第四話(赤いボタン)

「それでは次に赤いボタンの説明ですね。驚かないで聞いてくださいね。」

今更何を聞いても驚くことはないだろう。

「はい。」

「こちらを押していただくと、あなたが恋している人と結婚する未来が与えられます!」

「はい⁈」

「ですから、あなたは赤いボタンを押すだけで、今好きな人との結婚が保証されるということです。」

「いや、流石にこれは、、、」

「信じられないですか?」

「はい。」

「そうですか。でも方法は企業秘密ですし、、、。それに、もちろんこれには大きな代償が伴います。」

やはりか。さすがに怪しすぎる。

「大きな代償?」

「はい。百万円です。」

「百万円⁉︎いやいや、そんな大金無理ですよ!」

「もちろんそれは承知しています。なので、借金という形でお支払いいただきます。」

「借金、、、」

これには悪いイメージしかなかった。小さい頃から口酸っぱく親に言われてきたからだ。

「安心してください。普通、借金をすると時間が経つにつれて返済額が増えていくのですが、こちらは違います。就職後に月当たり千円だけ口座に振り込んでいただきます。それに、利息はないので支払う必要があるのはピッタリ百万円だけです。変な手数料などもありません。」

「それなら、まだマシそうですけど、、、」

ジー、という音が再び室内に響き、文字がビッシリと並んだ紙が出てきた。

「ただいま契約内容書を送ったのでそちらをご確認ください。」

私は穴が開くほど凝視した。しかし5分間の熟考の末、不信な点は見当たらなかった。

「なるほど。確かに善良な借金らしいですね。」

自分で言って、なんだそりゃと思った。もう既に頭は限界だった。

「ご確認ありがとうございます。それと、もう一つ注意点があるのですが、途中で結婚を取り消すことはできません。結婚した後に離婚していただく分には構いませんが。一応こちらもお送りしますね。」

好きな人と結婚できるのに取り消す?それに離婚?しかも百万円も払ってるのに?流石にそんなことはありえないだろうと送られてきた紙にさっと目を通した。

「大丈夫そうです。」

「それはよかった。他に質問はありませんか?」

「はい。大丈夫です。」

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