異世界誘拐事件録 chapter0

第13話 王としての人生

　かつて、多額な懸賞金がかけられていた魔王

　そんな懸賞金目当てで魔王に挑む者たちを、世界では勇者と呼んだ

　そんな勇者の中でも、別格に強い者がいた、ルーシェだ。

　ルーシェは各国の戦争に加担し、真の世界平和を望み、人々からは戦争の女神と慕われていた

　ルーシェはアルタイル王国出身で、魔物や懸賞金を貯めてはアルタイル王国の住民に献上していた

　素行の悪いクライス王子は父、アルタイルの目を盗んでは、恋人のルーシェと時間を共にした。クライスのメイドがその事実を隠蔽してくれていたのだ

　アルタイル城　王子の自室

　二人はベッドで横たわっていると、クライスはジュっと煙草に火をつけた

　ルーシェ「どうしたの？浮かない顔だね」

　そんなクライスを心配してぎゅっと抱くルーシェにクライスは打ち明けた

　クライス「なんか、時々嫌になるんだ。王として定められた人生が」

　クライス「周りの奴らは好きな職に就いて、好きな子と結婚が出来る。

　けど、俺は王子だ。許嫁がいて、将来は王になるしかなくて」

　クライス「父上は俺のことをただの跡目としか思ってない、普段は会話すらまともにできねえ、信じたくない、信用されていないことを」

　クライス「もう逃げ出したくなるよ」

　そう言ってクライスは下を向いた

　ルーシェ「じゃあさ、一緒に逃げようよ」

　クライス「は？」

　クライスは驚いた

　ルーシェ「姿をくらますの、そしてどこか遠い山小屋で一緒に生きる」

　クライスはホッとした顔をして「それもいいな」と言った

　クライス「でもまずは魔王を殺してからだ」

　ルーシェ「それが終わったら、一緒に逃げようね」

　クライスは頷き、「ありがとうな」と言い残した

　数日後、ルーシェの妊娠が発覚した、クライスとの子供だ

　王家の隠蔽により、国民にこの事実が知られることはなかったが、肝心の魔王退治は無期限の延期となった

　4か月後　アルタイル城　医務室

　冬の風が吹く中、ルーシェはメイドや執事のサポートを得て、無事出産を遂げた

　ルーシェ「見て？カイラ、この人がパパだよ」

　出産を終えたルーシェは疲れた様子で子を抱きかかえる

　クライス「ありがとう」

　クライスは子を抱き、そう言い残した