転生したら天魔神教の教祖の末息子であったゆえ、頂点にまで上り詰めてみようと思う

聖天

第1話 転生したら天魔神教の教祖の末息子であった

◇◆◇ 天魔神教てんまじんきょう 教主大殿きょうしゅだいでん 天魔の末子てんまのまっし◇◆◇


 突然だが転生したらしい。


「「「清浄光明せいじょうこうめい!! 大力知恵だいりきちえ!!」」」


 前世の名前はわからん。親、兄弟、友人、子供、それらは欠片も覚えておらず、居たかどうかすら定かではない。


「「「神教万歳しんきょうばんざい!! 天魔不死てんまふし!! 万魔仰伏まんまぎょうふく!!」」」


 だが、確かに存在する記憶は、この知識は、自らに起きている現象を輪廻転生りんねてんせいであると確信している。


「「「教祖様の新たなるご子息の誕生をお喜び申し上げます!!」」」


 さて、考察という名の現実逃避はこのあたりで終わりとし、現実に向き合わねばなるまい。

 

 生後すぐの乳幼児の視力はほとんどないに等しい。今の肉体年齢を知るすべはないが、明瞭な視界であるとはとても言えない。

 だがその反面、聴覚に関しては母親の胎内にいた時から鍛えられるためか、それなりに良く聞こえているようなのだ。

 まあ、何が言いたいかというと……なかなかどうして刺激的な(あるいは狂信的な、というかカルト的な)転生先ところのようだな?


 目の前にある墨色の火を見ながらそう思った。


――半刻後――

 

 儀式はまだ続いていた。

 玉座の隣に置かれた幼児用の椅子に座らされ、霞がかったような不確かな視界を下座へ向け、耳には祝詞のりと? のようなものが響いていた。


 ……は唐突に出現した。


 霞む不確かな視界の中、しかし半透明の板それは明瞭に知覚した。視覚ではなく、脳内に直接映し出されているのであろう。望めば瞑目していても知覚できた。


覇君賢王はくんけんおうシステム】


主君しゅくん

 ・名前:日月慶雲じつげつけいうん

 ・身分:天魔神教てんまじんきょう教祖きょうそ第六公子だいろくこうし

試練しれん

 ・チュートリアル1:未達成(0/2)……報酬「???」「混元値こんげんち100」

  ・状況把握:未達成……報酬「???」「混元値10」

  ・情報収集:未達成……報酬「???」「混元値10」

◆***(未開放)

◆***(未開放)

◆***(未開放)

◆***(未開放)


《【試練・状況把握】が達成されました。報酬が付与されます》

《【体質・超聴覚】を獲得しました。『混元値』を10獲得しました》


 ……なるほど。まずは情報収集を第一とし、【試練】の達成を志すべきであるか。


 チュートリアルとは、実に優しいものだ。


◇◆◇ 天魔神教てんまじんきょう 日月宮じつげつぐう 第六公子 ◇◆◇


《【試練・情報収集】が達成されました。報酬が付与されます。【試練・チュートリアル1】が達成されました。報酬が付与されます》


《【試練】が拡張されます。【試練・日々修練ひびしゅうれん】が追加されました。『混元値』を10獲得しました。【武学総論ぶがくそうろん】が開放されました。『混元値』を100獲得しました》


《新たに【試練・チュートリアル2】が発生しました。【試練・聖火拝謁せいかはいえつ】はすでに達成されています。報酬が付与されます》


《【武功・玄魔養生功げんまようじょうこう】を獲得しました。『混元値』を10獲得しました》


 一年が経過した。

 前世の記憶を思い出し、自我が確固たるものとなったあの日から、今日この日まで情報収集に努めた。【試練】を達成したことで得た『超聴覚』は大いに活用することができたと言っておこう。

 まとめた情報を語るとしよう。


 まずは本座ほんざ自身の自己紹介である。


 ……あぁ、本座がわからんか? ただの一人称だ、気にするな。

 ……いきなり話が逸れたが、本座のことだ。


 まず名前は、日月慶雲じつげつけいうんという。苗字は日月じつげつ、名は慶雲けいうん、本座は名乗ることは出来ぬが、本姓はてんである。

 天魔神教教祖の六男にして末子であり、兄が五人、姉が二人。その内、本座の同母兄にあたる長男は夭折しているらしい。

 天魔神教の教義より、本姓の天を使うことができるのは教祖である【天魔】の地位に就いたことのある者のみであり、現在使用しているのは教祖である父親と、太上教祖たいじょうきょうそである祖父だけである。

 ゆえに本座は日月慶雲じつげつけいうんと名乗ることとなる。もっともまだまだ赤子と言って差し支えない現状、喋ることなど到底かなわぬゆえ名乗ることなどない。

 呼び名も『六公子様ろくこうしさま』と呼ばれるのが常だ。


 次にこの世界についてである。

 どうやらこの世界は十中八九、武功ぶこう侠士きょうしの活躍を綴る中華武侠ぶきょう小説の中のような世界であるらしい。

 

 確信を持って言えぬ理由は、本座にのみ見ることができるこのシステムに起因する。

 本座に存在する前世の記憶では、これはどう考えても剣と魔法の世界に転生した物語において、よく登場するようなステータスプレート的な存在であり、中華武侠世界にはいささか以上に不釣り合いなのだ。


 ……これのせいで、どうにも世界観が掴めん。


・武侠小説とは


 武侠小説とは、中国文学での大衆小説のジャンルの一つ。

 武功ぶこうと呼ばれる気(=内功)を利用した武術を使い、義侠ぎきょうを成す人々を主人公とした小説。

 必ずしも、主人公が義侠を成すわけでは無いが、そのジャンルには独特な世界観が存在する。


 まず義侠を成す人々がいる界隈のことを【武林ぶりん】と呼び、そこに属する人々は【武林人ぶりんじん】と呼ばれる。


 さらに、【武林人ぶりんじん】にとっての世間や表舞台を【江湖こうこ】と呼び、多くの【武林人】はここで活躍することを夢見る。


 武林には、正義を自称し、名誉や礼節、体面を重んじる【正派せいは】、力を信奉し正派において絶対的な悪とされている【魔道まどう】、正派とは認められず、かといって魔道でもない【邪派じゃは】が存在する。


 【正派】には、仏教や道教などの宗教を基にし、道士や仏僧で構成された武力団体である【門派もんは】や、正義の行いを心がけつつ一族での繁栄を目的とした【武家ぶけ】が存在する。名高い門派を【名門めいもん】、名高い武家を【世家せいけ】と呼ぶ。


 【魔道】には、後述の【天魔神教てんまじんきょう】と【血教】が存在する。


 【邪派】とは、正派以外のすべてという区分の仕方であるため、数多の【門派】や【世家】が存在する。まれに【邪派】の門派が集まり、【邪派連盟じゃはれんめい】を設立することもある。


・天魔神教とは


 天魔神教とは、【弱肉強食】であり、【強者尊きょうしゃそん】を基礎とし、【天魔てんま】を神と崇拝し、【聖火せいか】を信仰する、拝火教ゾロアスター教から派生した宗教であり武力団体である。


 【天魔】を頂点に、武功の強さを基準に序列が形成されている。武功の強さごとに位階が設定されており、その位階を基準に職務が割り与えられる。


◆◇◆教徒の位階順位と主な役職(上位から)◆◇◆

天魔てんま(教祖)

魔尊まそん(高位長老)

魔君まくん(長老・護法隊ごほうたい隊主)

巨魔きょま(護法隊隊員・護教隊ごきょうたい隊主)

魔将ましょう(護教隊隊員・武力団ぶりょくだん団主)

魔頭まとう(武力団団員・班長)

魔卒まそつ(班員)


例外・天魔血脈を持たずとも【聖火】への疎通を可能とする【神女】

太上神女たいじょうしんにょ(現教祖の母親)

神女しんにょ(教祖の子供(公子・公女)の母親)

神女候補しんにょこうほ(適正はあるが、教祖の子供を産んでいない存在)

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