第130話 砂漠の星

聖世紀1211年夏 アルバニ王国 アベル5歳


アベルたちが王宮の近くで黒龍たちの連絡と

王宮の動きを待って静かに待機していた。


どこからか綺麗な虫の鳴き声が聞こえるぐらい静かな夜だった。


「砂漠って夜は寒いんだね。お昼はあんなに暑いのにね。ほら、バエルも見てごらん。砂漠って何もないのに本当に星が綺麗に見えるんだね。」


アベルが感動してバエルに話しかける。

バエルが星を見上げながらアベルに答える。


「アベル、どこで見ても俺には昔から同じ星にしか見えないぜ。」


するとプルソンがバエルにすかさず突っ込む


「バエル様、初めて外に出た5歳の人の子が世界に触れて感動している瞬間なのに、いくら自分が夜目が効いて星がいつもよく見えるからといってそんな言い方してはいけませんよ。アベル君、砂漠は周りに何もないから星が街よりもよく見えるのですよ。」


アベルがキラキラした目で星を見つめながら返事をする。


「へーそうなんだ。この作戦が終わったらおばば様に星の話を聞こう。」


バエルがそんなアベルに呆れて


「今からヴァンパイヤを皆殺しに行くっ奴が呑気に星の話ね・・・」


アベルが星から目を離しバエルを見つめて


「何度も言うけど皆殺しはしないよ。そして今回は戦闘は無しだよ。」


バエルは欠伸をしながらアベルに答える。


「はいはい。理解しております。」


アベルとバエルとプルソンはそんなことを言いながら

砂漠特有の綺麗な星を眺めていた。

星の聖女もその姿をニコニコしながら眺めていた。

大賢者はハンにお手をさせようと頭を撫で何か小さな餌を与えながら試みていた。


しばらくすると王宮の扉の開く音がして五人ぐらいの兵士が馬に乗って勢いよく

駆け出していくのがみえた。

大賢者がボソッと


「一番前のデカい奴は下級ヴァンパイアだな。」


するとダリアスも目を細めて馬に乗る兵士たちを見つめてから


「下級ヴァンパイアの兵士はあやつ1人だけじゃのう。ほれアベルよ。門が開いたままじゃ。今がチャンスじゃぞ。」


それと同時にアベルの元に小さな龍がやってきて一枚の手紙になった。


「そうだね。でもおばば様ちょっと待ってね。黒龍から手紙がきたよ。うわ龍語だ。読んでプルソン」


と言って手紙を広げるとプルソンが手紙を読み始めた。


「なになに・・・こっちは終わった。後はしっかりと、くれぐれも気をつけてルマンドで待っている。黒龍。だってアベル」


丁度良い石の上に座っていた大賢者とダリアスが立ち上がって

星の聖女ダリアスがアベルの頭を撫でながら


「では、ワシらはそろそろ動き出すとするかのう。アベル無理はするなよ。」


アベルもしっかりとした顔でダリアスに大きく頷く

続けて大賢者パブロフはアベルに綺麗に一礼して満面の笑顔でアベルに


「アベル君、気をつけてな。素敵な君の物語はまた今度会うときに聞かせてくれたまえ。」


アベルも大賢者に綺麗に一礼すると2人の姿が掻き消えるように見えなくなった。


「おばば様も大賢者様もお気をつけて」


アベルは見えない2人に言葉を送った。

続けてアベルはハンとバエルに振り返って言う。


「さてと、僕たちも頑張って助けに行きましょう。」


ハンが頷くとバエルは当たり前だとばかりにアベルを見つめた。

そして一言バエルがアベルにわざとらしく言う。


「よーし。ヴァンバイアどもを皆殺しだ!!!」


するとプルソンも悪ノリしている。


「オ〜!」


アベルがため息をついてバエルとプルソンに突っ込む


「ハァ〜。バエル、プルソン・・・忍びこむんだよ。これたけ言われると本当に戦闘になりそうで僕は怖いよ。いいかい戦いは無しだ。」


アベルがすかさず修正するとバエルはニヤリと笑っている

プルソンは声を殺して笑っている。

さすが悪魔だ。


アベルがハンに跨るとバエルがアベルの肩に乗る。

するとアベルたちの姿がハンの闇移動とバエルの消える魔法により

闇に消えるように見えなくなった。

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