第9話 おっさん、再びガチャを回す
思いがけないことが起きた俺達はそのままギルドを後にしようとしたが、凛は何かが気になっているようだ。
「凛どうした?」
「これは何ですか?」
凛が気になっていたのは電光掲示板に載っている探索者ランキングのことだった。名前の隣には順位が書いてあり、常にランキングが流れる形で表示されている。
「順位の色でダンジョンの行ける階層が決まっているんだ」
金・銀・銅・白・グレーの順番に順位が下がっていくと色が変わっていく。
「有馬は?」
「俺はグレーなんだよね」
グレーは探索者の引退とも言える色だ。
「まだ更新まで日にちはあるけど、早めにポイントを集めないと俺も引退になっちゃうかな」
このまま依頼や魔物の素材売却によるポイントが少ないと、更新時に探索者を引退せざる得ない。
いつも毎回ギリギリのところで生き残れている。
「なら私と一緒にダンジョンに行こう」
「いやいや、凛に使える武器が買えるまでは一緒にダンジョンにはいけないよ」
凛をパートナーとして登録したため、ダンジョンには入れるようになった。ただ、それでも武器がない状態では危険だ。
ムキムキで凄く力が強い人ならできるかもしれないが、素手で殴ってスライムやゴブリンを倒せるはずがない。
「ならあれで出せばいい」
凛が指を差している方に目を向けると、そこにはガチャが置いてあった。
「いや、俺はしばらくガチャは辞めたんだ」
凛の装備と服が揃うまでは、ガチャをしないと心の中で決めていた。普通に考えて一回一万円と魔物の素材を使うガチャの値段は馬鹿げている。
そもそも凛が出るまで俺はガチャに一千万円も使ったのだ。
考えただけで頭がおかしいやつだと、誰もが思うだろう。
「ほらみんなポーションばかりだから出ないと思うぞ」
武器は稀に出ると言われている。ただ、どれも粗悪品が多いため、お金を貯めて買った方が良い。
現にさっきまでの行列は無くなって、ほとんどの探索者の手にはポーションが握られている。
ガチャから出てくるポーションなんて、万能な消毒液みたいなものだ。
しばらく留守番してもらうことになるが、それが堅実的で安全な方法だろう。
ただ、凛は俺にガチャ回させたいのか、無理やりガチャの前まで引っ張っていく。
さっきまでガチャを回していた人達は諦めてダンジョンに行ったか、遠目で俺を見ていた。
「本当にやるのか?」
「うん」
凛がそこまで言うなら俺はガチャをすることにした。いつものように配信の準備をすると、数人の視聴者が俺の"ガチャチャンネル"を訪れた。
「あー、今からガチャすることになったので引きます」
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童貞探索者 最近
外れろ!
▶︎返信する
たわわ好き 最近
俺にも女を出す方法を教えてくれ!
▶︎返信する
NTR好き 最近
可愛い子が出たらぜひお裾分けでも
▶︎返信する
廃人の女神 最近
↑それは人としてどうかと思います。
めちゃくちゃ気持ち悪いです
▶︎返信する
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すぐにコメントしたばかりだからか、時間表記も最近に切り替わっている。
俺は一万円をガチャに入れて、素材をどうするか考える。
鞄の中にはゴブリンの素材が残っている。ただ、せっかくだから使えない魔石をここで処分をしてもらった方が良いのだろう。
使えない魔石は荷物になるため、捨てるかどうするか迷っていたぐらいだ。
銀の魔石を台座に置いて、ゆっくりとハンドルを回していく。
銀色に光る景品口に今回もまた今までと違うものが出てくると感じた。
急いで咄嗟に身構えたが、中からは人が出てくることはなかった。
さすがに凛みたいなことが何度も起きたら、完全に俺がおかしな何かを使ったことになる。
「えーっと、これは鞭か?」
景品口には銀色の鞭が置いてあった。装備は装備でも鞭って使いにくいから外れの分類だ。使うにはある程度の練習が必要になる。
それよりも鞭を持った時の違和感を感じた。
どこか探索者になった時と似たような感覚が手から伝わってくる。
「これってまさか」
俺は急いでギルドスタッフに声をかけて鞭が何かを鑑定してもらった。
「えっ……どういうこと」
「やっぱりそうか……」
「アーティファクトがガチャから出たんですか!?」
どうやら鞭はガチャと同じ謎の物体と言われているアーティファクトだった。
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