第2話


そして補習当日の日曜日がやってきた。


日曜日のため、学校は閑散としている。

今日は運動部の練習もないようだった。


俺は華音と並んで校門をくぐった。


「あんた、もうちょい早く起きなさいよ。いつも朝ごはん食べられてないじゃない」


「朝は栄養より睡眠を優先したいんだよ」


「おばさんがかわいそうでしょ。あんまりひどいと、今度は部屋の中にまで上げてもらうからね」


「それはマジで勘弁してくれ」


そんなことを話しながら、昇降口の靴箱を開ける。


俺と華音は靴箱の位置も隣同士だ。


靴箱の位置は決められておらず、どこを使ってもいいのだが、たいていの生徒は入学時に使い始めた場所をなんとなく使い続ける。


俺と華音もそうしていた。


教室へ着くと、既に何人かの補習者が来ていた。


俺たちのクラスだけではなく、学年合同で補習授業を行うようだ。

教室内には十人程度の生徒がいた。


といか俺たちのクラスの生徒は誰も来ていない。

俺と華音だけだった。白雪はどうした。


「やあ、遊真」


一人の男子生徒が俺に手を振る。


こいつこそがこの恋愛ゲームの主人公、吉宮明斗だ。

俺の親友で、来年の春のゲーム開始からモテモテになるはずの男だ。


「おう、明斗。おはよう」


俺も明斗に挨拶を返す。


こいつとはクラスは違うが、マメに連絡を取り合っている。

今回の補習の件も既にお互いに知らせて笑い合った仲だ。


主人公だけあって、いい奴なんだよなぁ。

正直これからモテるのもわかる。


やがて七美先生が教室に入ってきて、補習授業の説明を始めた。


「これからプリントを配ります。前半はこれをやってもらって、後半に試験をします。今度は赤点にならないように、しっかりやるように」


そう言って、七美先生がプリントを配り始める。


その時、カラカラ……と教室の後方で音がして、白雪が入ってきた。


白雪は忍び足で一番後ろの席に着くと、ほっと胸をなでおろした。


そして何食わぬ顔で回されたプリントを受け取る。


七美先生が溜息をつく。そして壁の時計を指して白雪に言った。


「白雪さん。間に合ってませんからね」


時計の針は補習の開始時間を5分ほど過ぎている。


「えっ……?あ、はい……」


何かとても理不尽な事を言われて戸惑うかのように返事をする白雪。

それだけ見ると、悪徳教師に虐められる悲劇のヒロインのようだ。


「いいから、プリントをやるように。真面目によ。後で試験をするからね」


しかし七美先生は惑わされることなく、淡々と告げた。


そう、忘れてはいけない。

白雪サラは悲劇のヒロインなんかではない。ただのアホだ。


「はーい……」



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