第22話 おっさん、ダンジョン配信を始める

 次の日、俺はギルドに向かうと、ギルドマスターの花田にあるものを渡された。


「撮影ドローン?」


「ああ、お前達が不正していると勘違いされるのもめんどくさいからな」


 昨日の事件で凛の存在に気づき、ある話題が上がった。


 それは二人で一人分のポイントを稼いでいるのではないかということだ。


 たくさんあるランキングの中で凛の名前がないことに気づいた人がいるらしい。


 確かにネットで今いるギルド所属をキーワードに検索すると、凛の名前は出てこない。


 アーティファクトだから登録ができないため仕方ないが、その事を知らない人にとっては不正行為をしているように見えるだろう。


「あとは鞄を分けているのがわかればいいんだよな?」


「ああ」


 実際は俺にポイントが入らないように、凛がドロップしたのは別にしていた。


 一般的なパーティーであれば、貢献度に伴って勝手にポイント割り振りされるため問題はないが、俺達は一心同体みたいなものだ。


 そのため、登録者の俺に自動でポイントが反応して入ってしまう。


 それを防ぐためにこれからは別々に換金したタイミングで、その数値分のポイントを差し引くことになった。


 ギルドもアーティファクトだからと気にしていなかったのも問題だが、再び凛が話題になるならダンジョン配信をしたらどうだと話が出た。


 ダンジョンで俺が一人で戦っているところを配信していれば問題はないと。


 凛が戦う時って俺に何かあった時か、コボルトと散歩という名の拷問をしている時ぐらいだ。


 それでもランキングにいないのに、探索者を続けている凛を不思議に思う人が出てくるだろう。


 そこはネットから見える検索をギルド側が修正できると言っていた。


 ただ、実際に電光掲示板を見た時に異変に気づくことになる。


 電光掲示板は換金システムと連動しているアーティファクトなのだ。


 何のためにポイント制になっているランキングかは、今だに謎に包まれている。


 それを昔の人達は利用してランクを決めた。


 どうすることもできない俺達は、探索者名を変えることにした。


 探索者名は二つ名のように簡単に変更できる。


「名前は"ガチャおっさん"とスペースをかなり開けて"凛"だな」


 そこでやったのは俺と凛が交互に表示されるという仕組みだ。


 名前が長い人はランキングが電光掲示板に表示される時は一部分だけ交互に表示される。


 例えば、金色探索者である" シモーヌ・グランドビッチ・オッカマ・ジェニー"も二回に分けて表示される。


 "シモーヌ・グランド"と"オッカマ・ジェニー"だ。


 この人も二人組かと思ったが一人の探索者らしい。


 準備を終え俺達は早速ダンジョンに入って撮影ドローンを起動する。


 基本的には俺をマーキングして付いてくるようになっている。


「この動画って配信できないんですか?」


 撮影ドローンは証拠のために撮影することが多い。ただ、スマホと接続して配信ちゃんねると連動させればその場で配信もできる。


 一般的に探索者の配信が増えたのは、こうやって証拠を残したログが視聴者を集めて金稼ぎになったからだ。


 テレビ番組が廃れていったこの時代、スリルが簡単に味わえるのも流行った理由の一つ。


 今では俳優兼探索者が、ドラマの一部でダンジョン配信を入れるぐらいだ。


 昔流行っていた異世界転生アニメを実写化できると、テレビ業界が進出してきている。


 ダンジョンに入れるのは探索者だけだから、俳優が探索者であれば問題はない。


 俺はスマホと撮影ドローンを接続して、ドローンを飛ばす。


 これが第一回目のはちゃめちゃ家族配信になるとは思いもしなかった。

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