Ep.26"マゾ"

 気を取り直してスキルを進化させる。

 ポチッとして進化完了。特別な演出は何も無かった。そしてみるみるHPが回復していく。生半可な攻撃じゃ回復してなかったことになりそうだ。そして効果が分からなかった【血薬】くん。合成されたわけじゃないからまだ残っている。結局なんなの君。

 右腕の付け根がむず痒くなってくる。じっと見ると少しづつ再生しているところだった。骨が少し伸びて筋繊維や血管が骨を覆うように発生する。見れば見るほどファンタジー。てか若干グロい。再生時間は十時間。まぁ四肢欠損とか最大級の怪我だからな。最長の時間になってもおかしくない。

 他にも生えてきたアーツがあったりするがここでは割愛させてもらう。確認しだしたらキリがないからな。

 さて最後に贈与されたものでは無い通常のドロップ品を確認していこう。と言っても三つしかないため一気に見ていく。


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 名称:紅月の瞳

 希少値:A+

 品質:A


 "血月"の額に浮び上がる宝玉。月光を溜め込み、増幅させる性質を持つ。この瞳を傷付けないことで手に入る。

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 名称:ツキウサギの肉(血月)

 希少値:A

 品質:A


 赤月の魔力がたっぷり詰まっている。さっぱり淡白な味のウサギ肉。空に跳び、杵を振り回すその筋肉は旨みが豊富。おすすめはモモ肉。引き締まっていて食べ応え抜群!

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 名称:ツキウサギの毛皮(血月)

 希少値:A+

 品質:A


 "血月"になったことで純白の毛皮は淡い赤に変化した。しなやかさと強靭さを兼ね備えた高級毛皮。何に加工するかは貴方次第。

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 はい。予想通り額にあった宝玉が手に入った。他のふたつも合わせて全部素材だな。肉は料理するとして他二つは装備とかアクセかな?

 毛皮はまず処理とかしたりしなきゃだし、裁縫の練習しなきゃいけない。イベントまでに間に合うといいなぁ。


 さて、街に戻るとしても片腕ないのは目立つし、このまま行ったらアナウンス後だから絶対バレるだろうな。……よし。妹召喚。大きめのマント(フード付きなら尚良)を持ってこい。場所は……そういやインスタントフィールドのままだった。とりあえず餅を食べてたところを伝えよう。送信。返信が来た。はやぇ。すぐ行く待ってて。だそうだ。んじゃゆっくり待たせてもらうかね。



 しばらく待つと着いたと連絡が来た。というわけでここから出よう。


 《通常フィールドに戻りますか?》

 《YES NO》


 YES


 《通常フィールドへ移送します》


 一瞬の浮遊感の後、確かに餅を食べていた所に戻ってきた。周りを見ると4人の女の子がいた。妹とその一行だ。つかつかと歩み寄ってくる。


「どういうこと」

「そういうことだ。とりあえずマントかなんかをくれ」

「ん」

「どうも」


 そう言って渡されたのは水色のフード付きマント。……嫌がらせかなにかか? 俺は悪目立ちしたくないんだが。


「……これは何だ」

「? 注文のあったマント」

「なぜ水色なんだ?」

「色の指定がなかったから。メグミが選んだ」


 ギャル子が選んだのか。そうか。制裁を加えよう。


「いや、それ選んだの私じゃないし! カーマインじゃん!」

「ギャル子、夕飯抜きな」

「どして! なんで私なの! それにもうご飯の時間時じゃないわよ!」


 元気いっぱいだなぁ。若いって羨ましい。そんなことより寝たい。もう12時過ぎてるんだよ。3時間以上戦ってんだから疲れるわ。


「街に戻るぞ」

「え、もう?」

「寝たい」

「私たちも戦いたい」

「知らん」


 街へ足を向ける。

 妹達も着いてくる。


「出現条件は」

「分からん。餅食べてたら奪っていった」

「強さは?」

「強すぎることは無い。ただ俺の攻撃力不足だったな」

「なんでマント必要?」

「右腕無くなったから」


 そう言うと皆ギョッとこちらを見てきた。アキャリが

 口を開く。


「……このゲームの部位欠損って不快感すごいんだけどなんでそんなに普通なの」

「この程度は不快という程では無い。世の中にはもっと不快感の凄いゲームがあるんだ」

「えぇ……お兄さんがマイナーゲームが好きなのは知ってるけどそんなのやってたの?」

「というかそこら辺の調節が上手くいってないからバズってない物もあるんだよ」

「そうなんだ。……マゾだね」


 まぁ、マイナーになる理由はそれだけじゃないし、調節がうまいものもあるがな。ところでだ。


「別に俺はマゾじゃないぞ」

「いや、自らそんな環境にいるんだからマゾでしょ」

「黙れギャル子。お前も魑魅魍魎マイナーゲームの世界に連れていってやるぞ」

「それ、ただの布教では?」


 ただの布教だよ。マイナーそれ即ちプレイヤー人口がいないんだから。こういうとこでプレイヤーを獲得しなければサ終してしまうのだ。


 そんなこんな他愛もない話をして街まで戻る。妹らはもう少し遊ぶらしい。夜更かししすぎないよつ釘を刺す。

 彼女らと別れて宿に向かう。道すがら耳を済ませるとやはりアナウンスが話題の中心となっていた。なるべくバレないようにそそくさと端を通る。無事に宿に到着し、ベットに倒れ込む。疲れた。結局お餅も食べれなかったし。明日リアルで食べよう。今日は終わり。ログアウト。おやすみなさい。

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