トレーニングジム密室殺人事件
問題編
とあるトレーニングジムで殺人事件が起きた。
「やあ雄三警部!」
「あ、町田探偵! いつもすみません」
事件現場に町田探偵と助手の萌花ちゃんがやってきた。町田探偵は、誰が見ても探偵には見えない格好をしている。タンクトップに短パン。どこからどう見てもただのマッチョでしかない。しかしこれでも
そして助手の萌花ちゃんは、どうしてこの探偵事務所で助手をしているのかと心配になってしまうほどの可愛い女の子である。
「いやいや、事件だと聞いてね。しかも現場がジムだというじゃないか。私の筋肉も喜んでいるんだよ!」
「町田さん、不謹慎です」
雄三警部と町田探偵のやりとりに、ゴホンと咳払いを一つ。助手の萌花ちゃんが釘を刺す。
「おおっと、失敬失敬! それで被害者は……」
町田探偵の言葉に、雄三警部はジムの中へと二人を案内する。
「こちらです……被害者は
当然だが、既に死体は鑑識に回されていて、残っているのは倒れていた場所を示す人の形をした白い紐だけだった。
「いやぁ、ここのジムのマシンはいいのが揃っているなぁ」
「町田さん?」
萌花ちゃんが町田探偵の足をハイヒールで踏んづけた。
「ちょっとマッチョ! 今のは痛いって!」
「ちゃんと事件に向き合ってください」
ああ、怒った萌花ちゃんも可愛いなぁ……雄三警部も事件を一旦ほったらかして、萌花ちゃんの顔に見とれていた。
「雄三警部、事件の概要を教えてください」しょうがないから、萌花ちゃんが尋ねる。かっこいいところを見せないと! と、雄三警部の顔がイキイキとし始めた。
「被害者は表狼牙さん。33歳男性。鈍器で頭を殴られています。恐らく凶器は被害者の横に落ちていたダンベル。今鑑識に回しているところです。そして事件発生当時、ジムには誰もいなかったとのことです」
「どうして誰もいなかったって言い切れるんだい?」町田探偵がようやく探偵らしいことを言う。
「第一発見者の証言からです。また入り口の防犯カメラの映像から、事件のあった時間帯は表さんしか入場していないことがわかっています。そして、このジムには窓がなく、全てエアコンで空調管理をしているということで、外部からの侵入もないと思われます」
ジムの中はプライバシーに配慮して防犯カメラは設置していなかったらしい。もしあれば事件の真相はすぐに分かったのにね、と雄三警部が萌花ちゃんに説明した。
「つまり、密室殺人。犯人はこのジムの中に防犯カメラがないと知っていた人物というわけか……」と、町田探偵はジムのマシンをポンポンと触ってみる。あっ、この人絶対筋トレしたがってるなと判断した萌花ちゃんが、再び雄三警部に尋ねる。
「その第一発見者っていうのはどなたですか?」
「表さんの後にジムにやってきた三人組の女の子たちなんだけど……隣の部屋に待機してもらっているんだ。呼んでくるね」
しばらくして、トレーニングウェアを着た女の子三人組が、町田探偵と萌花ちゃんの前に姿を現した。
三人は
――無理もない、トレーニングをしようとジムに入ったら、血を流して死んでいる男性に出くわしたのだから。しかしその後警察に連絡したのは感心だったな。私なら気が動転して逃げ帰ったかもしれない。
萌花ちゃんはそんなことを考えた。町田探偵はぼーっとジムのマシンばかりを見つめている。
「被害者とあなたたちに面識はあったんですか?」
町田探偵が何にも言わないので、萌花ちゃんが代わりに質問する。
「いっ……いえ! は、初めてお会いする方でして……ね、ねぇ! 恋ちゃん!」
「う、うん。初めてだよね」恋ちゃんと呼ばれた女の子が答える。
「そうそう、初対面!」恋ちゃんの言葉に続いて、夢羽ちゃんもそんなことを言う。
三人の言葉に違和感を覚えながら、もう少し詳しく話を聞こうとしたときだった。
「
町田探偵が突然叫んで、スクワットを始めたのだ。
――この台詞は! 事件の真相がわかったときに町田探偵がいう決め台詞!
萌花ちゃんはびっくりして町田探偵を見た。雄三警部も「もう!?」と驚きを隠せなかった。女の子三人組は「突然何? このおじさんキモいんだけど!」と変な目で町田探偵を見た。
町田探偵には、表さんを殺害した犯人が分かったのだと言う。
っていうか、話は何にも進んでないし、町田さんずっとジムのマシンばっかり見てたじゃないですか! とツッコミたい萌花ちゃんだった。
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