第14話 ●299 様 鳥籠の帝王を読んで美的センスを磨いちゃいました。前編

◎今回の読書会作品

 299 様

 鳥籠の帝王 (小説家になろう)


◎今回の読書会参加者

・加納友美 

 動物と話しが出来る大学一年生。

 どんな状況や作品にも、なりきりスキル発動により対応可能。

・エリマキトカゲのエリマキッチ

 古き良き流行を愛するエリマキトカゲ。解説役。 

・電気ウナギの電気ッチ

 アマゾン川で捕獲され日本にやって来た、マイペースなデンキウナギ。どこで飛び出すかわからない『ビリビリ』が口癖。目が見えない。



 すでに読書会は始まっています。


 エリマキッチは夜食にと、事前に所望していたイナゴの佃煮に舌鼓を打ちながら、テーブルの上で私に問いかけています。


 「友美ちゃん。このイナゴ美味しいな。チョベリグーだ。ところでブロマンスと言うのは知ってるかい?」


(チョベリグ?)

 「うん!男性同士の友情……に限らず、幅広い精神的繋がりを描いた作品だよね?」


 「ああ。以前に一度だけ、同人書籍版の読書会でゆうつむぎ様のブロマンスを題材にした作品、【幸村の海賊旗】を紹介させて頂いたのは記憶に新しいな」


 「ビリビリ。今回の作品は読書会初めての中華系BL・ビリビリブロマンス、ファンタジー作品ね。ビリビリ」


 電気ッチは、相変わらず転回困難な狭い水槽内で漂っています。


 「まずはこの作品を紹介する前に、中華系BL・ブロマンス作品の歴史を調べて来たから聞いて欲しい」


 「う、うん!エリマキッチお願い」


 「2021年頃から、日本でも中華系ブロマンス作品のアニメやドラマが多く配信されている。特にアニメだが、映像美、ストーリーなどクオリティーがとても高く、日本でもヒットしてる作品もあり注目度は増すばかりだ」


 「うん!」


 「具体的には羅小黒戦記、鎮魂、魔道祖師、天官賜福、陳情令、山河令などドラマやアニメでそのファンは多く、中華ブロマンス沼なんて言葉もあるくらい、ハマる人が激増しているんだ。そしてその多くが、ネット小説作品を原作としているんだ」


 「え?そうなの?中国にも投稿サイトあるの?」


 「おいおい友美ちゃん?当たり前田のクラッカーだぞ?そして多くの作品が日本語に翻訳されたり、アニメでは日本の有名声優による吹替版が配信されたりしているんだぞ」


 「……うん!」

 (エリマキッチのネタは古すぎて、たまによくわからないよ……)


 「更に、その中華ブロマンス・BL作品は2000年代前半の、中国小説投稿サイトが発達した頃から投稿されていたんだぞ。もちろん中国には、同性愛や性描写など日本よりも厳しい規制があり、初めは仲間うちだけの様な形で細々と投稿されていた。それが10年近くも続いていた……しかしその期間に規制との板挟みの中で、露骨ではない【匂わせ】と言う多彩な比喩を用いた表現方法も生まれ、本場の各作家様が試行錯誤していく中で、その高度な文章能力が生まれたとされる説も存在するんだ」


 「そうなんだね……」


 「そんな不遇とも言われる期間に、少ない愛好者のコミュニティの中で作家達はお互い切磋琢磨して、現在の中華ブロマンスと言うジャンルの手法や土台を固めていった。そして、それが近年表舞台に登場する様になり、そのクオリティーの高さに日本のBLファンも驚愕、ハマる人続出、中華系ブロマンス・BL作品は一つのコンテンツとして、皆を楽しませているエンタメと言う地位を確立させたと言う、現在があるんだ」


 「かなり前から存在はしてたんだね!」


 「日本の投稿サイトでは、中華ブロマンス作品は、まだまだ数が少ない。僕が事前に調査した結果では、小説家になろうでは、約30作品弱ほどしか発見出来なかった。作品全体の割合では約0.002%と言う、アッと驚くタメ五郎的な驚愕の数字なんだ」


 「すごいよね!」


 「そこで僕は、友美ちゃんには内緒で、今回の作者様の299様にインタビューして来たんだ」


 「え?そうなの?」


 「ああ。以下にまとめてある」


 ●質問

 ①中華系ブロマンス作品を書くきっかけ

299様「中華BLを書こうと決断した切っ掛けは、魔道祖師です。もともと中華BLが好きで書きたいと思う意思はあったのですが、なかなか踏み込めず……でも魔道祖師を知って、勇気を持てたというのが事実です」


 ②執筆で注意してる事

299様「どれだけの言葉を中国語に置き換えるか。です。日本で投稿している以上、全てを中国語というのは無理ですし、私自身も中国語が不明な所もたくさんあります。でも中国である上、そこでしかない物などは中国語で書いております」


 「大変なチャレンジだったんだね…………」


 「ああ。ところで、日本でも中国を題材にした、作品がたくさんあるだろ?」


 「うん……うん?」

 (まさか?!)


 「まずは西遊記、三国志、中華一番なんて言う作品もあったな」


 「うん……」


 「まだまだあるぞ、ふしぎ遊戯、珍遊記 -太郎とゆかいな仲間たち、悟空の大冒険、キングダム、蒼天航路、エンジェルリンクス、ラストエンペラー、カンフーハッスル、SPIRITPACT、パリピ孔明、十二国記、草むしり、後宮の烏、通霊姫、宋家の三姉妹、幻想魔伝 最遊記、レッドクリフ、雲のように風のように、仙界伝 封神演義、少林サッカー、ムーラン、来来キョンシーズ、からかい上手のテンテンちゃん、グレートウォール、ヒカルの碁(実写版)……」


(なんか変なの混ざってない?)


 「ちょ!ちょっと待って!エリマキッチ!」


 「なんだい?」


 「中国の作品がたくさんあるのはわかったから、今回の作品の話をしようよ」


 「ああそうだな!これは失礼した。許してチョンマゲ!」


 「…………」


 「ビリビリ、この作品は禿(とく)王朝と言う、一見平和だけど闇をビリビリ抱える国を舞台に殭屍(キョンシー)と呼ばれる、死体の化物が現れて……様々な事件に繋がるビリビリ。少年と青年が様々な事を、解き明かす過程で育む濃密なファンタジー作品よ」


 「ちょっと一言では言い表せない程、中身が詰まった濃厚な人間ドラマでもある!あらすじの記載内容表現だけ見ても、違う感じがするんだ。これも中華BL・ブロマンス作品の特徴ある手法だと思う」


 「うん!すごく楽しかったね!」


 「そして序盤は三人称の、更に神視点の表現も見られる魅力的な作品だ。序盤ですでに引き込まれた!」


 「ビリビリ、それに文体の美的センスが素晴らしいわビリビリ。音すらしない落下、端麗で儚げな見目の中に、しっかりと芯を通す心を持つと言うビリビリ表現は特に印象に残ったわビリビリ」


 「そうなんだよ!文体が中華ブロマンス作品らしく、幻想的な映画の光景が目に浮かぶ様で、とても綺麗で美しいから、何が起こっても作品全体が可憐で、グロさを感じないんだ……おや?友美ちゃん、そろそろ3時だぞ。3時のおやつは文明堂じゃないかな?」


 「……文明堂?なんかのネタなんだろうけど、全くわからないよ?」


 後編へ続きます。






 




 


 


 


 

 


 


 

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