第4話 断捨離の部屋
「じゃあ、最近は鳥飼さんはどんな人と一緒に、どんな話題を話していたんでしょうね?」
というと、
「私は分かりません」
とマスターは答えた。
本当に知らないのか、知っているけど、いくら死んだ人とはいえ、プライバシーというよりも名誉の問題でもあるのか、それとも、問題は話をしていた相手にあるのか、清水はその気持ちの奥を計り知ることはできなかった。そこへ、もう一人の客が話に割り込んできた。
彼はよくいえば気さくで、裏表のない人間のようだが、彼の前では秘密は作らない方がいいようだ。一歩間違えれば、すべてを暴露されてしまいそうだからであった。
「鳥飼さんがよく話をしていたというと松本先生じゃないかな?」
と言い始めた。
それを聞いた辰巳刑事が、メモをしながら、
「松本先生? 教師か何かですか?」
と訊ねると、
「いいえ、町医者なんですよ。このあたりに昔からある医者の何代目かの人で、結構近所の人が通ってきているので、そこそこ繁盛しているんじゃないかな?」
と言った。
「ほう、個人病院のお医者さんなんですね? おいくつくらいの人なんですか?」
と聞くと、
「そろそろ五十歳くらいじゃないかな?」
と彼は答えた。
確か、死んだ鳥飼という男はまだ三十代くらいではなかったか?
「鳥飼さんは、まだお若かったですよね?」
「ええ、三十代前半くらいじゃなかったですかね?」
「それなのに、話がそんなに合ったんですか?」
「ええ、そうなんですよ。だから私も不思議に感じたので、覚えていたという感じですね」
と訊いたその目で今度はマスターを見ると、マスターは少し気まずい表情になっていた。
その表情は、マスターも知っていたということを示しているような気がして仕方がない。
だが、そのことに辰巳刑事は触れることをしなかった。
――どうせ、隠そうとしているのであれば、余計なことを口にすることはないだろう。それよりももう一人の男を突いた方が、こちらの知らなくてもいい情報まで教えてくれそうな勢いだ――
と言わんばかりだった。
「ところで、その松本先生というのは、何科の医者なのかな?」
「基本的には外科だって聞いたけど、でも、町医者なので、内科も胃腸科も、一通り見ているようですよ。まるで診療所の先生という雰囲気ですね」
「まさか、その松本先生という人は、白衣でこの店を訪れることはないでしょう?」
「ああ、それはないですね。でも、一度白衣で来たことがあったけど、別に本人は服装など気にしていないようでした。別に白衣だからって、別に関係ないという顔でしたよ」
とマスターが言った。
「じゃあ、間違えて白衣を着てきたわけではないかも知れないということですね?」
「ええ、松本先生に限って、間違えてということはあまり考えられないですのでね」
とマスターがいうと、それを聞いたもう一路の客が、打ち消そうとして一瞬身を乗り出したが、そんな彼をマスターが目でけん制した。
真正面から見ているわけではないので、どんな表情になっているのか分からなかったが、その表情はかなり険しかったように思えた。
すっかり、彼は怯えてしまい、それ以上、何も言えなくなってしまった」
その代わりに、主導権はマスターに移ったようだ・
しかし、少し気になるのは、この男が入ってきて。まわりに遠慮なく振る舞う態度を最初に見せた時は、マスターはそれを見逃した。鬱陶しそうな顔をすることもなく、
――このマスターは、気が大きな人だ――
と感じさせるほどだったのに、松本先生の話に及んでからは少し、様子が違ってきたようだ。
――マスターはここで松本先生が登場してきては都合が悪いことでもあるのだろうか?
と、辰巳は感じていた。
清水刑事がどう思っているか分からなかったので、清水刑事を見たが、清水刑事の目は、マスターの一挙手一同を見逃すまいと、必死になっているように見えた。
「松本先生という人と、鳥飼さんは、前から仲が良かったんですか?」
と清水刑事が聞くと、
「そうですね。たまにお話をしているのは見かけましたね」
とマスターが答えた。
「どんな話だか分かりますが?」
と清水が聞くと、
「詳しくは分かりませんが、一度自分の知り合いの、いとこだとか言っていたような気がしましたが、その子が何とかいう病気だということで、松本先生に話を訊いていたようですよ。あの雰囲気は、どこの病院がいいのかというようなそんな話だったんじゃないでしょうか? 下手な人のウワサよりも、実際の医者に訊いた方がいいと思ったのかも知れませんね」
とマスターは答えた。
「確かに、命に関わるような病気なら、真剣にもなるというものですよね。でも、それなら医者との会話としては、ありふれた内容ということになりますね」
と清水刑事がいうと、
「ええ、そうでしょうね」
と、清水刑事は、さりげなく、最初にマスターが松本先生の名前を出さなかったことへの弁解に手を貸しているかのようだった。
マスターはそれを分かっているのか、次第に清水刑事に恐縮し、敬意を表していた。
「松本先生や、鳥飼さんは、よくこの店に見えられるんですか?」
「そうですね。結構来ますよ。最初の頃は二人ともすれ違いであったり、タイミングの悪さからか、お互いを知らなかったようですが、半年くらい前から、どちらかの行動パターンが変わったんでしょうね。それまですれ違いばかりだったのが、まるで示し合わせたように、店で会う確率が高くなったんです。偶然にしては出来すぎていると思うくらいだったですが、最初はそれでも、あまり話をするわけではなかったんですよ。でも、いつの間にかお互いを意識し始めて次第に話すようになったようですね」
「最初に会話を持ち掛けたのはどっちだったか分かりますか?」
と辰巳刑事が聞くと、
「確かあれは、松本先生の方からだったと思います。先生は鳥飼さんと一緒になることを、まるで運命みたいだって、はしゃいでいたくらいですからね」
「じゃあ、いつかは話をしてみたいと思っていて、その時に意を決したんでしょうね」
「そうだと思います。松本先生は結構人見知りなところがあるので、自分からはなかなか行ける方ではないんです。でも、鳥飼さんと仲良くなってからは、他の人に対しても自分から行けるようになり、そういう意味では、先生にとって鳥飼さんは恩人のようでもあり、師匠のようでもあったのかも知れませんね」
「師匠として慕うようなことはありましたか?」
「ええ、あったと思いますよ。鳥飼さんは、おだてに弱い方だったので、先生が感謝の意を表すと、結構喜んでニコニコしていましたからね。そういう意味では二人は案外合っていたのではないでしょうか? 相乗効果のようなものが見え隠れしているような気がしていました」
と、マスターが言った。
それに対して、もう一人の客は、口を挟まず、終始、
「うんうん」
と頷いているのだった。
「鳥飼さんは、松本先生の病院に罹ったことはあったんでしょうかね?」
と清水刑事が聞くと、
「それは分かりません」
とマスターは答えたが、そこでやっともう一人が口を開く機会があった。
「たぶん、ないと思いますよ。鳥飼さんは、松本先生に対して、あまりいいイメージは持っていなかったようなんです。結構辛辣な悪口を、先生のいないところで言いふらしているという話は聞いたことがありました」
と訊いた清水刑事は。
「君がその話を伝え聞いたということは、相当その話が触れ回っているということになるのかな?」
と辰巳刑事が聞くと、
「いいえ、そうではないんです。私は独自のウワサのルートを持っていて、そこから伝え聞いたんですよ。だから、その時の話を知っている人は、ほとんどいないんじゃないかって思います」
と、男は言った。
どちらにしても、この松本という先生がどんな人なのか探ってみる必要はありそうであった。
ひょんなことで立ち寄った喫茶店で、一人の町医者の情報が得られたというのは、ある意味収穫だった。マスターの話や。他の常連客の話も聴けて、レトロな昭和の味を出していることの喫茶店は、捜査の出発点としては、よかったのではないだろうか。
その時点では、他に得られる情報もないということから、喫茶店を出て、そこから歩いて五分くらいの松本医院に向かってみることにした。
町医者ということなので、あたかも昭和のいで立ちを想像していたが、さすがに平成に建て替えを行っているようで、綺麗な病院であった、外観は白壁が貴重で、手前には数台の車を止めることのできる駐車スペースがあり、二台ほどの車が止まっていた。自動ソアを開くとすぐが待合室になっていて、数人が待っていた。ほとんどが高齢者で、誰も黙して語らずの状態で、雑誌や新聞を読んでいた。まさに慣れたものである。
だいぶ寒くはなってきていたが、本格的な風邪の季節はまだ先だったので、これくらいの患者数なのか、それとも時間的に夕方近くになっているので、たまたまこれくらいの患者数なのか、辰巳刑事も清水刑事もあまり病院に馴染みはないので、そのあたりの検討はついていなかった。
病院の基本的な診療時間は受付が七時までであり、受付採集が六時半となっていた。時計を見ると六時半まで、まだ二時間近くあった。
受付で二人は保険証の代わりに警察手帳を示し、
「この間亡くなった鳥飼次郎さんのことで、少しお伺いしたいのですが」
と告げると、最初警察手帳を見た受付嬢は、一瞬たじろいだ雰囲気だったが、すぐに冷静さを取り戻し、インターホンで先生に連絡したようだった。
「診察は七時までですので、それ以降であればお話は伺えるということでしたが、その時でよろしいでしょうか?」
と言われたので、最初から想定していた返事そのままだったので、迷うことなく、
「分かりました。その時にまた声を掛けさせていただきます」
と言って、病院を出た。
二人の刑事は、二時間という中途半端な時間帯を、その場所から十五分ほどのところにある被害者である鳥飼の自宅に向かうことにした。
鳥飼の自宅や、近所への聞き込みは他の刑事が行っていて、その時の情報として、真新しいものは何も発見されなかった。
鳥飼はm学校を出てから一人暮らし。友達がいるという話も近所や会社の同僚からも聞かれることはなかったので、基本的には孤独な性格なのだろう。会社でも目立たないタイプだということであったが、気になったのは、興味を持ったことに対しては、かなりの研究熱心だったということだ。
それだけを聞くと、何やらオタクっぽく聞こえてくる。本当のヲタクは、アニメだったりアイドルに現を抜かすのだろうが、鳥飼のうつつは、その時々でいろいろ違っているようだ。
しかし、辰巳刑事の中では、基本的にヲタクと変わりはないと思っている。いわゆる、
「ヲタク気質」
と呼べるのではないかと思っている。
鳥飼の部屋に入ってみた。一応現状保存をするという意味で、管理人にも、少しの間その部屋に手を出さないでほしいとお願いをしていた。その部屋で直接人が死んだというわけではないが、住人が殺されたともなると、管理人もあまり気持ちのいいものではない。少なくとも、四十九日なでは、最初から何もしない予定ではあった。
実はまだ、鳥飼の住んでいた部屋に足を踏み入れたことのなかった二人は、この機会にいってみることにした。一度は他の捜査員が見ているので、後から自分たちが改めて入るのは少し気が引けたが、
「これも捜査のため」
ということで、どんな発見があるとも限らない。
そう思うと、自然と足が向く二人だった。
この時の二人は、
「鳥飼の部屋に行ってみるか」
という一言をどちらからも言ったわけではない。
以心伝心というものだろうか、ただ、辰巳刑事と清水刑事の間であれば、それくらいのことは今までも日常茶飯事であった。
鳥飼の部屋は、マンションというよりも、二階建てのコーポのようなところで、独身の一人暮らしとしては、ちょうどいいのかも知れない。
間取りは一LDKの部屋で、リビングは八畳くらいの広さがあり、一人暮らしとしては十分な広さだった。
だが、その割には部屋は質素なものだった。極端にいえば、何も置いていないと言ってもいいくらいで、広く感じたのはそのせいかも知れない。
まったく何もない人も住んでいない部屋であれば、非常に狭く感じるだろう。そしてモノがたくさんありすぎても、狭く感じられる。中途半端なくらいが部屋を一番広く感じさせるのだが、鳥飼という男は果たして最初から何もない生活をしていたのか、それとも、ある日何かに思い立って、思い切った断捨離でも行ったのか、とにかく、殺風景と言っていいほどの何もない状態が、ある意味、この間取りの部屋を一番広く感じさせるのかも知れない。
「部屋を広く感じさせるつもりで、これだけの荷物しかないんだろうか?」
と清水刑事は言ったが。
「ええ、私も同じことを考えていました。部屋を広く感じさせるのが目的か、それとも引っ越しでも考えていて、そのために、いつも荷物を揃えないようにしていたのかのどちらかだと思ってですね」
「というと?」
「マンションではなく、コーポというと、それだけ引っ越しには身動きがとりやすいもののような気もするし、彼は興味を示したことにはとことん一生懸命だという証言もあったじゃないですか。そんな鳥飼にとって、引っ越しは彼の中のトレンドではないかと思えるんですよ。つまり日常生活の中の一つのリズムのような、常習性のあるものだというような考え方ですね」
「なるほど」
「それにですね。私が思うに、かなり何も揃っていないかのように見えるこの部屋でも、対になるようなものはちゃんと揃っているんですよ。だから、もし断捨離をしていたとしても、考えながらやったはずです。でも、彼の性格から考えて。断捨離は何か違う気がするので、最初からこんなものではなかったのかと思うんですよ」
「というとどういうことになるのかな?」
「彼のこの部屋を見て、何もないからと言って、几帳面だというイメージとは違う気がするんですよ。あくまでも、彼にとって何か大切なものを浮き立たせるもの、それを演じさせる部屋になっている思惑は感じるんですが。肝心の、その大切なものが何なのかということは、私には分からないんです」
と辰巳刑事はいうと、
「なるほど、そのあたりは、捜査資料には書かれていなかったね。最初に見た人がどこまで感じたのかということになるね。ただ、今の話を訊いている分には、この感情を文字にするのは難しい気がするんだよ。だから、捜査資料になかっただけで、この部屋に入ってきた人は、皆最初同じことを感じるような気がするのは、私だけだろうか?」
という清水刑事に。
「いえいえ、そんなことはないと思います。清水刑事も、この部屋に入って同じことを感じたと私も思いましたからね。何か魔法のようなものを感じさせる部屋であるような気がしますね」
と辰巳刑事が言った。
「でも、その魔法が今度の事件に関係があるかないかは、難しい気がするね」
「そうでしょうか? ただ事件と関係のないところで、被害者の性格的なものを考えた時、小部屋の雰囲気は実に参考になりそうなものではないでしょうか? 性格が丸見えというわけではないでしょうが、鳥飼という男の本質に迫れそうな気はしています」
「ということは、鳥飼という男性は分かりやすい性格だと言えるのだろうか?」
と清水刑事が聞くと、
「いえ、逆に分かりにくいのかも知れません。それはきっと本人がそれを意図してまわりと付き合っているような気がするんですよ。しかも、彼はまわりに自分のことを分かってほしいとは思っておらず、一部の人間にだけ分かってもらえれば、他の人はどうでもいいというくらいに徹底した人間づきあいではなかったかということは、主のいなくなったこの部屋が教えてくれているような気がするんです」
と辰巳刑事はしみじみと語った。
「辰巳刑事はどこか叙情的だね?」
と言われ、清水刑事がどんなつもりで言ったのか分からなかったが、辰巳刑事はそれを聞いて照れ笑いをしていた。
それを見ると、そこまでのつもりはなかったので、普段自分を誇張しない辰巳刑事が珍しく見せた誇張状態に、新鮮なものを感じた清水刑事であった。
清水刑事が彼の部屋で一番興味を持ったのは、本棚だった。
少々大きな本棚であったが、本は半分も埋まっていない。
これから埋めるつもりだったのか、一種の断捨離の一部のつもりなのか、考えてみたが、本棚に綺麗に整理された本たちを見ていると、廃棄したり、古本屋に売りさばくようなことはないような感覚を覚えたが。どうやら、その感覚に間違いはないようだった。
清水刑事は、一度大学を卒業してから住まいを変えた時、大学でのテキストをまとめて古本本屋に売ったが、思っていたよりも金にならなくて、
「これじゃあ、二束三文がいいところではないか」
と、見積もってもらった以上、売るしかないと思っていたので、その時はそのまま売り飛ばしたが、それ以降は、
「本はコレクションしているのと同じだ」
と、それからは、廃棄も売却も考えられない。
それでは断捨離ができないかも知れないと思えば、刑事仲間や昔からの友達にほしいと思っているやつがいれば、譲ってもいいと思っていた。
せっかく縁があって購入したのだから、清水刑事としては。大事な息子の感覚である。最後まで見届けるのは必要なことだと思っていたのだ。
断捨離というほどの大したことではないが、清水刑事も定期的に不要なものは捨てたりして減らしていた。
「どうして、こんなものを後生大事にしまっていたのだろう?」
と感じるものも少なくはない。
普段から、整理整頓をしているつもりでも、どこか抜けているような気がするのは、そんなものが捨てられない性格を無意識のうちに形成してしまっているからなのではないだろうか。
モノを捨てられない性格なのは、どちらかというと辰巳刑事の方だった。
「考え事をしている時に目の前にあるものをふいに捨ててしまうことがある」
と、集中力の高さゆえ、それ以外のことは無意識にしてしまうところがある辰巳刑事にとって。、断捨離という言葉は、何となく点滴のように思えた。
子供の頃から、整理整頓を口酸っぱく言われ続けたおかげで、何も考えられなくなり、汚い状態であっても、それはそれで、許容範囲の広い感覚だった。だから、少々部屋が汚くても気にならない。むしろ、片付いていると落ち着かない自分がいたりした。それはあくまでも自分だけのことであり、他人が介在するようなことではなかったのだ。
整理整頓という言葉は実際に好きではなかった。小学生の頃も、先生から言われ続け、先生が親に告げ口することで、学校での素行までバレてしあったということから、学校の先生も親も嫌いになった過去がある辰巳刑事は、そのことが頭の中から離れないことが、彼の中にある勧善懲悪の感情を呼び起こしたのではないかと自分で思っている。
普通ならそんな感覚になるはずなどないにも関わらず、そう感じるのは、そもそも刑事になろうと思ったのが、勧善懲悪の性格からだという、一番分かりやすいところからだった。
辰巳刑事は誰から見ても分かりやすい性格だった。それは、実は知られたくない性格を隠したいという一種の知恵から生まれた性格であり、今でこそ、その隠したいことの本質が何だったのかは忘れてしまったが。
「整理整頓ができないこと」
という意識と結びついているというのは、分かる気がした。
辰巳刑事は、この断捨離にも似た部屋を見た時、一見何も考えていないように見える部屋の雰囲気に、何か芸術的なものを感じた。
それは、自分の感性に似たものであり、話を訊いただけの鳥飼から自分の感性と似たものを持っているとまでは感じれるはずはないと思っているだけに、違った意味での感性という発想から、
「芸術的」
という言葉が頭の中で浮かんできたのだった。
清水刑事は辰巳刑事の感性は分かるつもりだったが、この部屋から、その感性を見抜くことはできなかった。
――どこか、芸術的なものがある――
という発想は、むしろ辰巳刑事よりも早く感じ、、さらに育って行っている感覚のように思えたが、辰巳刑事とは明らかに違っているように感じたのは、何が原因だったのだろうか。
ただ、最初に入った時、
「なかなか整った部屋だ」
と、言葉について出てきたのに、芸術的という言葉が出てこなかったのは。
「辰巳刑事も同じことを感じているからだ」
と、感じたからに違いなかった。
ただ、この部屋を見た時、
「何か一つの事実を隠滅したいと思い、整理ができない性格なので、纏めて処分をすることにした」
ということもあるかも知れないということを、その時、清水刑事も辰巳刑事も忘れていたのだった。
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