(8)監禁

連れ込まれた場所は、僕の家に程近い高層マンションだった。

地下駐車場から直接エレベータで上った。


エレベータのパネルは10階を指していた。

もしかしたらお店から見上げれば見えるかもしれない。


僕は薄暗い部屋の一室に投げ込まれた。

羽鳥は別の部屋に連れていかれたようだ。


どのくらい時間がたったのだろうか。

1時間ぐらいのようだったが、数時間ぐらい経ったのかもしれない。


縛られた手首は痛かったが、長時間後ろへ回した腕が痺れていたおかげで、幸いにも感覚が鈍くなっていた。

廊下から複数人の足跡と男の声が聞こえた。


低い声だ。


「ボス、あいつの素性がわかりました」

「ほう、で?」


さっきのボスらしき男の声だ。


「羽鳥のガキのオモチャだったようで、特に問題なさそうです」


低い声の男が言った。


「そうか、なら、お前たちで好きにしていいぞ。こっちは、あの羽鳥の野郎からの連絡を待っている。もう少し時間がかかりそうだ」


ありがてぇ。というしわがれた別の声が聞こえた。

まもなく、ガチャという扉が開く音が聞こえ、二人の男が入ってきた。


低い声の男としわがれた声の男だ。

低い声の男は少し禿げ上がった中年で、しわがれた声の男はまだ若そうな小男だ。


「お前も運がないな。悪いが、俺達の慰みものになってもらう」


中年男が言った。

ズボンと下着を脱ぐと、大きくなった自分のものを握りしめ僕に向かって歩みよってきた。


「おい!」


中年男は小男にあごで指図をした。

小男は横たわった僕の縛られた腕つかむと、中年男の前に跪かせた。


あぁ、もうどうしようもない。

泣いても、叫んでも、どうしようもない。


僕はせめて、悠真さんのにこやかな笑顔を思い浮かべ、体と意識が分離していくのを願った。

中年男は跪いた僕の髪の毛を無造作につかみ、


「ほら」


と言いながら、僕の口にその大きなものを突っ込ませようとした。


その瞬間。

ドンドンドンという、大きな数人の足音が聞こえた。


かと思いきや、ほぼ同時にドアから何者かが入ってきた。

中年男が振り向き、


「だれだ?」


と叫ぶや否や、その何者かの鉄拳を顔面に食らい、下半身をむき出しのままドタッと倒れた。


小男は、小さな悲鳴のような声をだしてドアの方へ走り出したが、行先をふさがれその何者かの拳で腹部を殴打され、その場にうずくまった。


「おい、大丈夫か?」


と、荒げた声が聞こえた。

でもその声は聞きなれた声だ。


やさしい声。

悠真さん。


あぁ、夢だ。

夢に違いない。


でも、僕を抱きかかえてくれたのは紛れもない悠真さんだった。


悠真さんが心配そうな顔で僕を見つめていた。

僕はつぶやいた。


「どうして……」



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