ボクらはカタにハマってる〜先輩と後輩は、今日も今日とて無駄話〜

ムタムッタ

1章 ボクと先輩の春

第1話 学校の屋上が開放されてることって稀だよね



「遅いよぉ後輩くぅん」




 先輩はいつも先に、屋上にいる。


「どうせ授業終わる前に抜け出したんでしょ先輩は」


 購買の焼きそばパンを頬張る先輩。

 授業が終わってまだ5分も立たないうちに来ていたようだ。


「わかってないねぇ……1分1秒でもこの昼休みを享受したい、当たり前のことじゃぁないか」

「屋上の鍵自作して侵入する人は当たり前じゃないすけどね」

「心外だねぇ〜、鍵を作ったんじゃなくてドアノブを取り替えたのさぁ」


 先輩はなんでもする。


 学校で寝たいがために部屋を確保するために部活を作って部室をもぎ取ろうとするし、平凡の見本のような自分ボクを部員として引き摺り込む。


 先輩とは、そういう人物なのだ。


「こんな毎回屋上に侵入してたら指導室行きですよ」

「それは大丈夫さ、屋上なんて普通入る人間いないからねぇ」


 先輩は普通じゃないんですね、とは喉元で止めた。前に言ったら酷い目に遭わされたから、とても言えない。


 そのが何かを説明するのはやめておこう。


「屋上でぐだくだと駄弁る、実に学生らしいじゃぁないのさぁ〜」


 そもそも、屋上で雑談する学生はいないような気がする。


 けれど、学生とは屋上で何かをする生き物だと言う知識はある。この知識は、なぜかぼんやりと、しかし確実に脳内に保管されているのだ。




 そう、ボクらはカタにハマってる。



 ◇


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