第30話 ダンジョン踏破耐久配信 4/4
「お、ついに最深層か」
苦節数時間の探索と戦いを経て、俺たちはついにダンジョンの最深部に到達した。目の前には、重厚な雰囲気を漂わせる巨大な鉄扉が立ちはだかっている。その扉の向こうには、このダンジョンのラスボスが潜んでいるに違いない。
この長い旅の中で遭遇した数々の試練は、すべてこの瞬間のためにあったと言っても過言ではない。扉の前に立つ俺たちの心は、期待と不安で複雑に絡み合っていた。しかし、黄金の腕輪がもたらした力と、これまでの経験は俺たちに自信を与えてくれる。
楠木さんも、カメラをしっかりと構えながら、この一大イベントの準備が整っていることを確認していた。コメント欄は、俺たちがラスボスの扉を開くその瞬間を待ちわびる視聴者たちの期待で溢れている。彼らの熱いエールが、俺たちに勇気を与えてくれる。
「このダンジョン耐久で、相当レベルも上がったしな」
誰にも聞こえないようにして、ステータス画面を開いた。
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【名 前】:
【スキル】:火属性魔法 Lv18
雷属性魔法 Lv17
氷属性魔法 Lv17
肉体強化 Lv20
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「今の俺なら、この先に何が潜んでいても……何の問題もないだろう!!」
(そうだ!! 行けムサシ!!)
(ラスボスを倒してくれ!!)
(でも、ラスボス倒したら……ダンジョン配信はできなくなるんじゃないか?)
(↑うるせェ!! 冷めること言うな!!)
圧倒的な規模と荘厳な雰囲気を持つ、巨大な神殿を彷彿とさせる場所だった。高くそびえる柱、複雑に組み合わされた装飾、そして神々しい光が差し込む空間。この場所全体が、古の力と神秘に満ちているかのように感じられた。
空気は厳かで、一歩踏み入れるごとに、俺たちがこれまでに経験したことのない壮大な物語の一部になっていくような気がした。楠木さんもその場の雰囲気に圧倒されている様子で、しばし言葉を失っていた。
「……え」
だが、俺が言葉を失ったのは、別の理由だ。
部屋の中央にいる人物が目に入った瞬間、俺は思わず言葉を失った。失わざるを得なかった。
そんな、あり得ない。こんなこと。
だって、だって……嘘だ、幻覚だ。
俺のじいちゃんは、もう死んでいるのだから。
「……久しいの、武蔵」
目の前に立つのは、80歳を超えるような和服を纏った老人だった。その手足は、枯れ木のように細く、痩せ衰えており、顔には長い人生を物語るような深い皺が刻まれている。しかし、その老人の眼光だけは鋭く、まるで鷹を思わせるほどの力強さを秘めていた。
驚愕することに、その老人は俺のじいちゃんだった。すでにこの世を去ったはずの、俺のじいちゃんだ。その事実を前にして、俺は現実を信じることができなかった。確かに、俺たちの冒険の中で魔法やダンジョンは存在していた。しかし、死者が蘇るというのは、いくらファンタジーの世界とはいえ、受け入れがたい事実だった。
俺の心の中は疑問で溢れていた。ファンタジーの世界が提供する数々の奇跡の中でも、これほど個人的で、深く心を揺さぶる出来事はなかった。目の前にいるじいちゃんは、死んだはずの人物。この再会がどういう意味を持つのか、その理由や経緯を知る手がかりは何もなかった。
「……じいちゃん」
内心の動揺とは裏腹に、俺の瞳からは止めどなく熱い涙が流れ落ちた。深い困惑や混乱が心を覆ってはいるが、それを遥かに上回る喜びが胸を満たしていた。もう二度と会うことができないと諦めていたじいちゃんに、このような形で再び会えたのだから。
配信中であることさえ忘れて、俺は涙に顔を歪めた。この瞬間は、俺にとって計り知れない価値がある。時間が止まったかのような静寂の中、俺はじいちゃんとの再会をただただ噛み締めていた。幼い頃に感じた安心感と愛情が、時を超えて再び俺の心を温かく包み込む。
「これまで……よく頑張ったの」
じいちゃんの優しい言葉が、俺の心を貫いた。
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