Ep.20"特殊な生態"

≪称号【クリエスタ王国所属職人見習い】を獲得しました≫


 ……は?


「……王国所属職人?」


 え? え? どゆこと?


 《称号【王妹殿下のお気に入り】を獲得しました》


「待て! 情報量が多い!」

「それじゃ、解散するかね」

「待てやコラ! 一から説明しろや!」


 クリエスタ王国ってどこ!? 所属職人見習いって何!? 王妹殿下ってだれ!? なんでお気に入り!?


 ひとしきり騒ぐと落ち着いてきた。お茶を飲み一息つく。覚悟を決め、一つ一つ尋ねていく。


「まずクリエスタ王国とは?」

「ここの国名だよ。ツクリ・メイ・クリエスタ女王陛下が治める国。それがクリエスタ王国だ」


 どうやらここはクリエスタ王国だったらしい。何気に初めて知った。


「じゃあ所属職人見習いっていうのは?」

「そら国に属する職人見習いのことさね」


 いや、そういう事じゃなく。


「なんで俺がそれになってんすか」


 聞くと数枚の紙をピラピラしてくる。先程署名したヤツだ。


「お前さんが国との契約に了承したからだろう?」

「それは管理人としてじゃ」

「確かに管理人もだがそれはついでだよ」

「つ、ついでって本命が所属職人の方なんですか?」


 チェル婆は頷くと力強く語った。


「確かに管理人にもなって欲しかったがそんなものはどうでもいい。お前さんを手放したくなかったのさ」

「なんでそんな買いかぶられてるんですか」

「なんで? バカ言うんじゃないよ! たかだか一週間ちょっとしか生産をした事の無い人間が『ジュエルフルーツと向月葵の魔力結晶を加工しました』なんて普通出来るわけないだろ!! どれだけ扱いの難しい素材か分かってるのか!!」


 いや、うん。おっしゃる通りで。確かに一週間ちょっと、Lv17程度のやつがレアリティ高い素材の加工に成功しましたとか与太話の類だと思うよなぁ。


「ケイ坊、お前さんはそんな有り得ないことをやったんだぞ。国として手放したくないのは当然だろう?」

「じゃあ管理人の話は」

「八割茶番に決まっておろう」

「茶番!?」


 あんな重大事のような雰囲気醸し出しといて茶番!?


「当たり前さね。私は生産ギルドラビリソス支部のギルドマスターだよ。この街周辺にジュエルフルーツが無いことなんて目録を調べなくても分かっておったわ」

「木を見に行ったのは」

「テストさね。あの時に他人に任せ切りにしたり目録の情報を抜き取ったりしてたらこの話はおじゃん。重要な仕事は今後任せないつもりだったよ。まあ天然ものを確かめるのも目的だったけどね」


 怖っ。でもそらそうだよな。国の重要な情報を流出させるような奴に仕事振りたくはないよな。


「さっきの書類は」

「管理人の手続きの中に紛れ込ませてただけだよ」

「なんでそんなことを」

「お願いして素直に聞いてくれるかい?」


 それは……ないな。


「お前さんを手に入れるためには汚いこともやる。私は職人じゃなくて元は商人だ。そして今は国にお仕えするギルドマスターなんだからね」

「はぁ。分かりました。諦めて受けいれます。どうせ破棄出来ないんでしょう?」

「まぁ、そう簡単なことでは無いね。でもそう悲観するでない」

「と言うと?」


 どうやら所属職人としての仕事は偶にくる国からの依頼をこなす事。ただそれだけであり、普段は自由に好きなことをしたり自分で仕事をとってきてもいいらしい。しかし一つ制約がある。それが国の害となる行動をとらないこと。つまり他国に肩入れしたり、国賊に加担したりすることなどの国を混乱、転覆させるような行動が禁止されている。

 逆に所属職人になるメリットは国が後ろ盾となること、一般人が見たり触ったりできないような素材や書物に触れられること。また、見習いがとれて正式に所属職人になると専用の工房がもらえるらしい。どうやら国などの許可を取らないといけない設備も中にはあるそうで、使用するための煩わしい条件や手続きを省略してもらえるらしい。


 これを聞くとならない理由がないので俺はクリエスタ王国所属職人見習いになることにした。


「次なんですけど王妹殿下って」

「それについては私が説明するわ」


 声を上げたのはアイミーさん。どうやら彼女が説明してくれるらしい。


「まずね、王妹殿下っていうのはね私のことよ!」


 あ、ドヤ顔かわいい。……じゃなくてアイミーさんが王妹殿下? 王族? 女王の妹?


「……なんの冗談ですか?」

「冗談なんかじゃないわ。私はアイミー・メイ・クリエスタ。正真正銘の王族よ」


 デデーンと効果音がつきそうなほど胸を張り宣言する。

 この国がどうかは知らないが王族を騙るのはよろしくないだろう。そして隣にいるチェル婆は反応なし。ということは本当に?


「……これまで結構舐めた口きいてたんだがどうしよう」

「別に構わないわ。むしろ敬われるのは嫌だもの。何のために身分を隠していたと思ってるのかしら」

「口に出てましたか。すいません。そして寛大なお心ありがとうございます。……これからはアイミー様とお呼びしたほうがよろしいのでしょうか?」

「その気遣いは無用だわ。アイミーでいいわよ。それからしゃべり方も気持ち悪いわ。普段通りにしなさい」

「気持ち悪いってなんすか。でもわかりました。今まで通りにさせてもらいます」


 こういうのはあまり食い下がり過ぎても機嫌を悪くするだけなのだ。さっさと折れるに限る。


「あら、もっとタメで話していいのよ? なんだっけ『放せ、襲うぞ』だったかしら」

「やめろ、やめて、やめろください! 俺が悪かった! タメで話すから! そんなこと王族に言ったって知られたら死んじゃう!」

「ふふん。それでいいのよ」


 というかアイミーさんキャラ違くない?


「そんなの外面よく見せるために決まってるでしょう。処世術よ」

「うわー。さすが王族。きたねぇ」

「レディに向けて汚いとは失礼ね。でもそんな王族に気に入られたあなたも大概よ」


 そういえばお気に入り判定されていたんだった。いやなんで?


「そういやなんでお気に入りなんだ?」

「ん」


 見せてきたのはAimer。これがどうかしたんだろうか。


「これ、今のあなたの全てが詰まっているでしょう?」

「それはそうだが、どうかしたのか?」

「私たちクリエスタ王族はモノに秘められた想いを感じ取ることができるの」

「想い……」


 確かに俺は渡す相手のこと、アイミーさんのことを考えて作った。


Aimerこれには私への想いが溢れんばかりに詰まってる。ケイみたいな半人前の人が込めらる量じゃない。それどころか普通の職人だったら超えてる量よ。どれだけ私のこと好きなの? って感じよ」

「つまり?」

「こんな熱烈なプロポーズされて嫌な女の子はいないってこと」

「プロポーズではないが」

「なに、私を捨てるの?」


 捨てるも何もない。


「いや、俺彼女いるし」

「冗談よ。あなたたち眠り人プレイヤーはこっちの世界のこと知らないもんね。でも覚えておきなさい。クリエスタ王族への求婚はプレゼントに込められた想いの大きさが一つの選考基準なのよ。ケイのものは私に送られてきたプレゼントの中でぶっちぎりで大きくて重たかったわ」

「想いだけに?」

「だまらっしゃい。とにかく私のお気に入りの理由わかった?」

「半分くらいは」


 この国の王族が特殊な生態をしているのはわかった。


「まあいいわ。ではクリエスタ王国所属職人見習い、小魚Kに最初の依頼を与えるわ」


 アイミーさんの真面目な雰囲気に姿勢を正す。


「小魚Kよ、いつかこのAimerの能力を十全に発揮したものを私に作りなさい」


≪クエスト発生!≫


 ――――――――――――

 依頼:月よ、心の叫びを聞け!

 内容:能力を完全開放したAimerの納品

 依頼主:アイミー・メイ・クリエスタ

 推奨レベル:60+

 期間:無期限

 報酬:700000ゴールド、???

 ――――――――――――


≪このクエストは指名依頼です≫

≪このクエストは拒否できません≫

≪受注しますか? YES はい≫


 いや、最後のいらなくない?

 推奨レベルたっか。

 YESで。


≪クエストを受注しました≫


「頑張りなさい。いつまでも待ってるわ」











*あとがき*

イベント走ってたら投稿するの忘れてた。(´•ω•`)スマヌ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る