リカ

せかいのはら

01

いつから血と肉になったのか。


わたしは見た目血と肉。流れるのは赤い血だ。

きっとあの人も同じ血の色なんだと、目の前を何食わぬ顔で通り過ぎる裸を見ていて思う。女の裸体は見ていてみぐるしい、それはデブとかスリムとか

そいう言葉があるからなのか、はたまた自分を抜きにして客観的に見ているからなのか。どちらにしろ風呂場で見る女という生き物は、好きではない。


そういう思考が曇らせているのかもしれない。


わたしは彼女らの仲間なのか。

確かめるように目線を下げる。

お腹を眺めも目が合い

「どうでもいいや」

体を気にしてしまう悪い癖を、抑えようとする。もう遅いが。


わたしは幼いころあそんでいた人形リカを思い出す。

わたしは彼女に服を着せていなかった。

それはきっとリカのきれいな体に服を着せるのが惜しかったのかもしれない。

さも、リカの体はきれい。

ツルツルしていて、すらっとしていて、笑ったら歯並びもいい。

リカにないものをわたしのお腹は持ってる。

わたしにないものをリカは持ってる。

やめよう。

顎が水面の一枚板を感じ、顔を上げる。

「暑い」


母はまだつかっているのだろうか。

ザバァっと勢いよく黄色い浴槽から出る。

休日だからか、人が多く、わたしの視力ではみんなが猿にも見える。

猿がお風呂にサウナに吸い込まれ、集合体。

笑みを殺して、そこから早々に立ち去る。

おなかの手術跡は、治って生きているわたしだけの印。タオルなんか必要ない。

前だけを向いて私は歩く。


裸だけが真実。




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リカ せかいのはら @WR_wara

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