第11話 濡れた手のひら
アリアがお風呂に入ってしまい、ひとまず時間を持て余したので、部屋の中を物色することにした。
無造作に本棚に立てかけられていたファイルが気になり、思わず手に取る。
何かの研究についての報告書がまとめられているようだった。
そして、一枚の報告書が挟まれていた。
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題名:人魚創造プロジェクト(Project Mermaid)に関する機密報告(Confidential Report)
要旨:正体不明の海洋生物、仮称「海獣」の出現に伴う海上輸送の機能停止とそれに伴う食糧危機に対する解決策を模索した結果、物質を分解し再構成する新技術を開発し、これを応用した人工生命体「人魚」の創造に成功した。
1.海獣問題の背景:
急激な海獣の増加により、世界各地に広範な被害が生じ、特に海上輸送に壊滅的な打撃を受けた。既存の兵器は効果がなく、海を取り戻すために新たな対策が緊急に必要となった。
2.物質再構成技術の開発:
物質が「存在することを肯定する」力により形成されているという理論から出発し、この力を向きを変えることで物質を分解し再構成する技術を開発した。この技術は世界を作り替える可能性を秘めており、我々はこの力を「愛」と名付けた。
3.「愛」の操作と人魚の創造:
「愛」を操作するためには、その力に干渉するための仕組みである「回路」と、その力を動かすエネルギー「想い」が必要となる。これらを同時に生み出すため、人間の女性をベースにした人工生命体「人魚」を開発した。人魚は人間を吸収し、「回路」を生成、そして「想い」をエネルギーとして蓄える。なお、「回路」と「想い」はセットであり、「回路」生成時に蓄えた「想い」しか「回路」で用いることはできない。
4.人間と人魚の関係:
人魚と人間との間の「愛」の深度が行使できる力の大きさに影響を与える。これは「想い」の量が大きいことに由来し、強い「想い」こそが「愛」の源となる。
5.結論と今後の展望:
人魚の量産体制を整える計画に着手し、人間と人魚の間の「愛」については既存の技術を用いて「調整」を行う。
この報告書は機密文書であり、未許可の閲覧・複製・配布を禁じます。Project Mermaid関連の全ての情報は、最高機密扱いとされています。
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この内容が正しければ、人魚は人間によって生み出されたことになる。そして、アリアが言っていたように、人魚は人を宝石に変え、その宝石を以て大きな力を行使する。
ではなぜ、人間は地底への逃げ込まなければならなかったのか。
ファイルの中身を確認したが、該当する情報を見つけ出すことはできなかった。
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どうぶつにひき、かたいところにはいってた
あそこかたくて、はいれない
でも、こまらない
でも、だいじょうぶ
まえとおなじで、だいじょうぶ
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アリアと入れ替わるようにして、入浴。
温泉以来の湯船に、緊張がほぐれていく。
ついに海を見ることができた。
全部、アリアのおかげだ。
思い焦がれた、海の藍。潮騒の音はどれも映像では表せないほどの輝きに満ちていた。
でも、それよりも美しい藍を、僕は知ってもう知っている。
あの瞳の少女と共に生きることができたらどんなに素晴らしいことだろう。
――― でもその望みは、叶わない。
少しせき込み、口元を手で覆う
――― アリアにこのことを、どう伝えよう。
赤く濡れた手のひらをみつめ、僕は結論を出せずにいた。
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エ様『ハッピーエンド、なんじゃよな?』
門東『はい。』
エ様『詰んでおらぬか?』
門東『いえ、それはこれからですよ。人魚の謎が一つ解けてよかったよかった。』
『ぼく食べ』と異なる時代の同じ世界が舞台のお話、公開停止になった性と愛の女神エロティア様が大活躍するお話、『巨根ハーフ』R18版はこちら(↓)での連載となります。
もしよろしければ、お越しください。
ご感想などいただけると、欣喜雀躍と喜びます!
https://novel18.syosetu.com/n3442ih/
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