第55話 鼻息

私は今指示されたものを着て、新宿駅の8番出口に来ている。


ちゃんと言われたものを着て来た。肩からアメーバのような緑色の半透明の液体がお尻の下まで垂れている。これはたぶんスライムだろう。服を溶かすやつだ、たぶん。服自体は普通のメイド服なんだけど。スライムの触感が肌に馴染んで良くフィットしている。ラバースーツのようで気持ちが良いのだ。もちろん大事なところは溶けていないから大丈夫だ。しかし、恥ずかしい。お尻が透けて見えているからだ。こんなものを着て電車に乗れとは、人の視線が気になってしょうがないではないか。クイーンは一体何を考えているんだ。


電車を降りると、8番出口へと向かった。8番出口を歩いていると、奥から1人の男がこちらへ向かって歩いて来た。男は持っているカバンを下に置くと、そのまま目の前を去っていった。カバンの中身はお金だった。私はカバンを持って8番出口を出ると、言われた通りに、カバンを開いてお金をばらまいた。しかし、この行為に何の意味があるのだろう。


お金をばらまくと、豚のようなお面を被った人たちが集まって来た。数十人はいるだろう。よくみると口から牙のようなものが見えている。彼らはフゴフゴと鼻息をたてると、お金に群がった。彼らはお金を回収すると、私の前に来て豚のお面をプレゼントしてくれた。私はそれを被ると、フゴフゴと鼻息をたてながら電車に乗り家へと帰った。なぜか頭はすっきりとしていた。豚のお面のおかげだろうか。


これで私は暫くの間奴らの洗脳から逃れることが出来るようだ。あとは敵に操られたふりでもしていれば大丈夫だろう。隙を見て奴らの計画を阻止する。これ以上キングたちに文書の力を悪用させる訳にはいかない。


キングめ、覚えていろよ。彼には私を裏切り術中を施した報復が待っている。

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