第34話 記憶

壁がガラス貼りの大きなタワーだ。外にはニューヨークの夜景が一望できる。僕らはタワーの最上階にあるオフィスのような所に移動させられた。事務机がたくさん並べて置いてある。初めて訪れた場所だ、でもどこかで見たような景色だ。


壁にエレベータが隣接してある。エレベータの上に英語で文字が書いてある、モランプタワー(Morump tower)。どこかで聞いたような名前のタワーだ。


僕らは美術館の入り口で囲まれていたところを間一髪逃れることができた。どうやらここに輸送されたのは僕たちだけらしい。誰かが助けてくれたのだろうか。セルゲイ達も何が起こったか分かっていないようだ、さっきからキョロキョロと落ち着かない様子だ。

部屋の中を探索してみた。どうやら下へ降りる階段は隣接していないらしい、さらに壁のエレベータも動かすことができない。僕らはこのビルの中に閉じ込められたようだ。


突如、モランプの肖像画が光り輝き小さなキーへと姿を変えた。このキーはどこかの机の引き出しを開けるキーに見える。引き出しの中に本物の文書が入っているに違いない。僕らは片っ端から机の鍵を開けていった。(なんだろうこの感じは、以前もこんなことがあった気がする)。だめだ、どの机も鍵が合わない。


「おい、この箱じゃないか?」、楓美子が何かを見つけた。一層上質な木材で作られた綺麗な虎柄の模様が入った箱が机の脇に置いてあった。



その時、エレベータが突然動き出した。一階からエレベータが上がってくる。すると僕の脊髄に電流のように悪寒が流れて体が硬直した。この感じは、身に覚えがある。突如僕の脳は瞬時に理解した。僕らは助けられたのではない、ここに誘い込まれたのだ。

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