第21話 海の声
手記に示された地図を前に、計画を立てる。
靄の発生箇所は9つ。
手記についていた座標計の読み方は、ヴィクトルの記憶が教えてくれた。
まずは、一番近い場所へ向かおう。
でも、水中でどのように進めばよいかには少し悩む。
泳ぐのは得意だけど、そんなに長い距離、しかも海の中を泳いだことはない。
夢の中でお祖母様が水を分解して進んでいた光景が、心に浮かぶ。
戦うときに自由に動けるようにするためだろうか、周囲の水をしていたようだった。そういえば、推力としても活用していたみたい。私もできるかやってみよう。
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海辺へと足を運び、水面を見つめる。
海獣との戦い、未知の靄、そしてヴィクトルへの思い。
すべてが胸に重く響いていた。
「ヴィクトル、待っていてね。必ずあなたを取り戻して見せる。」
その言葉を胸に、海へと飛び込む。
水を分解し、自由に泳ぐ。
初めての感覚だったけど、すぐに慣れることができた。
水中の世界が、迎え入れているかのようだった。
海の中、それは森とはまた異なる、別の世界だった。
森は静かで調和があり、海は開放的で躍動感がある。
水面を透過した太陽の光が、海底の生物たちに幻想的な影を落とす。
波の音は聞こえず、ただ静寂が広がる。
森は静かで、風が木々を通り抜ける音、鳥のさえずり、それらが一体となって、心地よいメロディーを奏でていた。
森の中で感じたのは、自然の調和と、そこに住む生物たちの暮らしの息吹だった。
でも、海は違った。
海は開放的で、生命の躍動感が感じられる。
色とりどりの魚たちが、私の周りを舞い踊るように泳ぐ。
それぞれが異なる形と大きさで、まるで自然が描いた絵画のよう。
海の中では、魚たちの動き、波のリズム、それらが一体となって、新しいメロディーを奏でていた。
「きれい……」
その一言が、私の心の中でこだました。
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海底へと潜るにつれ、光は次第に失われていった。
私の目の前に広がるのは、未知の闇。
初めての深海への挑戦、それは未知の世界への一歩だった。
心の中で鼓動が高鳴るのを感じる。
「怖くない、怖くない。ヴィクトルと会うんだから。」
と、自分に言い聞かせ、前へと進む。
この冒険は、ただの好奇心からではない。
愛する人を取り戻すための戦いなのだから。
深海へと進むにつれ、光が少なくなり、暗闇が広がっていく。
でも、お祖母様は、暗い海底でも見ることができていた。
「私にもできるはず……」
そう思い立ち、感覚を研ぎ澄ます。
水の流れを感じ、自分の進むべき方向を見つける。
水の抵抗を感じつつ、最適な歩み方を探る。
少しずつ、闇の中でも、新しい世界が開いていった。
森での生活が教えてくれた感覚が、今、水中で私を導く。
水の音、微細な波動、遠くの生物の息吹。
それらが私の耳に届く。
「これが、海の声……」
私は心の中でつぶやく。
この新しい感覚は、私に暗闇を見通す力を与えた。
「ヴィクトル、私は大丈夫。この感覚が、私を正しい方向へと導いてくれる。」
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たどり着いた、海底の穴。
そこから黒い靄は湧き出ていた。
黒い靄はにじむように海中に消えていったが
それに触れた生物は黒い炎に焼かれ消え去っていった。
「夢の中でお祖母様が見ていたのと同じ、でもあれは、何、、、」
穴のそばには、一つの壮大な影がそびえ立っていた。
それは丘のようにも見える、黒い巨大な竜。
その目は深く、噴き出る靄をじっと見つめていた。
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エ様『なんか出てきたぞ。』
門東『重要人(?)物のようですね。』
エ様『お祖母様の記憶をみれてよかったのじゃ。』
門東『愛の力ですね、愛の。』
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