第67話 VS聖教会 黒龍無双

聖世紀1211年夏 バーク近く 海の見える草原 アベル5歳


ニヘルが肩をビクンとさせてびっくりした顔で黒龍に聞く。


「あんたは?」


黒龍がニヤリと笑って答える。


「通りすがりの親子連れだ。」


黒龍が微笑んでい目が兄妹は不思議そうに黒龍を見ている。

黒龍流のジョークのようだ。

クリシアが他人を巻き込まないように黒龍に忠告する。


「この人たち聖教会の騎士団よ。あなた私たちに関わらない方がいいわよ。」


それを聞いた黒龍はクリシアを手で軽く制して

肩を回しながらドラゴニュート兄妹の前に二、三歩出てくる。


黒龍はドラゴニュート兄妹と騎士団の間に腕を組んで仁王立ちする。


その黒龍の行動を見た騎士団長が叫ぶ。


「なんだこいつは? 1人増えたところで結果はなにもや変わらん!!! 神の御名において全員をこの場で粛清しろ! !!」


アベルとハンとバエルは邪魔にならないように少し後ろに下がる。


黒龍が両手の指をポキポキ鳴らしながら騎士団長に


「お前たちに命を狙われた親父と殺された護衛たちの八つ当たりだ。今ここで利子つけて返すぜ。リトルドラゴンよ、よく見ておきなさい。」


「はい。黒龍先生」


ドラゴニュート兄妹の2人が顔を見合わせて


「黒龍? リトルドラゴン?」


騎士たちが黒龍の雰囲氣に押され盾と剣を構え直す。

黒龍は無手で軽く構えて指でかかってこいと手招きをする。


7人の騎士団員の外側の2人が左右同時に黒龍に向かって剣を振ってくる。


黒龍は左側の騎士の剣を右に躱し、右側の騎士の剣を素手で掴んだ。

左側の騎士の左足に黒龍は右足でローキックを素早く決めた。

蹴られた騎士の左足は乾いた音を発して膝から下が真っ二つに折れて

バランスを崩した騎士はその場に倒れ痛さに地面をのたうち回った。

黒龍はのたうち回る騎士の頭を左足で蹴って絶命させる。

蹴られた騎士はピクリとも動かない。

黒龍の右手にはもう片方の騎士の剣が握られたままだった。


そして黒龍は素早く右側の騎士の剣を折って

騎士が構えた盾の上から力を込めた左の正拳突きを綺麗に放つ。


黒龍の正拳は盾を突き破って純白の鎧の腹部に食い込んでいる。

正拳を受けた騎士は腹と口から血を流しその場に崩れ落ち絶命する。


一瞬の出来事にアベルは目を丸くして驚いている。


バエルは『ヒュー』と口笛を吹く(猫が口笛を吹けるのかは知らない。)


ドラゴニュートの兄妹も見事な黒龍の動きを見て驚いている。

ニヘルが黒龍のパワーに驚いてクリシアに言う。


「クリシア、世界は広いな。素手で盾越しに鎧を破壊できるもんかね。」


クリシアも驚きながらニヘルに答える。


「我らドラゴニュートもパワーがあるけどあんなことできないわ。」


するとアベルが自慢げにドラゴニュート兄妹に言う。


「あのね、僕の先生は特別なんだよ。」


話しかけられたドラゴニュート兄妹がアベルの顔を二度見して

2人とも額をじっと見つめている。


「龍王様の使徒様?」


兄弟が同時に呟く。


「僕はアベルだよ。」


騎士団長ベケムスは、黒龍の攻撃を信じられないとおどろいた顔をしたが

すぐ気を取り直し次の騎士に攻撃するよう命令した。


「怯むな、相手は素手だ必ず粛清せよ! 」


「はっ」


1人の騎士が盾と剣を構えて黒龍と対峙する。


騎士が素早く黒龍に近づき剣で喉元を狙って突きを放つ。

黒龍はその突きを一歩踏み込んで向かってくる剣を躱わす。


一瞬、黒龍は少し体を沈めて騎士の次の動きを見ている。


騎士は素早く剣を引いて黒龍の首を狙って剣を水平に振り払う動作に入る。

黒龍は構えたまま低く騎士の懐に見事なスピードで踏み込んで

騎士の顎に向けて右アッパーをフィニッシュブローのように決める。


騎士の体が黒龍の右アッパーで1メートルほど浮き

騎士の顎か砕けて顔が完全に変形している。

そして騎士は地上にスローモーションのように崩れ落ちて動かなくなった。


アベルが後ろから黒龍に質問する。


「ねえねえ、黒龍先生のその技は何ですか?」


黒龍は笑顔でアベルに


「アベル、これは技とかスキルとかじゃなくて、ただ殴って蹴っただけだよ。」


「へぇー・・・と言うことはオンジの馬鹿力と一緒だね。」


黒龍が振り向いてアベルの方を向いて


「ハハハ、そう言えばそうだな。アベル。」


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