嘘だらけの世界で僕は君と笑いたい
西影
プロローグ
第0話 光の先
好きな人と恋人になった。
街頭も少なくなった閑静な住宅地。夜も遅くなり人通りの少なくなった道を私は最愛の幼馴染と歩いていた。普段なら薄暗くて不気味な夜道も、今ではロマンチックな雰囲気の糧となる。そんな魔法がクリスマス・イヴには掛けられていると思う。
手を繋ぎ、遅く歩き、まだ帰りたくない気持ちを一挙手一投足で伝える。せっかく想いが結ばれたんだから、今日はもっと一緒にいたい。この幸せをずっと噛みしめていたい。
一生続けばいいと思った。一生続く関係だと思っていた。
その終幕が、残酷で、刹那の一時だとも知らずに。
暗かった視界が明るく染め上げられる。気付けば一台の車が私たちに迫ってきていた。まるで私たちが見えてないかのように、まっすぐこちらへ向かってくる。
死
そんな一言が頭に浮かび上がる。車から目が離せず、胸の鼓動ばかりが聞こえてきた。頭に数秒後の未来が浮かび上がってくる。
「――っ!」
恐怖から自然と体は動いてくれた。自分が死ぬ恐怖ではない、彼が死ぬ恐怖からだ。繋いだ手ともう片方の手で彼を突き飛ばす。私より十センチ以上高い彼でも、急な衝撃に耐えられなかったようだ。
スポットライトのように照らされた私を見た彼の顔は驚きか、焦燥か、普段の怠そうな顔と違って目を大きく見開いている。
「ごめんね」
口にできたかどうか分からない一言と共に私の意識は奪われた。
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