第一章-6
ユリの権能は『生命』。
この世で生命と定義される存在を操る権能だ。植物を生み出すのはその力の一端に過ぎない。
その真骨頂は亜獣の支配にある。
「上へ飛べ! あの二人を背に乗せて!」
ユリがそう言うとホークは一気に飛び上がる。
一気に飛び上がったホークは、いまだ空中にいるベルとランをあっという間に背に乗せる。
「マツバはどこ行ったのぉ⁉」
「ホークが足でつかんでるよ!」
「俺も背中に乗せてくれっすぅぅぅぅぅ!」
「ならよかったぁ!」
「さあ、逆さ街にエントリーだ!」
ユリはそう言って逆さ街を指さすと、ホークは高らかに鳴いて逆さ街へ直行した。
ホークはきれいな直線を描いて、逆さ街の上、すなわち岩盤とマグマの間に入ると体をくるりと回転させ、着地した。
「ぐえっっす……」
着地には、当然足を使ったためホークの足と岩盤にマツバは挟み込まれた。
ちょうど着地した場所の周囲にいた、逆さ街の住人たちはきゃーきゃー言いながら散り散りになって逃げてしまった。
ユリ、ベル、ランはホークの背からひらりと降りる。ユリは上を見上げて小さく笑う。
「うはぁ。ほんとにマグマが上にある!」
「これは、なかなか見れない景色だねぇ……!」
ベルも上を見上げる。ホークの足の隙間で蔦と格闘していたマツバも、遅れながらユリとベルの横に立ち上を見上げた。
「あのマグマ、落ちてこないっすよね……?」
「昔、星を眺めていた人たちも同じことを言ったと思うよ」
「それとは距離が違うじゃないっすか……」
ユリの適当なフォローにマツバはええっ……という表情を浮かべつつユリを見る。
ユリはすでに上を見上げることを辞め、逆さ街の住民たちから遠巻きに奇異の目で見られているホークに近づく。
「今回は助かったよ。ありがと。それから、これから私と相棒関係になるからよろしく」
「ビィ」
「肉をよこせって? いずれあげるから我慢して。食わなくても死なないでしょ」
「ビィィ」
「あいたぁ!」
ホークはユリの頭を嘴ではさみこんだ。
「肉がないなら私でもいいって⁉
私を食わせるわけないでしょ! はぁ? 私も死なないんだから食われてもいいでしょって?
そういう話じゃないでしょ!」
ユリはぷりぷり起こりながらホークの腹に左手で触ると、デバイスを操作し言う。
「インポート。 鷹(hawk)!」
ホークの姿が塵になって消えた。
ユリのデバイス内にホークの情報が記録され、いつでも呼び出せるようになった。
ホークとの会話(?)を終えたユリがベル達の方へ戻ると、そこには、この街の亜獣狩り達が集まっていた。
亜獣狩り達は質素な鎧に、みな槍など思い思いの武器を持ってここへ駆けつけていた。
後ろからベルの横に立ったユリは、こそっとベルに状況を聞く。
「何事?」
「何か、大型の鳥の亜獣が街中に出たから、討伐に来たんだってぇ」
新たな厄介ごとの気配を感じ、ユリは溜息をついた。
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