はなび、ら

古井さらさ

はなび、ら

溜まり水をかぞえてゆけば端にもうついてしまった からだでかえる


間違えて花火に口付けるように自己紹介をしていた、してる


水あそびのあとのあなたと紙あそびしてすこしずつ眠りに混ざる


草の卵をあたためる土がいて低体温のからだものせる


手の長さを比べてすこし遠くなる 下敷きをよくなくしてしまう


ペットボトルの水が動いてしばらくは完結しない物語


図書館はじんわり冷えて食べたことのない果物の密度 さわって


膝掛けにちょうどよい色合いの嘘だったからいい アイスも食べた


急行にのってみている夕焼けと思ってしまうあなたの話


まばたきもせずに見ていて深くなぞられるキリンの鼻のあたりが


対岸にあなたをおいてさっきから川の流れる音がしなくて


自動販売機に深く手をさしてみかんジュースを取り出す時間


似てるね、と言われ違いがはっきりと浮かんでしまう 青すぎる空


揺れながら立っている その逆光が目を皿としてひかりかえして


手に入れたもので翼を編むことのつめたさ 炭酸水の跳ね方


ちぎれそうな風のなかちぎれないものが多すぎる 花ばかり溶けて


朝までを過ごしたあとのサンダルがすこし小さくなった気がした


花の咲く匂いが増して僕の手首にからみつくビニール袋


落ち切った線香花火をしばらくは見つめてあなたに口付けていた


立ち止まってみれば水平線を抜けてゆく夏休み 手を繋いで

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はなび、ら 古井さらさ @hakobune09

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