第二章"Game Start"

Ep.2"性別があるかは分からない"

加筆修正

2023/07/05

この空間の時間はリアルの六倍まで加速→ このキャラクリエイト空間の時間だけはリアルとゲーム本編の六倍にまで加速














Lost Child Online一式が届いた。これから色んな設定やらキャラクリやらをしなきゃならんのか。なかなか手間がかかるな。


 ゲーム機の見た目は首にかけるタイプのスピーカーと類似している。このゲーム機は"Lost Child Online"対応の新型機器だったりする。既存のものだけだとゲーム機が耐えられないから補助器具で性能を底上げするそうだ。それでもLCOに耐えられる最低スペックしかないらしい。ちなみに高級な奴は完全新規でウン十万もするんだとか。その代わりスペックはヤバいという噂だ。


 コンセントやら配線やらを繋げたり、なんやかんやは妹様にやってもらった。何故なら昔自分でして出火させたことがある。直ぐに鎮火されたがあの時はちょっと焦った。それからは家族に電子機器を無闇矢鱈にいじることを禁止にされた。

 とりあえずパパッとキャラクリしますか。電源ポチッと。


 どうやらキャラクリの前に音声設定があるようだ。

 流れてくる例文を口にするだけらしい。


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 音声設定と他にも身体のスキャニングやその他色々を設定しなきゃいけなかった。しかも音声設定の例文が厨二チックだった。完全に遊んでるだろ。

 だがやっと始められる。電源を一度落としカセットを差し込む。

 ベットに寝転ぶと電源を再び入れる。

 意識が段々と薄れていく。やっとゲーム開始だ。


 ☆ ☆ ☆


 一瞬の浮遊感の後、目を開けるとログハウスのようなとても生活感溢れる所にいた。こんな家が欲しい。しかも家具一つ一つが高級感溢れるアンティークな木製家具だ。


「あら、こんな時期にお客さんだなんて。珍しいこともあるわね」


 そのように声をかけてきたのは暖炉の近くに座ってお茶をしていた女性だ。白い長髪に青いサファイアのような目。半透明の白い羽が生えてる。明らかに人間では無い。


「やっぱり珍しいか?」

「まあね。サービス開始から一ヶ月経ってるし、第二陣は一ヶ月後だしねぇ」


 今の俺の容姿はリアルと全く一緒である。着ているものはパンツだけだ。そんな格好で女性の前に立っているのに何も気にしないのにもファンタジーを感じてしまう。


「そういえば名前をまだ言ってなかったわね。私はチュートリアル担当【精霊】のナナよ。」


 そう言って微笑みかけてくる。その柔らかい表情からこの人……人? は世話好きな女性だと推測した。性別があるかは分からないが。


「あなたの名前を教えてちょうだい?」


 その言葉と同時に俺の前に半透明の板が二枚浮かんできた。名称はパソコンなんかと同じくウィンドウとキーボード。他人には許可しないと見えない。傍から見たら虚空に目をやって手を忙しなく動かす危ないヤツである。


 キーボードに指を這わして文字を打つ。“小魚Kこざかなけい”これが俺のキャラネーム。今まで遊んできたほとんどのゲームで使っている名前だ。


「小魚Kちゃんね?短い間だけどよろしくね?」

「こちらこそよろしく頼む」


 何故ちゃん付けなのだろうか? 疑問を持つも差し出された手を握り返す。

 次はこっちよ。と言われ大きな姿見鏡とクローゼットの前に移動する。


「ここでアバターの見た目を決めてちょうだい。リアルの姿のままでも行けるし、細部を変えることも出来るわ。ただリアルそのままだといらない問題を起こすこともあるから少しは変えておいた方がいいわよ。姿見鏡の変えたい部分をタッチしたら変更できるわ」

「なるほど。まぁ、いちから理想の姿を作っていくか」


 頭の部分に触れると頭の形、髪の長さや髪の色等色々あり、中にはつむじの位置なんてものもある。変えたところで何かが変わるとは思えない。なんであるのか不思議だ。

 さて、俺は外見を自由にできるゲームでは理想の姿をいちから作る派だ。そうしないとキャラクリの意味が無いからな。

 よし、まずは……


 ☆ ☆ ☆


 目の前に《終了》のボタンとキャラクターの全身が映ったディスプレイが表示されている。その出来たキャラクターというのが自分の現実の姿とほぼ変わらない外見をしたキャラクターだった。しかも変わっているのが長髪になった髪の毛、瞳とその色だけ。

 弁明させて欲しい。誰にと聞かれると困るがとにかく弁明させて欲しい。

 まず身長。これは現実から変えすぎても視線の高さがログインしたりログアウトして変わることで酔うことがあると聞いた。なので現実と同じ身長に設定したのだ。

 次に手足。これも長さを変えても慣れるまでに時間がかかるだろうしすでに周りから1月分遅れているから慣れる時間を取ることももったいない。体型についても同じことが言える。

 顔なんだが……微調節して俺の理想を求め続けた結果全く同じ顔になった。つまり俺は誰もが認めるだろう完璧な容姿をしているということだ。あいあむぱーふぇくと。という冗談は置いといて、今更他人の顔を使っても違和感がある。そのため元々の顔に似せたという訳だ。

 肌の色は元々俺は色白だ。日焼けしてもすぐに色が抜ける。その上褐色よりも色白の方が好きなので違和感を無くすように調節していったら俺自身が出来上がった。

 長髪のポニテにしたのは憧れがあったからだ。

 これ以上いじって変にしたくないのでこのまま終わる。

 終了と言う文字に触れると《反映しますか?》と浮かんできたのでYESをタッチする。

 すると頭の後ろが少し重くなった。軽く頭を振ると髪の毛が当たって背中がくすぐったい。


「次は何をすればいいのだ?」

「あら。もういいの?」

「もうって言っても3時間ぐらいは経ってるけどな」

「ここではもっと時間使っても構わないのよ。ま、満足したのならいいんじゃないのかしら。じゃぁ次は装備を決めるわよ」


 装備? 初心者は全員一緒じゃないのか?


「性能はどれも一緒だけどデザインが違うわ。アバターの外見によっては合わない人もいるだろうからね」


 なるほど。一理あるな。装備となるとクローゼットか?

 クローゼットに手をかけて扉を開ける。やはりあった。しかもハンガーにかかってズラっと。明らかにクローゼットの見た目の内容量と中にあるものの量が合ってない。

 ……ファンタジーだ。


「そうそう。クローゼットに沢山あるわよ。好きな物を選んでね?どれだけ時間がかかってもいいわよ? なんせこのキャラクリエイト空間の時間だけはリアルとゲーム本編の六倍にまで加速されてるから」


 ……Wow…科学すげぇ……。

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