世界の終わりに恋愛を

学生初心者@NIT所属

第1話 最後くらい素直な気持ちを伝えてみませんか?

 世界の終わり。終末。これが間近に迫っている。隕石はもう近く、とても眩しい。そんな朝がやってきた。助かるためのシェルターは確かに作られた。しかし、この隕石に耐えれるものはこの世に3つしかなく、とても狭かった。多くの人は入ることができず、死が近づいた世界を各々の暮らし方をして生きている。


 俺は、今日も学校へ行こうと思っている。まだ続いている高校へ。


 世界はこんな状況であるが、1度たりともライフラインは止まっていない。それは誰かが仕事をしている証拠であり、全ての人間が働かない環境は結局できることはないということの証明でもあった。結局、多くの人間はいつも通りの生活を続けている。

 まだ、こんな状況から助かろうと祈っている人などいるのだろうか。この希望がない世界で。

 死に場を目標に移動している人はどれだけいるのだろうか。


 そんなことを思いながら、今日もどれだけの欠席がいるだろうと考え始める。



〜〜〜〜〜



 そんなこんなで、最後の学校へ辿り着いた。まあ、明日の10時くらいまでなら絶対に生きてるけど休校だから。


「今日は実に悲しいが、最後の学校だ。みんなも私もだ。本当はこんな終わり方なんて嫌なんだかな。」


 そう。今日は最後。卒業というわけでもないこんな悲しい終わり方は他にあるだろうか?


「今日は連絡していた通り、1、2時間目はホームルームとなっているから最後に満喫しろよ。」


 まあ、逆を言うなら3、4時間目は普通に授業ってことだけど。4時間授業だし、いいか。そもそも、ちゃんと授業が行われるかも分からないけど。


「よっ!健介。」


「おはよ。幸樹。」


「今日で最後だぜ。実感はあるか。」


「あるわけねえだろ。あるやつなんて逆に何人いるか知りたいくらいだわ。」


 こいつは親友ともいえる剣崎幸樹。ゲームや勉強、アニメとかいろんな話をしてきたやつだ。


「そういえば、あの子に告らないのか。」


「あ、うん。そうだな。」


 そう。俺には好きな子がいる。クラスメイトの小倉千紗だ。一目惚れってわけではなかった。彼女の魅力に徐々に惹かれていったんだ。


「最後だぞ、最後。今日を逃したらもう絶対に伝えられない思いになるぞ。」


「やっぱそうだよな。」



〜〜1時間前に遡る〜〜



「今日で最後ね。」


 そう呟いていた。この人生の最後に後悔を残さないためのことを考えていたのが、言葉に少し漏れてしまったのがある。


 それにしても、この通勤ラッシュは最後なのね。

 今日は10月15日月曜と少し空いたのもあって考え深さがとてもあるわね。わざわざそっちに乗ろうとはやっぱ思わないけど。



〜〜〜〜〜






 全てが“最後”。後悔をしない選択を。



 スマホをいじっていたら、こんな広告を見つけた。


 選択ね。



 私は、鈴坂健介が好きだ。これは高1の時からだ。彼は何も意識をしていなかっただろうが。

 きっかけ。それは前期だけだったけれども図書委員会で一緒に活動する時があった。そのときに、彼のみんなが気づかないような作業を行なっているところを見て、気になり始めた。それが始まり。


 今の彼は私を好きになってくれている。それでも、私も彼も切り出せない。それが続いて今日になってしまった。今日行動しない選択肢を選ぶことは後悔に繋がる。そのためにはしっかりと機会を作らないと。


 それにしてもまだ広告なんてあるんだ。



〜〜ホームルームに戻る〜〜



「今日は放課後何をするの?」


「そうね。」


「やっぱ、千紗ってチキンよね。まあ、松崎さんもそうだけど。」


「うぅ。わかってるのよ。」


 そう、私はもう2年も思いを伝えられていないチキンだ。でも、この思いを伝えられる自信がない。


「何か手伝ったほうがいい?剣崎さんとかに伝えれば上手く誘えると思うけど。」


「んー。」


 なんだろうな。これをやってしまうのは負けたような気がしてしまう。でも、それをするのが1番かな。



〜〜



「やっぱし、何か手伝ったほうがいい?」


「うーん。千紗さんと話せるタイミングを作れるのならやって欲しいかな。自分1人じゃ無理な気がしてきたから。」


「OK。まあ、あっちはあっちで何か話してるようだけどな。」


「そうだね。まあ、すぐじゃなくてもいいし。」



〜〜〜〜〜



「それで?」


「まあ、そっちと同じような結果よ。私たちが場を提供する。それがあの2人のためでしょ。」


「そうだな。やっぱお前と幼馴染でよかったよ、華蓮。」


「そうね、幸樹。」


「まあ、こんなんでまた話し合いをする仲になるとはな。」


「まあ、そうゆうもんでしょ。結局は巡り合わせ。何かが違えば小学校の時ですら会話する機会はなかったと思うからね。」


「そうだな。」


「それにしても、千紗はチキンすぎるわね。」


「俺は、そんだ人だと思ってなかったけどな。しっかりしてるような印象しかなかったから。それにしても、そっちから意識させてくって相当大変じゃなかったか。」


「そうね。そのために情報を聞き出してたんだけど。」


「まあ、面白い経験だったよ。じゃあ、放課後に見届けてやろう。」


「このもどかしさがなくなって嬉しいわ。まあ、もうこんなことはやりたくないわね。」


「確かに。まあ、隕石は落ちるけど。」


「逆にすごいわね。こんなに隕石が近づいてきて、暑いってだけで済んでるの。」


「まあ、温暖化が終わって寒くなっていってるし。隕石の大きさは50kmくらいなんだからな。」



〜〜〜〜〜



 本当にこの環境を作ってくれた幸樹には感謝しないとな。まあ、会う機会はないだろうから、メッセージを送るしかないけど。


 学校は今、普段使う教室は開放されている。見て回ってもいいようにするためだ。これで空き教室に呼んでくれたんだ。


 よし。ここだな。


「こんなところに呼んで待たせてしまってすみませんね、小倉さん。」


「いえ。いいですよ。健介さん。」

 でも、同じ発想に行き着いたのね。華蓮と剣崎さんには感謝しないと。


「その、ですね。明日は隕石が落ちて死んでしまう。その前に伝えたいことがあって。」


「健介さん。あなたと私は多分。いや、絶対同じことを考えているでしょうね。」


「何を言ってるんです?」


「やっぱ、言葉にするのは恥ずかしいわね。」


「あの、その。」


「「付き合ってください!」」

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