ユキマチの塔

@Nissyu_3

吸血鬼の王

チチチ、と鳥の鳴き声がする。それにふぁ、と小さく欠伸を溢しながらゆっくりと寝床から起き上がった。木漏れ日程度しか射さない日差しはここに住ませている子供を思うなら増やすべきか、しかしこれ以上増やすのはまだ俺には苦しい、等と考えていると背後から隠れて俺に近付く気配が一つ。まだやる気があるのかとククッと笑いながら気配の方へ視線を向ける。


「隠れきれてねぇぞ、俺に一撃やりてぇなら魔術も使って隠せ」


その気配…ユウは観念したように柱の後ろから出てきて不機嫌なことを隠しもせずに俺を見る。


「…はい、朝食をとってから鍛錬に行ってきます」


そう告げると走って食堂へ向かう。揺れるポニーテールを眺めながら魔術師じゃねぇし切らせてもいっか、なんて考えているとガチャリとすぐ近くの扉が開かれ中からカイが出てきた。まだ髪を纏めておらずずるずると髪を引きずっている。


「おはようございます」

「おう、はよ」

「ソラをおこしてきますね」

「よろしくなぁー」


カイはゆっくり歩きながら魔術で髪を纏めていく。器用だな、なんて思いながらそのまま食堂に着くと一人一人違う料理が置いてある。俺はサーモンのマリネを食べてる妻…ニーシャの首筋にキスを落としてゆっくり牙を突き立て、溢れ出る甘い血をゆっくり飲んでいき、もう、と彼女が白旗を立ててのを聞きゆっくりと牙を抜く。まだ少し残る血液も舐め取りニーシャの頬にキスを落とすと彼女も俺にキスを返してきて胸が暖かくなる。


「おはよう、ゼロさん」

「あぁ、おはようニーシャ」

「…私も、ルフさんも、見てるのに」

「テメェもそろそろ見慣れてるだろ」

「思春期って知ってる?」


ユウとルフの言葉を聞こえなかったふりをしながらニーシャといちゃついているとドアが開かれカイに抱き上げられながらソラが入ってきた。


「おはよう!父さん、母さん」


明るい笑顔で俺達に笑いかける愛息子に俺達も笑いながら一家団欒を楽しむ。最愛の妻であり最高の眷属であるニーシャ、ニーシャとの唯一の息子であるソラ。捨て子だった所を拾い育てたユウに複雑な事情でソラと共に生きなければいけないカイ、俺に憧れて俺の眷属になることを望んだルフ。愛おしい家族に囲まれながら俺ははぐれ吸血鬼として幸せな日常を過ごしている。

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