第12話 加藤段蔵、現る
(12)
狐の白面が指を四本にする。
――さぁ、
真帆の意識モードが変わる。
先程迄、急くようにマッチ棒君へ会うべく駆け出していた真帆の気持ちは、先程自分に吹き付けた強風の所為か、その気持ちはどこかに飛ばされたのかもしれない。
いや…それよりもこの不思議な体験という話のネタをしっかりと押さえて、後であのマッチ棒君に話したいという
逢魔が時と言うのは
帰る時に帰らねば魔に遭遇する。
そんな時を逢魔が時と言うのだが、ひょっとすると難波っ子には少し意味が違うのかもしれない。
――おもろいネタなら命貼るでぇ
という、難波っ子の性根が聞こえてきそうだ。
「ほな、答えてくれるん?」
真帆の強い声音が飛ぶ。
その声音に指を折って応酬する狐の白面。
「いいよ、先ず一つ目」
手を伸ばしてそれからゆっくり指を折る。
「僕の名は加藤段蔵、三年演劇科の生徒さ」
狐の白面は迷いも無くはっきりと言った。
――かとうだんぞう?
(意外!!このご時世に何と和的な名前なん)
真帆の目がパチリと瞬いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます