第10話 板雪虫
「初雪の予報か・・・」
テレビの天気予報によると、明後日から初雪が降るらしい。
「あのスプレーどこに置いたんだったかな」
冬に使う小物をしまっている棚から、スプレー缶を探しながら去年のことを思い出す。
「あの日も初雪の降った日だったな」
遡ること去年、打ち合わせの帰りに近所のお店で少し買い物に寄って行った所、ちょうど雪が降ってきてしまって少し小走りで帰宅していた時にその事件は起こった。
プルルル・・・
走っている途中に、ポケットにしまっていたスマホから着信音が鳴って僕は電話に出た。
「もしもし、あぁ、君か、どうしたんだ?」
「あのぉ、編集長が締切の日程について・・・」
彼女が話している途中で電話の音がザザーッという雑音だけになり、途端にスマホの画面もいつの間にかつかなくなってしまった。
僕はいきなりの出来事にかなり驚き、何事かとスマホを見ると表面が凍りついていた。
ますます状況が飲み込めなかったが、とりあえずスマホがこれ以上変にならないようにポケットにしまって急いで家へ帰り、テレビをつけて現状把握をしようとした。
どうやら、僕だけでなく外でスマホを使用した人たち全員が同じ現象に悩まされているようで、研究員達がわざと凍らせたスマホから原因を探っている所らしい。
とりあえず、今はどうしようもないため、しばらくは家の据え置き電話で編集部と連絡を取り合い、今月の原稿も郵送で送った。
一週間ほど経った頃に、テレビの速報で原因についての説明があった。
「今回原因を突き止めることに成功したそうですが、それは一体なんだったのでしょうか?」
「えー、私たちは凍らせたスマホを最初調べた所、何か虫のような生物の死骸を発見する事ができ、その後に雪を採取して調べると新種の生物を発見致しました」
「その後様々な実験を行ったことで、この生物特有の特徴についたわかったのでそれについて説明します」
「それはズバリ、雪に付着して地上に降り立ち、スマホに触れることで周りを急速に凍らせながら死んでいく事がわかったのです」
「なぜ空からいきなり現れたのか、なぜスマホだけに反応するのか、またどこからきた生物なのかの調査はこれからですが、雪の降っている日にスマホを取り出すのは極めて危険と言えるでしょう」
「私たちの研究所では対策用の商品も開発中ではありますが、現時点では対策不可でございます」
「みなさま、外出の際はどうかお気をつけて」
「駒込研究所の皆様ありがとうございました、えー、壊れたスマホの保証については携帯会社が全額負担だそうなので皆様ご安心ください」
その後、様々な国でその生物の存在が確認され、携帯会社は大損失を受けたらしい。
「対策用のスプレーはできたと言え、いきなりこんな生物が降ってくるなんてのは本当に恐ろしいな」
「もしかしたら、思っているよりも神様は人間を見ていたりして・・・冗談だが」
スプレー缶を探しながら独り言を呟いた。
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