第6話 スライムが仲間になりたそうにこっちを見ている


『スライムが、仲間になりたそうにこちらを見ている。』



草原の中で、少女と僕は出会った。


特に、なんのことはない。この世界では、魔物と人が出会うなんてよくあること...


「わぁ、綺麗なスライム....プルプル震えていて、とても可愛いわ。」


そうかな。僕....可愛いかな?


お花が、ゆらゆらと揺れる中、僕は少女につつかれて嬉しそうにプルプルと震える。


「ふふふ、このね。ワインと、花畑で詰んだお花。あと、洞窟の怖いドラゴンさんがくれた金色のコイン。素敵な色でしょ。これ、私にって、くれてんだよ。」


金色のコインを、太陽へとむけて反射してくる明かりに目を細めながらうっとりとする少女。


ドラゴンさん?その人は、大丈夫な人なの?


「また、プルプル震えてる....大丈夫だよ。全然っ!!問題ないんだからっ!!とても、優しくて...困ってることが沢山あるのって言ったら、この金を使うといいって」


へぇ...世の中には、そんなドラゴンがいるんだな。僕も、会ってみたいな。


「プルプル震えてるっ....やっぱり、行きたいんだね。」


そりゃ、一目惚れした君が、優しいっていうのなら、きっといい人に違いないだろうからさぁ。僕...絶対会いたいな。って思うんだ。


って、ねぇねぇ...後ろに凄いドラゴンがいるよっ!!


「ぅうううぁああ!!なっ、なにっ!!凄い風が吹いてきたんだけど、って、れ、レッドドラゴンかぁ。もう、脅かさないでよ」


レッドドラゴンが、鼻息荒くブフゥーと、息を吹き鳴らすと、少女の髪の毛がぐちゃぐちゃになる。


少女の顔が、あまりにも酷い顔だったから、なんだか面白いな。


「う、うむ。我は、別に脅かそうとしたわけではないのだがな」


「ふふ、知ってるわ。優しいドラゴンさんって、なんだか面白いね」


木をピョンピョンと飛んで、ドラゴンの頭に乗る。大きいな。ドラゴンって....


「むっ?このスライム、話ができるみたいだぞっ!!」


「えっ!?嘘っ!!私も聞きたいっ!!」


「ん、あー....そのだな。人間は...そのぉ」


「聞けないの....?」


わざとらしく、うるうるした目でレッドドラゴンを見つめる。


あぁ!?!そういうのは、さぁ!!ダメでしょぉ!!


「......むっ、むぅ、仕方ないか。い、いいか?これは、誰にも知られていない古代の秘術なんだがな?テイムと言って、モンスターを手懐けることができるというものだ。」


「な、なにそれっ?!?すごいっ!!すごいっ!!そのテイム?っていうの教えてっ!!」


「分かった分かった。えぇと、まずだな。このスライムと、感覚を共有させる。」


「何言ってるの?ドラゴンさん?」


そんなこと、いきなり言われたって、分からないでしょ。もう、凄い抜けてるんだね。ドラゴンさんは...


「むっ!?分からなかった?これで、昔の人達なら、伝わったのだがな。スライムの体に触れて、スライムの体に流れる魔力を感じるんだ。」


「んー、分かった。ちょっとやってみるね。」


そう言って、少女は駆け寄って僕の頭に手を置く。暖かな手だな。凄く、心地がいい。


「スライムさん、気持ち良さそう。」


「うむ。よいな?そうしたら、スライムと少女の魔力をちょっとずつ貰っていく。時間をかけてな?ゆっくりと」


「できたっ!!」


「う、嘘であろう!?もっと、普通は時間のかかるものなんだが!?」


なんか、むず痒かったけど、凄い君の魔力を感じる。


「私の魔力を感じるって...」


「す、凄いな。少女にテイムの才能があったとは、しかもそれをスライムに...なんとも、もったいない気が....」


「むっ!!いいのっ!!私が、好きだって思ったんだから、スライムさんがいいの」


そうだよっ!!僕に、なにか言いたいのなら正々堂々言ってもらおう。


「おぉ...スライムさん。強気だ。」


「ほぉお?我、ドラゴンぞ?我に強気とは...」


......


ごめんなさい。許してください。


「ふふ、あははははは」


「ぷっ、ふ、ふふははははは」



何笑ってるの?二人とも?


少女は、笑い涙を手で拭って...


「うん。そのね。なんだか、家族みたいだな。って....」


僕は、木に登ってドラゴンの頭から、少女を眺める。

少女は、キョトンとした顔で、僕を見つめていた。



じゃあ、レッドドラゴンさんはお父さんだね。




「なっ!?お父さんだとっ!?」


「あはははは、確かにっ!!お父さんかも、すごい威厳あるし、カッコイイし...ねぇ、お父さん、私にこれからも色々教えてねっ?」



「お父さんでは、ないわっ!!勝手にお父さんにするなっ!!」



お父さんっ!!お父さんっ!!


「お父さんっ!!お父さんっ!!」


「や....やめてくれ....//」


ドラゴンが照れてる....


「本当だ。ドラゴンさん照れてるね。」


最後は、三人で笑いあった。







『インフィニティ・ディメンション・ブレイク』


夢を見ていた気がした。遠い白い世界での話だ。どこにもない。世界の話だ。


僕は、神になった。


けど、変わりに周りには誰もいなくなってしまった。神を殺せるのは、神だけ....


この星から、遠く。遠く離れた宇宙のどこかで、僕はそれを結構した。



誰も僕を殺せない。

誰も、僕を傷つけることができない。

逆に考えれば、自分の魔法で滅ぶことは可能だろう。


イフィニティ・ディメンション・ブレイクは、無限の空間爆発を自分が爆発させたいと思った場所に起こす魔法。


「ァァアアァァアアアア」


自分の魔法でも、スライムである体は攻撃を吸収しようとする。絶えず爆発を起こす。果てしない音のない爆発が、何度も...何度も....何度も...何度も...



「ガァァァァァァァアアア」



何度も....何度も何度も....何度も....


果てしなく繰り返される。ついに、僕は限界を迎える。あぁ...やっと、これで...


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