Ep.18"約束の品"

更新再開します!










「アイミーさん」

「あら、ケイさん。約束忘れちゃったのかと思ったわ」

「すいません、お待たせしました。もうちょっと余裕持てればよかったんですけどね」

「冗談よ。短い期間でよく間に合わせてくれたわ」

「そう言ってくれると助かります」


 実際に学生が平日に使える時間なんてたかが知れている。自分でもよく間に合ったもんだと今更ながら感心する。

 そんな風な雑談を少し挟み本題に入る。


「それではこちらが約束の品です。どうぞ」

「あら、可愛く包んであるじゃない」

「まあ、クエストといってもアイミーさんへのプレゼントなので」


 手渡したのは花の模様がちりばめられた包装紙で包まれた箱だ。箱のほうは変哲のない木箱である。

 丁寧に紙を取り払う所作からは育ちの良さが滲み出ている。


「これはブローチかしら」

「はい。三日月と向月葵をモチーフとしたブローチとなっています。名前は”Aimerエメ”」


 Aimeアイミーから連想し、「」という言葉を内包させた。Aimerはフランス語で愛する、好きだという意味の言葉だ。

 こういうロマンチックなものは大好きなのだ。なかなかセンスいいんじゃないかと自画自賛してみる。

 まあ、俺の愛する人は別にいるのだが。

 俺のことは置いといてAimerの性能はこちら。


 ――――――――――――

 名称:Aimer

 希少値:PM

 品質:B

 製作者:小魚K

 効果:MP+5、INT+5、MIN+5

 追加効果:【MP回復(月光)(微)】【MP貯蔵(15)】【クリティカル率上昇(魔術)(微)】


 希少な素材が使われているため、高い効果を発揮する。しかし製作者が未熟であるため十全なではない。ツキノコハクが使われているため、月に対する親和性が高い。

 ――――――――――――


 この前の妹たちの言葉から考えるにマジでヤベー性能だ。それでも出来損ないらしいので驚き桃の木山椒の木だ。未熟な自分の腕が憎い。というか制作難易度無茶苦茶高かったなあ。今はもう一度は作れない気がする。おそらく先のステージまでいかないと普通は手に入らなかったんだろうなと思う。


「綺麗な物をありがとうね。ところでこの赤い宝石高くなかった?」

「いえ、自分で採ってきたので元手はゼロです」

「そう、ここらへんでルビーが採れるところなんてあったかしら」

「ルビーではなくジュエルフルーツでしたから」

「へえ、ジュエルフルーツなのね」


 ……

 ……


「あ、やっべ」

「ケイさん? これ、どこで手に入れたのか教えてくれる?」

「すいません、うさぎさんが待っているのでお暇させていただきます」


 走り出す。見よ、AGI1の俊足を!


「待ちなさい!」

「やだ!」

「確保!」


 捕まった。畜生! なんでこんなに足が遅いんだ!

 それより、アイミーさん?! 当たってる! 抱きついてるから背中に、背中に柔らかいものが!


「当ててんのよ!」

「なんでだよ!」


 とりあえずおとなしくする。……おとなしくしたらしたで背中の感触が気になってくる。放してくれないかなあ。


「それで、話してくれるかしら?」

「俺のSTRは30もあるんだ、けがしたk」

「私のSTRは65よ?」

「さっせんしたー!」


 なんでそんな強いの! 二倍あるやん!

 あーもう! 話しゃいいんだろ!


「話す! 話すから放せ! 襲うぞ!」

「どういうこと?!」


 日本語難しいなあとか思ってたら放してくれた。自由になったと思うのもつかの間、今度はボディーガードさんに捕まった。

 今の俺は借りてきた猫状態である。


 そのまま担がれてとある部屋に連れていかれた。プレートにはギルドマスター室と書いてある。

 アイミーさんの対面に座らされるとお茶が出てきた。美味い。このお茶ほしいな。

 そんなことを考えていると扉が開く。入ってきたのは一人のおばあ様。生産ギルドのマスターであるチェルニーさんだ。愛称はチェル婆。時々カウンターにいるのでお世話になっている。

 チェル婆はよいせとアイミーさんの隣に腰を下ろすとお茶を飲む。カップを置くとこちらを見てきた。年に似合わない鋭い眼光だ。思わず震え上がる。


「それで、ケイ坊や、何を見つけたんだって?」

「ジュエルフルーツです」

「アレがは何か知っているのかね」

「年に一度しか採れない希少な果物なんですよね」


 チェル婆は首を縦に振るとさらに口を開いた。


「その希少性から国に管理されていることはしっているかい?」

「……え?! そうなんすか?!」

「そのようすだと」

「初めて知りました」


 チェル婆は一つ溜息を吐くと今実を持っているか聞いてきた。

 答えるとともに取り出し渡す。鑑定しているのかじっくり見るたあと返された。


「確かに本物のようだ。どれ、見つけた場所に案内してもらえるかい」

「いいですけど、明日の夕方以降でもいいですか? そろそろ寝ないといけないので」

「ああ、そういえば君たちは深く眠る必要があるんだったね。どこの宿だっけ?」

兎兎亭ぴょんぴょんていです」


 そう答えると二人ともあーという顔をした。

 まあ気持ちはわかる。あそこの従業員は男も女も皆バニースーツを着ているのだ。タイミングによってはログイン直後からガチムチバニー店主に迎えられることとなる。あれは萎える。


「それじゃあ私たちが明日迎えに行くから案内しておくれ」

「わかりました」

「……って、わたしもですか? チェルマスター」

「当たり前だよ。あんたが連れてきたんだろう」


 アイミーさんも来てくれるらしい。実質デートだ。保護者同伴だが。

 ということで今日はここまで。宿に戻ってログアウトした。

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