掛けて来たわ。全部、持っていくって言ったのに、いちいち聞いてくるの。どうして?


 「そうよ。そこにある物は、すべて、入れてね」


 何故か、テルースは、渋々私の荷物をアイテムボックスに放り込んでいっている。何が、不満なの。


 「ユイカ、まだ、あるの?」


 まただ。何故、テルースは、荷物を制限したがるの。いずれにしても、アイテムボックスに入れて持っていけるのに!


 「どうして、こんなに持っていくの? 行った先で買ってもいいよ」


 何言っているの。時間を掛けて、選んだ服よ。それを、旅先で、直ぐに手に入るとでも、思っているの? どうかしているわ。


 「旅先では、時間がないわ」


 ぷんぷん。まだ言っている。


 「そうだね。でも、持っていくものをもっと、絞った方が良くない?」


 まただ。


 「着替えが2,3着あればいいよ。後は、制服で過ごすし」


 テルースって、どうして、こんなに鈍感なのかしら。私が、テルースの為に、服を選んでいるのに。


 「明日、もう一日あるよ。残りは明日でも、いいんじゃない?」


 もう! 一緒に旅行の準備をするって、わくわくしないの? 


 「もう少しだから、待っていてよ」


 テルースったら、手が止まっているわよ。私のベッドの上で、寝転んでしまったわ。


 仕方がないので、自分で、アイテムボックスに荷物を入れていると、急に飛び上がって、言うのよ。


 「ねえ、ユイカ。持っていく荷物は、この部屋以外にあるの?」


 何を言っているの。この部屋の荷物だけに決まっているわ。


 「この部屋にある物だけよ。他の部屋の物は、持っていかないわ」


 私は、つい、怒ったように、言い放ってしまった。


 「そうだね。それなら、旅行先から、この部屋に入れたらいいだけだね」


 テルースは、何を言っているの。突拍子もないことを言うなんて。つい、本音が出てしまったわ。


 「テルースは、何を言っているの。旅行先から、此処に戻って来れるわけないわ」


 「それが、戻れるんだよ」

 

 テルースは、そう言って、部屋の隅の床に魔法陣を描いて、私に部屋の外に出るように、手を引っ張って行ったの。それから、急に、変な事を言うのよ。


 「ユイカ、僕に掴っていてね」


 えっ、何処に掴るの。こんな部屋の外で、何をするの。私を抱きたいのなら、部屋の中でしてよ。


 でも、テルースが、じっと、私を見つめているので、仕方なく、テルースの腰に抱き付いたわ。


 それを見てから、テルースが、何やら、呪文を唱えているの。そしたら、急に、部屋の中に移動したのよ。


 「わぁ、部屋の中だわ」


 私は、思わず、大声をだしてしまったわ。


 「ほら、移動できただろ」


 テルースは、自慢げに、私にどうだって、顔をしている。そして、急に、私の身体を抱きしめた。


 「本当ね。簡単に移動できるのね。テルース、これって、旅先からでもできるの?」


 ちょっと、びっくりしたけど、これって、転移魔法ね。それなら、旅先から、自分の部屋に戻る事ができるってこと?


 「できるよ。でも、必要な魔力量が移動する距離に応じで、大きくなるけどね」


 なーんだ。結局、テルースしか出来ないのじゃない。それじゃ、意味ないわ。


 「それじゃ、だめよ。私が、いつでも、好きに移動できないじゃない」


 「そうか。僕と一緒なら、いつでも移動できるよ。それじゃだめ?」


 「だめよ。テルースに内緒で、移動したいときもあるわ」


 「そうか。残念」


 テルースは、がっかりして、また、私ののベッドの上で、寝そべっている。私は、荷物の整理を始めたけど、テルースが気になって、集中できないわ。


 少しだけなら、いいかな? 何って、テルースといっしょにベッドで、横になるのよ。そして、テルースにこの前みたいに抱いて貰うの。明日もう一日あるし、明日できることは、明日でいいわね。


 少しだけだから、いいわね。私は、自分に言い聞かせて、ベッドの上のテルースの上に飛び着いた。

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