【百合】転生聖女にやたら懐かれて苦労している悪役令嬢ですがそのことを知らない婚約者に「聖女様を虐めている」と糾弾されました、死刑だそうです
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第1話 聖女と悪役令嬢には秘密がある
「リリーナ・ノワール公爵令嬢、聖女サクラの命を狙った咎でお前を死刑に処す!」
「まあ、なんて恐ろしいことでしょう」
魔法学校の卒業パーティーの場。
本来私をエスコートする立場である金髪の青年は小柄な少女の肩を抱き寄せ叫んだ。
その人物、リアム第一王子と私は六歳の頃から婚約関係である。
しかし彼が私を妻にすることを望んでいないのは前々から知っていた。
リアム王子は親に決められた結婚というのがそもそも気に入らないのだ。
愛する女性は自分で決めたかったという愚痴を何度も聞いたことがある。
そして魔法学校に入学して間もなく彼は私以外の女生徒と親密になった。
私はそれを悲しいとも思わなかった。
だがこの婚姻は王命であり、同年齢である私たちは魔法学校を卒業した翌年結婚式を挙げることが決まっている。
王子がそれを中止させたいと思っているのは薄々察していた。
私の悪評を子飼いの貴族子弟を使ってばらまいたり、国王夫妻に私が次期王妃として不適格だと訴えてみたり。
だがそのどれも王たちに婚約解消を決断させる決め手にはならなかった。
しかしこのような暴挙に出るとは。いや予想はしていたが実際起こってみると信じられないという気持ちが強い。
リアム王子が次期国王第一候補であるとはいえ、私は公爵家の人間であり何より王が決めた彼の婚約者だ。
それに対し王子が卒業パーティーの場で処刑を宣言するなんて有り得ない。
彼の並べた罪状が全て偽りであることもだが、私の処刑許可など王は与えてないだろう。
このような浅薄で向こう見ずな人物が次期国王になるなんて本当に恐ろしいことだった。
だからそう呟いたのだ。
リアム王子は私の発言を都合のいいように捉えたようでにやつきながら罵倒を続けた。
「そうだ、お前はなんて恐ろしいことを企んだのだ。この悪役令嬢が!」
「悪役令嬢……ですか?」
私は扇で口元を隠しながら王子の傍らに居る桃色の髪の少女を見る。
背が低く華奢な体型と頭の高い位置で結われたツインテール。
髪と首元に飾られた大きな赤いリボンとピンク色のフリルだらけのドレス。似合ってはいるが淑女らしさはない。
学校内で「お花畑」と呼ばれていた彼女のことを私はよく知っていた。
ちなみに私は銀色の長い髪に吊り上がり気味の氷のような瞳のせいで氷の魔女というあだ名がつけられているらしい。
「ああ、聖女サクラが入学した時からずっとお前は彼女を虐めていた!目撃者も大勢いるぞ!!」
高々に叫ぶ王子に抱えられている彼女の名はサクラ・スノーホワイト。
平民の出身だが強い光の魔力を持っていた為、三年前男爵家の養子に迎えられた少女だ。
そんなサクラは入学式当日、公爵家の娘である私に「げっ、悪役令嬢リリーナ!初日からエンカウントって最悪!」と叫んだ。
大騒ぎになったのでこの場にいる卒業生たちの大半は今も覚えているだろう。
稀有な光の魔力の保持者といえ平民上がりの男爵令嬢が公爵家の人間を呼び捨てるなど有り得ないことなのだから。
私が庇わなければ退学になったかもしれない。
「だって私もリリーナも同じ貴族だよ?王子が特別なのはわかるけど、でも同じ生徒じゃない!」
無礼に対する謝罪どころか、けろりとした顔でそんな風に告げられて逆に面白くなってしまったのが駄目だった。
淑女教育をほぼ受けずに入学してきたらしいサクラ。
そのせいか令嬢らしい気品は皆無で行儀作法も壊滅的だった。
豊富な光の魔力が無ければ私が庇ったとしても早々に退学させられていただろう。
元々この国には少ない光属性の保有者で、しかも潤沢な魔力を持つ彼女。
潜在能力なら歴代聖女にも引けを取らないと言う噂で、実際彼女は無詠唱で高度な光魔法を扱うことが出来た。
しかしだからと言ってサクラが生徒や教師に尊敬されたかというと話は別だ。
理由を説明するなら「私は次期聖女でこの世界のヒロインなのよ」という若干意味不明で傲慢極まりない言動。
私を始めとして高位貴族の子息子女を許しなく呼び捨てにするなど身分差を弁えない無礼な態度。
美形の男子生徒や教師にしつこく話しかけようとするみっともなさ。
確かリアム王子にも一時期やたらアプローチをしていた。私という婚約者の存在を知った上でだ。
だが流石の彼も外見美少女の中身が爆弾のようなサクラはお気に召さなかったらしい。
いや彼は私以上に身分差を気にする男なのだ。簡単に言えば自分を敬わない人間が大嫌いなのである。
だから私はサクラがリアム王子に近づく度に慌てて引き剥がした。それが嫉妬で虐めていると周囲から見えたかもしれない。
そんなことをしたのは不機嫌な婚約者に八つ当たりされるのも嫌だし、この頭の悪すぎる同級生がそのせいで処刑されるのも寝覚めが悪いからだ。
彼女は馬鹿だが性格自体は悪くない。こんな裏表の無さすぎる娘を貴族なんかにした大人たちが悪い。
そんな風に考えてしまった時点で、私も彼女の謎の魅力に惑わされていたのだろうか。
言ってしまえば私はサクラのことを気に入っていた。そして友達などいない彼女も私に懐いていたと思う。
だから命を狙うなんて有り得ない。
しかし王子にとってそんなことはどうでもいいのだ。私に興味を持ってないのだから。
彼にとって政略婚相手の私はずっと自分の恋の邪魔をする悪女でしかないのだろう。
だが王子は平民上がりの癖に馴れ馴れしいとサクラも嫌っていた筈だ。
私に彼女を退学するまで追い詰めろと言ったことさえある。録音魔法で保管して置けばよかった。
彼だけでなく生徒の大半からサクラは嫌われ者だった。
好意的なのは彼女の容姿を気に入っているらしい一部の男子生徒ぐらいだった。
これだから平民の女はという陰口も数えきれない程聞いたことがある。
その度に平民女性に対する風評被害だと感じたものだった。
この国には奴隷階級こそいないが厳しい身分制度が存在する。
平民であってもそれを知らない筈が無い。
サクラは平民とか貴族とかそういう括りは関係なく変人なだけだ。
実際会話して知ったが彼女はこの国の常識を驚く程知らなかった。
だが彼女は嘘を吐かなかった。宣言通り聖女になる為の試練をクリアしたのだ。
最上級生となった時点で、この国全体を魔物から護る光の障壁を生み出せるまでにサクラの魔力は成長していた。
彼女は卒業した後、この国の守護聖者という立場になる。それは王家と並ぶ地位だ。
だからこうやって悪しき思惑を持つものに存在を利用されるようになったのか。
私は王子を冷めた目で見つめた。
しかしあの衝撃的な出会いから三年後、再度悪役令嬢と謗(そし)られるとは。
しかも自分の婚約者からである。
呆れを通り越してつい笑ってしまった。
「ふふ。わたくしが悪役……ですか?」
「なっ、何がおかしい!」
「殿下は今わたくしが聖女様の命を狙ったと仰いましたね」
「ああ、お前が得意とする闇魔法で殺害を企てただろう」
「これはおかしなことを……わたくしごときの闇魔法で聖女様を傷つけられるとでも?」
彼女の魔法訓練に何年も付き合っていた私だからわかる。
最初こそ私の闇魔法の方が強かったが、今のサクラの光魔法は今や属性関係なくこの国で一番強力だ。
防御障壁だけでない。彼女は高位の攻撃魔法を魔力消費を大して気にせず、ほぼ無詠唱で連発できるのだ。
私の全魔力を後先考えず攻撃に費やしても正面から戦えば全く太刀打ちが出来ない。だからこそサクラは聖女になれたのだ。
問題は王子の誘いに簡単に引っ掛かって囚われてしまう頭の残念さである。
魔力の百分の一でも知力があればと何度思ったことだろう。聖女として真っ当に働けるか不安でしかない。
だが既に彼女専用の神殿の建設は始まっていると聞く。卒業したらとても遠い存在になるのだ。
急に胸が苦しくなって私は溜息を吐いた。
この気持ちはただ隙だらけな彼女の将来を案じているだけだと自分に言い聞かせる。
「だから卑怯な手を使ったのだろう、俺ともう一人の善良な人物が助けなければ聖女は息絶えていた!大罪だ!」
リアム王子がサクラの肩を更に強く抱き寄せた。一応彼は美形の部類に入る男性だ。
しかし面食いな筈の少女は頬を染めるどころか、不快そうに顔を歪めるだけだった。
彼女の為に激怒し私を裁こうとしている第一王子はけれどそれに気づいていないようだ。
「見ろ、彼女の額にお前が呪った証拠がある!」
そう言って王子は自分が抱き寄せた少女の前髪を強く掴み上げた。
乱暴な行動に事態を見守っていた生徒や教師たちの中から小さく抗議の声が上がる。
傍若無人だったサクラのことを好きな人間はこの場には余りいない。
しかし相手が嫌われ者だからといって何をしても許される訳ではないのだ。
何より今の彼女は聖女の称号を持っている。
彼が第一王子でなければ狼藉を理由に既に兵に取り押さえられていただろう。
「まあ、聖女様になんて乱暴なことを……」
「女性はもっと優しく扱って差し上げるべきでは……」
「うるさい!それよりも額の刻印を見ろ!」
そういって罪人を突き出すように王子は項垂れる少女を見物客たちに見せつけた。
サクラの小さな額には確かに黒く輝く百合の形の紋様が浮かんでいる。
それはノワール公爵家の家紋だった。
私以外にも気づいた生徒たちが次々に声を上げる。
「あの黒い紋様は、確かに……」
「ノワール公爵令嬢は本当に呪詛を……?」
「だとしたらなんて恐ろしいこと……」
自分への非難よりも私に対する疑念の声の方が増えたことに気を良くしたのか王子は胸を張り私を指差した。
「女神の愛し子である聖女の地位は王族と同等……浅はかなお前は知らなかったようだな、リリーナ」
「いいえ、授業と王子妃教育で学びましたので存じ上げております」
「うっ、うるさい。俺が言いたいのはその身を害したなら公爵家の人間だろうと死罪は免れないってことだ!だからお前は処刑される!」
その宣言に背後の生徒たちから悲鳴と驚きが上がる。
一生に一度しかない卒業パーティーの場を血なまぐさい話題で台無しにされて可哀想だ。私は少し申し訳なく思った。
「ええっ、リリーナ様が処刑されるなんて……そんな!」
「でも聖女の命を奪おうとしたのだから……」
「そもそもあの高潔な方が聖女の命を狙うなんてあり得ませんわ!」
「大体どうしてノワール公爵令嬢が聖女を害そうとするのですか、納得できません!」
聞こえてくる台詞には王子に対する抗議の声も少なからずあった。
リアム第一王子は地位と外見こそ優れていたが、人格と頭脳と行動に褒められる部分は皆無だった。人望が無いのだ。
昔のサクラほど強く嫌悪されていた訳では無かったが、それは良くも悪くも彼女が強烈過ぎただけだ。
私は扇を閉じて王子たちの元へ近づく。そして声を張り上げた。
「わたくしに聖女様の命を狙う理由など一切ございません」
そんな私の言葉を王子は鼻で笑う。
「いやある!聖女は俺に惚れていて、それを知ったお前は嫉妬で彼女を殺そうとしたのだ!」
「そのようなことは断じて有り得ません」
「つまり全部自業自得だ!醜い嫉妬で自身の命と公爵家の将来を途絶えさせることを地獄で嘆くがいい!」
一方的に話し続ける王子に私は更に近づいた。手を伸ばせば触れられる位置まで来たところで彼が「寄るな」と叫ぶ。
だから私はそこで足を止めて口を開いた。
「……随分と稚拙な筋書でしたが、それは殿下がお考えになられたのですか?」
「なっ、それは……うるさい!」
「それとも殿下を誘惑した毒蛇の企みでしょうか……疾風の暗刃!」
しどろもどろになった王子を前に私は低級の闇魔法を発動させた。
「ひっ、うわああっ!!」
私の指先から放たれた魔力が狙った人物へ一直線に向かう。
己が殺されると思ったのかリアム王子は慌ててサクラを自らの盾にした。
結果、私の魔法が聖女に襲い掛かる。
「きゃあああっ!」
「ひっ……」
凄惨な光景を予想したのか甲高い悲鳴が幾つも上がった。
私はそれらを安心させる為に優しく告げる。
「安心してください、聖女様の玉体が私ごときに傷つけられる筈はありません。そう、せいぜい首のリボンを断ち切る程度です」
私の言葉に皆が桃色の髪の少女の首に目をやる。
目立つ真紅のリボンは床に落ち、そして隠されていたものが露見した。
細い首にぴったりと巻き付いた赤黒く細い紐。
生贄の血で染まった呪いのアクセサリーには見覚えがある。家の魔術書に掲載されていたのだ。
毒蛇のチョーカー。
装着した相手の魔力を吸い上げ衰弱死させる恐ろしいもの。
城の隠し宝物庫に厳重に保管されている筈の魔道具だ。
私はそれをフロア上に響くような声で伝えた。これを持ち出せるのは王族のみ。
聖女サクラの命を奪おうとした犯人は、私ではなくリアム王子なのだと。
「聖女様に対しこのように恐ろしい邪法が刻み込まれた首輪をつけるとは……女神をも恐れぬ行為ですね、殿下」
「なっ、なぜ……」
「なぜ気づいたか、ですか?闇魔法の使い手は邪悪な気配に敏感になるのですよ」
だからこそ王族の婚姻相手に選ばれやすいのです。
王家の人間なら当然知っている筈のことだが彼は初めて聞いたような顔をした。きっと教えてもらったが即忘れたのだろう。
そういう男だ。こんな男がサクラを利用し命まで奪おうとしたのか。許せない。
いや共犯もいた筈だ。私はその名を口にする。
艶やかな黒髪とメリハリのある体つきをして、いつも私を睨みつけていた一人の女生徒の名を。
「殿下の秘密の恋人は確か去年からずっとアンジー・アロウズ伯爵令嬢ですよね、同学年内ではわたくしの次に闇魔法が得意だったと記憶しております」
そして私が王子の婚約者だからだろうか、アンジーは私を目の敵にしていた。
私がサクラを平民上がりという理由で虐めているという噂を校内で撒き散らしているという話も聞いたことがある。
無抵抗な彼女に対し攻撃魔法を放っている姿を見たと。
そういった誤解をされる事には慣れていたのと、一部事実が混ざっていた為放置したのは不味かったかもしれない。
彼女と王子の関係を知りながら黙認していたのは他にも理由があったのだが。それら全部が悪手だったということだ。
私にも、そして恐らくは彼らにも。
「なっ、しっ」
何故知っているのか。王子がそう言いたいのだと理解できるのは付き合いだけは長いからだ。
「入学して以降殿下の女性遍歴はずっと把握しておりますわ。一時の寵愛だけでなく王妃の座まで狙った娘は初めてですが……」
そして私と聖女の命までも。
私の言葉にパーティー会場は静まり返った。声が聞こえやすくなって好都合だ。
「私欲の為に聖女を攫い無理やり邪法をかけ魔力と命を奪おうとするとは……王族といえど許されない行為ですよ、殿下」
「ち、違う……」
私は怒りを抑えながら婚約者の青年に言う。いやもう元をつけていいだろう。
彼は少し前までの傲慢さが嘘のように冷や汗をかき後退った。
そんな王子と私の間を掻い潜るようにカラスが飛んできて私の肩に止まった。
当然ただの鳥ではない。父の使い魔だ。壁など容易に擦り抜ける。
闇のカラスは私たち一族にしか解読出来ない鳴き声で私に父からの伝言を告げた。
「そうですね……どう違うのかは国王陛下の前で仰ってください、殿下の恋人はもう捕らえられたようですので」
「な、アンジーに何かしたらお前ら全員死刑だぞ!」
そう立場も弁えず王子が叫んだ瞬間、パキリと乾いた音がする。
視線を動かすとサクラの首に蛇のように巻き付いていた呪いの黒紐がボロボロになって地面に落ちていくところだった。
きっと彼女の魔力量が予想より多くパンクしてしまったのだろう。呪具もそして術者の方も。
流石聖女と言うべきだろうか。
サクラは自由になった声で思い切り叫んだ。
「ちょっと! そんなバカ王子構うより私を助けてよね、リリーナ!」
「……流石聖女様、自力で呪法を打ち破るとは流石ですわ」
「ほんっと、いじわるなんだから!そういうの嫌いじゃないけど!!」
三年かけたけれどこの口調と性格はとうとう矯正できなかったわね。
私は苦笑いを浮かべながら悪友に近づく。
彼女は待ちきれないように自分から私の腕にしがみついてきた。
「な、リリーナ、お前、そいつと……」
「ええ、わたくしと彼女は一年生の頃からとても親しくしております。命を狙うどころか、身を挺して御守りする覚悟ですわ」
ご存じなかったのですか?仮にも私の婚約者でしたのに。
彼が私に全く興味がないことを承知の上で冷たく告げる。
「そうだよ、私とリリーナは転生仲間で、いやそれよりもカス王子、よくも私を騙してくれたわね!」
二人だけで秘密の話があるとか言われたから愛の告白かと思ったじゃない!王子エンドかと思ったのに!
そう見物人たちの目も弁えず叫ぶ聖女を私は抱きしめ、こっそりとその腹を闇の魔力を込めた拳で殴った。
「ぐふっ!」
「皆様、聖女様はどうやら一時的に錯乱されているようです、誘拐され酷い目にあったのだから仕方ありませんね……?」
私の言葉に成り行きを見守っている生徒たちがこくこくと頷く。
それを確認してから私は抱き寄せてたサクラにこっそり囁いた。
「全く、乙女ゲー脳とやらは卒業するって言うのは嘘だったの?」
「い、いや私は、アホ王子の告白を断ろうと思って……王妃とか絶対無理だし」
同じく小声で返してきた彼女の言葉を一応は信じてみることにして、私は呆然としている王子に視線を移した。
「リアム殿下、貴男は恋人と共謀し聖女サクラを攫い冤罪という形でわたくしの処刑を企んだ。重罪は覚悟されることです」
「そうだそうだ、私を後ろから殴って気絶させたこともジューザイなんだから!!」
「うるさい、それよりもアンジーはどうなったんだっ!!彼女に何かしたら許さんぞ!!」
子供のように怒るサクラを無視して私は王子の発言内容を考える。
この期に及んでまだ許さないなどと口に出来るのかと呆れながら私は答えを返した。
「……聖女に呪いをかけた術者が彼女なら、強大過ぎる光の魔力に焼かれ激痛の渦中にいるかと思います」
命あるならばですが。私の言葉に王子は半泣きになる。
サクラは先程毒蛇のチョーカーを破壊する為に意図して自身の魔力を注ぎ込んだ。
結果チョーカーは破壊されたが、その直前まで凄まじい魔力が術者にも届いていた筈だ。
水を入れすぎた風船の末路を私は想像した。
「う、嘘だっ!」
「嘘ではありません、魔力吸収とはかける側にもリスクの高い術。だからこそあの呪具も王室が厳重に管理していたのです」
「だがっ、アンジーは優秀な自分なら使いこなせると……」
「アロウズ伯爵令嬢がこの場にいないのは呪具を発動させるだけで、かなり消耗されたからでは?」
「それは……」
私の予想は当たっていたらしく王子の声が目に見えて勢いを無くす。よく見れば青い瞳には大粒の涙が浮かんでいた。
哀れに見える姿だが、同情する余地は全くない。
彼らの企みが成功していれば私たちは間違いなく悲惨な死を迎えたのだ。
きっと私の処刑後サクラも始末されていたに違いない。
アロウズ伯爵令嬢に王子が渡した呪具で魔力を根こそぎ吸い取られて。
「光と闇は反発しあうもの。闇魔力の保有者が自分よりも強い光の魔力を吸収しようとすれば破滅以外の運命はございません」
「嘘だ……俺のアンジーが、彼女が死ぬ筈ないんだ……」
意気消沈し大人しくなった王子を観察魔法を使い診る。洗脳や魅了の魔力は感じられない。
酷く落ち込んだ様子の彼は今の恋人を本当に愛しているのだと思う。
だがその愛が真実だからと言って他人の命を犠牲にする行為が許される筈がないのだ。
「たとえ命があったとしても聖女に危害を加え公爵家の人間を死罪に陥れようとした、伯爵家の人間だろうと極刑は免れないでしょう」
「黙れっ!黙れよ……アンジー、アンジーっ!」
そう恋人の名を呼び続ける殿下に溜息を吐く。
私はパーティー会場にいた警備兵を呼びつけ念の為王子を拘束させた。取り押さえられた彼の声が嗚咽が場に流れる。
「ねえリリーナ、卒業パーティーってやり直しだよね?私まだ御馳走食べてないんだけど」
サクラの空気を全く読まない能天気発言が清涼剤に感じられるほどパーティ―会場の空気は重苦しかった。
◇◇◇
私が前世の記憶を思い出しのは三歳の頃だ。
高熱で寝込んでいた時に過去の自分が日本の成人女性で、そして今の自分が死ぬ直前までプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢だと知ったのだ。
確か『サクラ乙女は禁断の恋に迷う』というタイトルだった。
プライドが非常に高く傲慢で元平民のヒロインに嫌味を言う闇の公爵令嬢、リリーナ・ノワール。
彼女は婚約者の王子とヒロインが恋人になった時は容赦なく命を奪おうとする。
その時点でヒロインが聖女の称号を得ていなければ彼女に殺されバッドエンドだ。王子に責められたリリーナもその場で自害する。
ヒロインが聖女になっていれば闇魔法を跳ね返せる。そしてリリーナは自分の魔法で胸を貫かれ死亡するのだ。
高熱のせいか年齢のせいかゲームついてそれ以上詳しく思い出せなかった。
だが今の自分が悲惨な死に方をする悪女に生まれ変わったということは理解出来た。
己が破滅する運命だと知った私は酷くショックを受けた。
悲劇の予感に怯えて泣き叫び暴れたが熱で見た悪夢にうなされたせいだと大人たちは判断した。
前世の記憶が蘇った時期が幼児時代だったのは不幸中の幸いだと今では思う。
この中世ファンタジー風の世界の常識は現代日本のそれとは大分異なっていたからだ。
魔法というものが存在することもだが、恐ろしいのは死刑が身近にあることだった。
明確な身分差があり格下の人間は無礼を理由に処刑されることさえある。
そして貴族の殆どが政略結婚。家の繁栄の為のもの。
身分が大きく違う相手との恋愛など火遊びでしかない。
王族である元婚約者がそれを理解していなかったというのは皮肉だが。
日本で生まれてきた自分を十年以上の時間をかけ上書きするようにして私は身も心も公爵令嬢リリーナになった。
現代日本人の感覚で発言したり行動すれば気が違ったと判断され屋敷内に幽閉されかねないからだ。
可能なら王子との婚約自体を回避したかったが、それはどう頑張っても無理だった。
だから私は魔法学校で出会うだろうヒロインに怯えつつ年を重ねていったのだ。
サクラを初めて見た時のことを覚えている。
ピンク色の目立つ髪色と可愛らしい顔立ち、小さな体にみなぎる強い光の魔力で彼女がヒロインだと即気づいた。
そして相手も前世の記憶持ちだったらしく私を見て悪役令嬢だと叫んだ。
サクラの無礼な振る舞いを庇った理由は今でもわからない。
彼女に魔法学校から退場して貰うことで王子ルートは消滅したかもしれないのに。
だがその後、ヒロインな筈の彼女は学校で嫌われ者になってしまったのでそれどころではなくなった。
サクラのその常識知らずな行動の数々は貴族の子弟たちに受け入れられなかった。
転生前の価値観と知識で生きている彼女の常識はこの世界の非常識だった。
そのことに気づかないまま、彼女は学校生活を送った。
結果愛されヒロインになる筈のサクラは多くの生徒たちから嫌われ避けられ馬鹿にされ、虐められることになる。
そして攻略対象の男子たちも彼女に対して全員冷たかった。
きっと学校内でのサクラの評判が最悪だったからだろう。
元の乙女ゲームもヒロインの評判が悪いと攻略対象に話しかけても無視される仕様だったことを思い出した。
つまり光の魔力にこそ恵まれてはいたが当時のサクラにそれ以外のヒロイン補正は皆無だった。
転生前の記憶が戻らない方が上手く学校生活を送れたまである。
この時点で私は彼女に脅威を余り感じなくなっていた。
そしてリアム王子の女性関係には目を光らせつつ、彼が手を出す女性の傾向を考えサクラと恋人になることはないと判断する。
このまま王子がヒロイン以外の女性に入れ込んでいればバッドエンドは回避できるだろう。
すると現金なことだが、私はサクラが哀れな存在に思えてきたのだ。
転生前の記憶を持っている自分と少し重ねたのかもしれない。
もし私の記憶が戻ったのがつい最近だったら彼女のような振る舞いをしない自信が無かった。
何より転生者である彼女を理解する者は居ないに等しい。
サクラは私はヒロインだと主張し続けたが周囲に納得されず、頭のおかしい娘だとしか思われていない。
それだけでなくこのままでいればサクラはこの学校、そして世界から異分子として淘汰されてしまうかもしれない。
実際入学してから数か月経つと周囲から異常者扱いされ嫌われていることに気づいてきたのか彼女は徐々に元気がなくなってしまった。
だからつい、声をかけてしまったのだ。彼女はある意味もう一人の私だった。
私を悪役令嬢だと嫌っていた筈のサクラは捨て犬が飼い主を見つけたように縋り付いてきた。
孤独に押し潰される限界だったのだろう。
そんな彼女に自分も転生者だと告げると鼻水を垂らして泣き喚きながら友達になってくれと言われた。
一人にしないでくれと。
溺れる者は藁にも縋るという言葉を私はその時思い浮かべた。
私はそんな彼女を突き放せなかった。
「リリーナがいなかったら私駄目になってたよ!!」
そう言われる度に何かが胸に満ちていくのを感じた。
その後サクラの前世が事故死した女子中学生だと知り、更に記憶が戻って三か月後に入学式があったことを知った。
悪役令嬢に転生した私の人生よりずっとハードだ。
だが元々楽天的な性格の彼女はヒロインという立場を過信し学校生活も恋も満喫できると思っていたらしい。
しかし現実は甘くなかったのだ。
そんなサクラに私はこの世界で生きていく為の術を教えることにした。
ほぼ前世の記憶と価値観だけで生きていた彼女の現代知識は赤ん坊に等しい。
いや日本で暮らしていた時の記憶を持っていることで逆に受け入れるのが難しいようだった。
なのでこの国の男爵令嬢として振舞えるよう教育するのに本当に苦労した。
登校を二時間早めて作った空き時間と放課後、そして私のスケジュールが空いている休日。
それでも怖いもの知らずな性格と平和な国で暮らしていた為の無防備さは中々治らない。
口調も少しでも気が抜けばたちまち日本の女子中学生に戻ってしまう。
私と二人きりの時は前世持ちであることを隠さなくていいせいか余計にその傾向が強かった。
それでも費やした日々は無駄ではなかったと思う。苦労もあったが楽しくもあった。
校内での空き時間はほぼ全て学習に使わせた為、サクラが男子生徒たちに言い寄る暇は無くなった。
これならば更に嫌われ今より評判を落とすこともない。
そして休み時間も熱心に机に向かい学んでいる姿勢に一部の教師や生徒は彼女への印象を良くしたようだ。
だがサクラの悪評はなかなか消えなかった。入学当初からその後の行動のインパクトが強すぎたのだ。
しかし彼女は挫けず、なんと聖女を目指すと言い始めた。そして魔法について私に特訓して欲しいと。
「私、聖女ぐらいの凄い存在にならないとこの世界でまともに生きていけない気がする」と真剣な顔で言われた。
下から上への無礼が死に直結しやすいなら、自分の立場を上げればいいという考えらしかった。
確かに今のままでは卒業後の彼女が人並みに暮らすビジョンが想像できない。
彼女に唯一残されたヒロイン特権である強い光の魔力を活かすのは良いことに思えた。
だから私は彼女の頼みを聞いた。しかし特訓がスパルタ過ぎたかもしれない。
必要以上に目立たず生きてきた私に新たな悪評が生まれた。
私が権力を傘に元平民のサクラを虐めているという噂が立ち始めたのだ。
私の闇魔法による攻撃を光魔法の障壁で耐えきる特訓を見られたせいかもしれない。
「別に気しなくて良くない? 私とリリーナが仲良しだって知ってるのは私たちだけでいいじゃん」
「それも……そうね」
「えへへ、二人だけのヒミツ」
どうせ本当に事言っても誰も信じないだろうし。彼女の言葉に私は同意してその話は終わった。
リアム王子とその恋人の伯爵令嬢はその噂をきいて、サクラを利用しようとしたのかもしれない。
だからといって彼らに同情する気はない。何から何まで自業自得だった。
そういえばリアム王子はゲーム紹介で「王子の地位さえ捨ててもいいと思える情熱的な恋に憧れている」という設定だった。
結局彼は運命から逃れられなかったのかもしれない。私と違って。
◇◇◇
「あの日、卒業前にバカ王子に二人きりで話そうといわれてついて行ったんだよね」
「リアム王子に告白されると思って?」
「うん!」
「このお馬鹿!」
「いたっ」
卒業パーティーの騒動から一か月後。
やっと時間に余裕の出来た私たちは公爵邸の一室で緑茶を楽しんでいた。
防音対策が完璧な私の部屋でサクラの手作り煎餅を二人で齧っている。
彼女は二年前から攻略対象との恋愛を諦めたのか日本食の再現に熱を入れるようになっていた。
もしかしたら飲食店経営などで成功したかしれない。
だが聖女の資格を得た以上サクラにその未来は選べない。
「違うんだって、告白されたら断って王子に説教してやろうと思ったの!」
「説教?貴女が?」
「うん、婚約者がいるのに他の女に告白するなんて最低って」
二股どころかそれ以上のクズだったわけだけど。
彼女は首に巻かれた包帯を摩りながら言う。
かけられた呪いは跡形もなく消えているが教会の命令で毎日聖水で清められた布を巻いているのだという。
大切な聖女の体ということで念には念を入れているのだろう。
サクラは卒業後神殿で暮らすことが決まった。
正式に聖女として認可された彼女は今までとは比べ物にならないくらい丁寧に扱われることになる。
高位貴族でもサクラに対し元平民などと見下す発言を公でしたなら罰金と鞭打ち刑に処されるだろう。軽くてだ。
「ほんと顔だけの最低男だった、よくリリーナはあんなのと結婚するつもりだったよね!」
「だって王家と父からの命令だもの、従うしかないのよ」
「私やっぱりそういう風に達観するの無理だわ、そんな結婚をリリーナがするのも絶対嫌!!」
頬を膨らませ子供っぽい表情で言うサクラに私は苦笑いをする。
「……だからわたくしのことも連れていくの?」
部屋にサクラが煎餅を歯で割る音が響いた。
私とリアム王子の婚約は解消された。
彼は王妃になることを目論んだ伯爵令嬢に魅了魔法を強くかけられた結果精神に異常をきたしたことになった。
少しでも王族側の過失を減らそうという目論見だろう。
王位継承者から外された彼は今頃王宮内のどこかで名ばかりの静養をしている筈だ。
だが本当は幽閉されていると私は父から教えられ知っている。
サクラに使われた呪具は王家の宝物庫に保管されていたものだった。
そんな逸品だからこそ強い光の力を持つサクラを一時的にでも拘束することが出来た。
呪具として利用したのは恋人でも、用途を知りながら持ち出したのは彼だ。
リアム王子は劣悪な環境に監禁され数年後にでも病死がひっそりと報じられるだろう。
そして何事もなければ今年十五歳になる第二王子が国王になる。代わりはいるのだ。
アロウズ伯爵家は取り潰し、アンジーという殿下の恋人は処刑された。
彼女はサクラから逆流した大量の魔力を受けきれず体内の魔力神経が蹂躙され尽くしたという話だった。
結果絶え間なく激痛に苦しみ続けることになった為逆に死は救いになったかもしれない。
このことはサクラには告げず、アンジーは終身刑になったと私は嘘を吐いた。
過保護かもしれないが彼女にショックを受けて欲しくなかった。彼女はまだ前世の価値観が抜け切れていないだろうから。
自分を害そうとした人間でも処刑されたと知ったらサクラは深く傷ついてしまいそうだった。
屈託ない彼女と穏やかな時間を過ごしたい私のエゴだ。
聖女と呼ばれるようになった元問題児は首を傾げながら私の問いかけに答えた。
「卒業してからも私の面倒みるのって、やっぱりイヤ?」
不安そうな上目遣い。聖女となり地位と評判が上がった今ならサクラに靡く男性もいるだろう。
歴代聖女の中には結婚した人物も何人かいる。 相手は王族や貴族、騎士や平民もいた筈だ。
血で受け継がれない代わりに、出産や純潔を失うことで弱くなるような力ではないのだ。
だが彼女はもう男はうんざりらしい。リアム王子に騙されて男性不信になったらしかった。
私としてはその方が有難い。
じゃないと美形男性に呼び出されたらまたホイホイ誘いに乗りかねない。
そんな彼女は今後神殿内でも女性だけしかいないエリアをメインに生活するらしい。
その報告と一緒に私を聖女補佐に強く推薦したことを告げられたのは一週間前だった。
ちなみに神殿側と王家からも似たような内容を打診されていた。
彼らは能力だけは超強力だが言動も内面も隙だらけな新聖女のお守り役が欲しいのだ。
リアム王子による誘拐事件と、その時の全く聖女らしくないサクラの言動。そして私たちの特別に親しい関係を知り判断したらしい。
聖女の命令は王族のそれとほぼ同等。それに王家と神殿側からも同じ依頼をされている。
公爵家といえど拒否権はない。父は私を第二王子に嫁がせることが出来なくなった。
彼は渋々と言った様子で「聖女に仕えろ」と命じ、そして公爵令嬢リリーナとして生きる私はその命令を「光栄です」と受け入れた。
私が快諾したことは既に王家にも神殿側にも伝わっている筈だ。
だからサクラはそれを知っていてこんなことを言うのだ。
「貴女が大人しくしてくれるならそこまで嫌でもないわ」
「聖女補佐は私が結婚しない限りずっと独身だけど、大丈夫?」
「別にいいわよ、政略結婚で最低男と夫婦になるよりずっとマシだわ」
「よかった、私も結婚なんてしたくないからずっと一緒だね!いっしょういっしょ!!」
幼女みたいな言い草につい笑ってしまう。
こんなことを言いつつ運命の相手と出会ったらサクラはたちまち逆上せてしまうかもしれない。
そうしたら私は裏切られたと思うのだろうか。
まさか、それこそ子供じゃあるまいし。否定するように軽く首を振った。
「でも全部上手くいって良かった!変な首輪つけられた時はちょっとびっくりしたけど」
「あれに懲りたら不用心な行動は慎むことね。聖女として強力な魔力を持っていても油断しないことよ」
「うん、あんな目に遭うのは一回で十分! 壊さないように維持するの超面倒だったし、力吸われるの気持ち悪かったし!」
「本当に、後遺症とか残らなくって良かったわ……もう心配させないで頂戴」
「ごめんね、でもリリーナと私の為に必要なイベントだと思ったから……」
「……サクラ?」
「現実はゲームみたいに簡単じゃなかったけど、なんとかクリアできて本当によかった!」
これでハッピーエンドだね! そう機嫌良く答えるサクラに私は違和感を覚えた。
彼女がリアム王子の企みにのったのは迂闊だったから、そう思っていた。
だってサクラは強い光の魔力を持っていて、でも素直過ぎて上手く生きられなくて、馬鹿で不器用で。
ヒロインの筈なのに攻略対象全員から嫌われていて。
だから私だけは彼女を見捨てられなくて。一生傍にいてもいいと思うぐらい。
「だって、あんな浮気男にリリーナが盗られるなんて絶対許せなかったんだもの!ううん、誰にも許さない!!」
私たち、これからもずっと一緒だよね。そう大輪の花のように笑うサクラに胸が淡くときめく。
友情なのか、それ以外の何かなのか区別がつかない。けれど愛おしいと思う気持ちに強く支配される。
やがてがどこか遠くからピアノとバイオリンの二重奏が聞こえてきた。
窓は締め切っているし、何よりこの部屋は魔法により防音されているのに。
明るく軽やかなのにどこか切なさを感じるメロディについ聞き惚れてしまう。
それは前世で何度か聞いた乙女ゲームのED曲だったが、リリーナになった私には既に思い出せなくなっていた。
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