Ep.12"万年金欠"

 あれから木を切り倒し、石斧を回収しを繰り返した。

 結果、ゴブリンの石斧を20個使い潰して60個の木材を手に入れた。レベルも上がった。

 途中で“へびさん”とかいう蛇が襲ってきたので捌いた。毒を貰ったけどオートヒールで治った。【治癒体質】様々だ。しかもその【治癒体質】様がレベルアップした。やったね。


 ギルドに戻って換金する。8200Gになった。合計所持金11250G。初めて5桁になった!

 “銅”を10個買って、鍛冶場を借りる。今回はグレードがひとつ上のところをレンタルした。前のものに加えて炉にふいごがくっついて、火の勢いを調節できるようになった。それに加えてたがねという切込みを入れる道具もあった。まぁ、これはどうせセットにもあるので使わないのだが。


 さて始めるか。

 炉に火をつける。ふいごを使い空気を送り込み、火の勢いを強くしていく。炉が温まってきたら銅を入れる。

 取り出したら固定しつつ叩く。カァンと高い音が鳴り響いた。

【灯火の詩】発動。

 丁寧に、丁寧に。鋭く。程よく薄く。軽くなるように。叩いて、伸ばして、さらに叩く。冷めたら炉に入れてもう一度。

 カァン カァンと高い音が鳴り響く。

 ふいごで大量に空気を送り、火を膨らませる。そしてその中に剣の元を入れて熱する。最後は冷水で一気に冷ます。

 完成だ。


 ――――――――――

 名称:銅の短剣(劣)

 製作者:小魚K

 耐久値:50/50

 要求値:STR20

 希少値:PM

 品質:E


 銅でできた一振。丁寧に心を込めて作られている。最安値にはなるが商品として並べることが可能になった。まだまだ荒いところが見られる。

 ――――――――――


 よし。やっと商品になるものを作れた。さて、あと9個。作っていきますか。


 ☆ ☆ ☆


 カァン カァン カァン


 よし。


 ジュワッ(熱した剣を冷水に入れる音)


 出来た。


 ――――――――――

 名称:銅の短剣(劣)

 製作者:小魚K

 耐久値:80/80

 要求値:STR25

 希少値:PM

 品質:E


 銅でできた一振。丁寧に心を込めて作られている。最安値にはなるが商品として並べることが可能になった。まだまだ荒いところが見られる。

 ――――――――――


 よし、1番いい出来だ。

 今回は耐久値が50〜80までの短剣を作ることが出来た。そして何より大事なのが、商品として売りに出せるということだ!! 万年金欠の俺には嬉しい知らせである。

 というわけで売りに行こう。

 おっちゃ〜ん!


「これ、買い取れます?」

「おう。初出品か。どれ、ちょっと見せてみな」


 フレーバーテキストにも最安値と書かれていたから値段には期待していないが初出品だ。気になる。

 1番いい出来の物は俺が使うので売っていないが。


「こいつらだとひとつ600Gだ。最安値になるが良いかい?」

「全然良いです。むしろお願いします」


 てことは5400G。利益は出なかったけれどほぼ素材と場所代を相殺出来るのだからなかなかいいんじゃないか?


 それじゃあ木材使って何か作ってみるか。


 ここでこのゲームの生産スキルについて話しておこう。生産スキルには“オート”、“セミオート”と“マニュアル”、そして“セルフ”の4つの使い方がある。

 “オート”は最初から最後までゲームシステムが勝手に作っていく。作るものも1度自分で作ったことがあるなら一覧から決めることが出来る。ただし品質は低くなるし、経験値も入らない。

 “セミオート”は作ったことがなくてもレシピを知っていれば作るものを一覧から決めることができるし、鍛治だと金槌で叩く場所、細工だと掘るべき場所がシステムアシストで分かるようになる。ただし作業は自分でしなければならない。品質と能力値は製作者の腕による。経験値はそこそこ入る。今まではこれでやっていた。

 “マニュアル”は作るものは一覧からしか決めれないが、制作はシステムアシスト無しでやるやり方だ。そして1番の特徴は追加効果が付与されることがあるのだ。使う素材である程度追加効果の有無、効果が何になるかは決まるが最後は運、つまりランダムに決定される。ただ、スキルを使わなければ確率はかなり低いらしい。

 “セルフ”は作るものの設計から制作まで全て自分でやらなければならない。つまりこのやり方だとオリジナルアイテムを1から作りだすことが出来るのだ。もちろん追加効果よ付与確率も"マニュアル"より若干高い。製法を登録したアイテムは次回から他の3つの方法でも作れるようになる。


 どのやり方でもスキルレベルが低かったり、自らの力量以上に素材のランクが高かったりすると高確率で失敗になる。

 普段は“セミオート”で短剣を作っている。アイミーさんのクエストでは是非“セルフ”で作りたい。ついでに妹への報酬も"セルフ"で作ってみようか。


 アクセを作ろうと思っても何すればいいか分からないので、まず何を作るかを決めよう。練習である今回は木彫りの人形にする。うさぎの置物だ。

 どこで作ったらいいか聞いたら生産ギルドでは細工場所の貸出も行われていると言われた。大人しく借りて作ることにする。


 "セミオート"で作っていく。木材を1つ手に取りシステムアシストに従って大まかな形に切っていく。あ、割れた。……え、これ刃を入れる方向とかあるの? え、木材の向きに気をつけましょう? 小口から切ると裂けます? それ先に言えよ。


 気を取り直してもう1回。今度は上手く形を取れた。

 次は表示された線に沿って彫刻刀で彫っていく。


 カツカツカツ


 あ、はみ出しちゃった。修正してと。

 あ、使う彫刻刀これじゃない! あぁ!


 そうして何とか作り上げれたのがこちら。


 ――――――――――

 名称:うさぎさんの木彫り(小)

 製作者:小魚K

 希少値:12

 品質:C


 小魚Kによって作られた木彫り。修正を重ねた結果本来よりも小さいサイズとなった。商品として並べることが可能な一品。小物としてちょうどいい。

 ――――――――――


 初めてにしてはなかなかいいんじゃないかな。品質も短剣では見た事ないCだし。

 とりあえず今持ってる木材全て使って練習しよう。

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