異世界誘拐事件録 chapter0

明智吾郎

第1話 少年

 昭和25年 5月10日 PM17時

 ガタンガタン...

 通りすがる電車の音で目が覚めた


 タロー「ううん...」

 僕はゴミ捨て場で目が覚めた。暴漢に殴られ捨てられた


 あれからどれくらい寝たんだろう


 僕は下町に住む赤羽太郎、当時5歳の子供だった。

 みんなからはタローって呼ばれてる。

 僕にはお姉ちゃんがいた。お姉ちゃんの名はみゆき


 お父さんは警察官、お母さんは胃癌で僕が2歳の頃に死んでしまった


 お父さんは普段交番勤務で、夕方になると小学生の下校を見守っている


 お父さんは厳しく、僕たち姉弟に接していた。些細なことで僕を叩いたりした。この時の僕は、仕事のうっぷん晴らしに僕たちを利用しているとは思いもしなかった。


 お姉ちゃんと僕はお父さんの圧力に耐えながら、日々慰め合う日々を送っていた


 そんなある日


 お父さんが16歳の女子高校生への性的暴行が発覚し、逮捕された


 タロー「やったぁ...」

 僕は正直嬉しかった

 これで僕はお父さんと離れられる、そう思った


 二日後、埃被った狭い自室で朝目覚めると


 お姉ちゃんの姿がない。家のどこにも。


 きっと朝早くに登校したのだろう、そう思うようにした。


 その日の夜


 僕は毛布に包まって家に残ってた菓子パンを頬張った


 バリン!


 と奥の和室からガラスが割れたような音がして、

 急いで和室の戸を開けた


 窓ガラスが投石で割られ和室には鋭利な破片が何枚も落ちていた


 僕は怖くなって自室に駆け込んだ


 毛布に包まり、カタカタと震えながらお姉ちゃんの帰りを待った


 翌日、あのまま寝てしまった。目が覚めて、台所へと向かうもお姉ちゃんの姿はない


 僕はお姉ちゃんを探しに玄関を出た。玄関先の家の外壁には落書きが施されてあった


「変態家族」「犯罪者は出ていけ!」「消えろ」


 僕は怖くなって、家を飛び出した。


 走っていると、ドシン!と不良高校生にぶつかってしまった


 睨みつける不良に僕は「ご、ごめんなさ...」と言いかけた途端


 ドゴ!と顔を数発殴られ、隣にあるごみ捨て場に吹っ飛んだ


 不良は「クソが」と言い放ち高校生は歩き去っていった


 目が覚めるともう夕方だった


 タロー「お姉ちゃんを探さないと...」

 あざだらけの顔でよろよろと立ち上がり、とぼとぼと歩き始めた


 夜になると下町郊外の廃倉庫にたどり着き、そこで夜を過ごすことにした


 倉庫の中には何も無く、最奥に木製の扉が立てかけてあった


 タロー「あれ...」

 僕が見つけたのは普段お姉ちゃんが付けている桜の花の髪飾りだった


 タロー「お姉ちゃん...?そこにいるの...?」

 僕は立てかけてあった扉を開けた


 タロー「なに...これ...」

 目の前には綺麗な海の街が広がっていた


 日本とは思えないほどの異質で変わった雰囲気、僕は引き込まれるようにその世界に足を踏み入れてしまった。

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