③乖離
僕は意を決して、大きな責任と多大な幸福が待っている赤いボタンを押して受話器を取った。
プルルル。ガチャッ。
「お電話ありがとうございます!なんと!赤いボタンを選択なさったんですか!」
「はい。一目惚れですが、彼女と結婚できたら幸せだろうなって、、、」
「良いお考えですね!」
「ありがとうございます。」
「今後のご多幸をお祈り申し上げます。それでは失礼します。」
ツー。ツー。たったそれだけを言って切れてしまった。
なんだか夢か現実か分からず、不思議な気分だが、もしも結婚できなかったら払わなければいいだけだ。
その後、僕は二十歳の成人式を目標に、部活と勉強を必死に頑張った。恋愛に関しては、彼女を一途に思い続け、誰とも付き合うことはなかった。
そして気づけば成人式の日となっていた。僕は彼女と再会した時に、一層美しくなっているその姿に惚れ直した。そして思いきって、いや、用意周到なプロポーズをした。結果は分かっているはずなのに、とても緊張したのを覚えている。
現在はもう四十を過ぎているが、彼女との結婚生活は続いている。しかし相手の容姿や笑顔、声だけで好きになり、一切の交際期間が無かったため、大変な思いをすることとなった。
まず、お金の価値観が大きくかけ離れ、味覚に関しても意見が対立することが多かった。子供やペットに対する考え方にも乖離があった。私は当初、後悔を余儀なくされた。あまり相手のことを知らずに、その道を選んでしまった当時の僕を恨んでみたりもした。だが今はもう違う。
朝起こしてくれる君の笑顔は朝日よりも眩しく、これでよかったのだと思った。
〜③一途な恋〜 END
(9ページにあとがきあり)
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