Ep.24"窮地"
空のウサギ。俺が気づいた時には既にすぐそこまで迫ってきていた。
やばい。殺られる。……とでも言うと思ったかこんにゃろう。俺の全てを使ってこの窮地を……排除する。
視覚情報以外はいらない。色彩も不要。オミット。出来た余裕は思考に使用。
ターゲット再確認。
軌道予測開始。……予測完了。攻撃範囲予測開始。……予測完了。攻撃到達地点より半径5メートルは危険と推測。
範囲脱出……不可。AGI不足。
防御……不可。直撃回避を推奨。余波なら耐えられる可能性有り。
回避方法模索開始。データ参照。……模索完了。6パターン有り。
全パターン行動予測及び生存確率計算開始。
パターン1……生存確率3パーセント。直撃の可能性大。
パターン2……生存確率12パーセント。追撃に耐えられない。
パターン3……生存確率35パーセント。四肢を失う可能性有り。
パターン4……生存確率44パーセント。失敗時即死。
パターン5……生存確率59パーセント。VIT不足により生存率低下。
パターン6……生存確率71パーセント。追撃不可。
……30SP使用。全てVITに……いや、半分をSTRに使用。
結論。辛勝。……否。否! 否!
圧勝! 大勝! 快勝! 必勝!
何がなんでも
食べ物の恨みは怖いと言うだろ? 餅の恨みは膨らみ続けるのだよ!
ストレージから今まで作り出してきた
杵とぶつかりそうな物から【念力】を発動。同時に傷薬が入った瓶を口に突っ込みながら【跳躍】。
再び中毒症状が出るも無理矢理HPを回復させる。
「【
新たに傷薬を飲み下し、再度【念力】。今度は俺の足元の小石! 【ハイジャンプ】。
迫る杵を躱し、
「これが餅の恨みだァァァァァァ!!!!」
「GGGRRRRRAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
【スティング】連結【アッパーカウンター】with【短命】!!!!
短剣が進む。
「【武具の癒し手】! もうちょい働け!」
――ることは無かった。ブラック企業もビックリな労働条件。瀕死の死体に働かす畜生である。
ドスン!!
地面に杵が叩きつけられた音だ。慣性により刃は奥へと進む。
「そういや名乗ってなかったな泥棒兎。俺の名は小魚K。食い物の恨みには気をつけな。言っただろ。餅を喉に詰まらせて死んでまえと」
俺の右手にはな、テメェが投げつけた光る餅がくっついてるんだよ!
その瞬間。餅がさらに膨れ光り輝き……
ドガーン!!
爆発した。砂煙が充満する。
衝撃で転げ落ちる。驚いた。まさか爆発物だったとは。
視界が晴れると……何もいなかった。警戒しつつ空を見上げるも誰もいない。赤く染っていた月も元に戻っている。いつも通りの夜だ。
静寂の中、ファンファーレと共にシステム音が鳴り響いた。
《You win》
《Result》
《草原の主“血月”
《草原の主第一発見者報酬"称号【月の兎】"が贈与されます》
《草原の主第一討伐者報酬"
《草原の主単独討伐者報酬"月餅"が贈与されます》
《
《突然変異種の討伐に成功しました》
《突然変異種第一発見者報酬"称号【変異ノ観測者】"が贈与されます》
《突然変異種第一討伐者報酬"称号【変異ヲ否定スル者】"が贈与されます》
《突然変異種単独討伐者報酬"
《"血月"第一発見者報酬"称号【赤き月の観測者】"が贈与されます》
《"血月"第一討伐者報酬"特殊戦闘スキル【オツキミバスター】"が贈与されます》
《"血月"単独討伐者報酬"赤月餅"が贈与されます》
《これらの返却は受け付けておりません》
《これらの他人への譲渡は出来ません》
《初討伐によるワールドアナウンスを流します》
《ワールドアナウンスでの匿名を希望しますか?》
《YES NO》
情報量のオーバフロー!! なにがなんだって?! まず名前変わってるぅ! 突然変異種って何ぃ! 血月? ブラッドムーンですかぁ?!
ワールドアナウンスに名前出すとかやってられねぇよ。匿名でYES。そう思い右手を出……右手無い! なんで! いや、餅爆発するなら爆心地の右腕は木っ端微塵になるよな。うん。……なんで俺生きてるの?
ワールドアナウンスを開始します
ゑ?
草原の主"血月"
討伐者は"小魚K"様です
突然変異種を初討伐しました
討伐者は"小魚K"様です
以上でワールドアナウンスを終了致します
ッすぅーーーーー。あっるぇ? なんで名前流れてるの?
右手がないって言って騒いだ時に左手で押してしまっていたのだろうか。……もう外歩けない。
……取り敢えず、宿戻ろ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます