+ world

@darefumi

第1話 プロローグ

俺の名前は流印・雷圧(レイン・ボルタ)。

新しい出向先が決まった。今度の出向先は大企業の研究所。その一角のプロジェクトに参加することになった。


働き始めてはや3ヶ月。以前の会社とは関係の無い会社へ出向となった。派遣元から紹介された会社である。分野も医療系から化学系へとシフトした。しかし、賃金は相変わらず変わらない。それでも働けるだけありがたいと我慢するしかないのか。


実はあの後話しを聞いてみると、以前の会社で大規模な予算削減があったらしく、多くのリストラ社員が出たらしい。もはや首切りに会う人間の方が多いぐらいではないか。ロボットによるオート化で人間の仕事が奪われているのだ。ならばロボットに税金をかけて人間に還元しなければ、人間は死に絶えるではないか。


怖い話しだ。そういえばここのところ円安と物価高で生活が厳しくなってるらしい。日本はどうなって行くのだろうか。それを言うなら海外はもっと大変だと言うけど。実際賃上げと物価高により、この五年でニューヨークでの日本円の価値が半分以下になったのだ。只事ではない。


豊かさで言えばお金の価値とはイコールでは無い。年収が上がれば生活水準も上がるし支出も増えるのだ。ついでにストレスも増えるし、シワも増えるらしい。今はパソコンさえあれば、アフリカでもニューヨークでも同じ環境が手に入る。サッカーボールみたいなものだ。サッカーもボールさえあれば世界中どこでもプレーが出来る。そういうことなら、世界はより良いものになったと言えるのだろう。そうとも限らないかもしれないが。


さて、僕はと言えば、相変わらず変わらない日々を過ごしている。新しい職場は地下鉄を乗り継いでバスで向かう。家からはざっと1時間。都会では通勤に2時間かけるのもザラだというから大変だ。


帰りは定時で帰る。残業している人が多いので、それを尻目に帰るのは多少忍びないが、遠慮せずに帰る。それでも帰り着くのは7時を超える。晩御飯は軽く済ませる。風呂に入ってからベッドで睡眠を取る。


悪夢は、、今でも見る。毎晩悪夢を見る。それも決まって同じ時間に、内容は異なるがどれも気持ち悪いものばかりだ。気持ちの悪い生き物、行きたくない場所、会いたくない人、強盗や怪人に襲われることもある。


悪夢というのはどうやら精神状態の不均一性から生まれる障害であるらしい。普段から充実した人生を送れていない場合にこのような症状が現れやすい、と神経科の医者が言っていた。僕に勧められたのは+(プラス)ワールドというゲームだ。いわゆるVRMMOと呼ばれる仮想空間で活動するタイプのゲームだ。


このゲームを始めてから、僕の人生は大きく変わっていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る