誰が彼女を殺したか? 前世の記憶を持つ俺が、前世で何者かに殺された姫と瓜二つの彼女に出会い、守ろうと奮闘する話。

来夢創雫

プロローグ

 時は15XX年。

 侍の身なりをした二人の若い男が一つの布団を挟み、向かい合って座っていた。彼らが見つめる先には、布団の上で目を閉じている若い女がいる。彼女は胸の上で手を組み、ただ静かに横たわっていた。 

 穏やかな顔だった。まるで眠っているようだ。

 彼女の肌は白く、透き通るほど美しい。胸の上で組まれた指の一本一本までもが、白く滑らかだった。閉じた瞼から覗く睫毛は長く、白い鼻は細く整っていた。目を開くとかなり美人だろう。だが、美しい彼女の目は二度と開くことはなかった。

 彼女の名は更姫さらひめ。年は17。


「まるで眠っているみたいだな。そうは思わないか、茂勝しげかつ

「ああ、そうだな」


 茂勝と呼ばれた男は、彼女へ向けていた視線を目の男に移した。目の前の男、名前は兼成かねなりと言う。茂勝と兼成は横たわっている彼女と同じ年だ。身分は違えど、三人は幼い頃から共に暮らしてきた仲だった。


「これが夢であってくれたなら」

「夢などではない。更姫はお隠れになられた。これが現実だ。兼成」

「しかし、誰が姫様をこんな目に。これからどうすればいいのだ。姫の祝言も近いというのに。ましてや輿入れの最中にこのようなこと」


 男達は震えた声で姫の名前をつぶやいた。

「更姫様……」

「更姫……」

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