第8話 正月行くところがない
師走、母と私は斉藤家に行った。
「正月、秀くん、可奈ちゃんと行くところがないのよ」
母が、叔母に言った。
「真也さんに、話してみるね」
その夜、義叔父が「このマンションで、おじいちゃん、おばあちゃん、と、可奈ちゃんたちが過ごしたらいい」と、言ってくれた。
「叔母さんたちを追い出すみたいで酷いよ」
兄は、反対し、怒っていた。
「もう、話はついたから。そうなったから。斉藤一家は、いつでも、どこでも楽しく過ごすから気にしなくていい」
兄は、しかめっ面して考え込んでいた。
年末、斉藤家族は、もういなかった。
リビングのテレビが大型に買い替えられていた。
お正月、斉藤家族がどう過ごしたか、知らない。
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