第7話 優雅な華の儚き花

……そうか…君も苦労して来ているのだね…それで君は…今でも、セシリア・ローズ嬢を愛しているのかな?……




(食堂を後にした俺と橘さんは、社の屋上に来ていた。離れた位置には数名の社員はいたが、とても聞こえる距離ではなかった。そして彼女は煙草を携帯灰皿に捨てると、俺の方を振り返って来て、険しい表情で述べて来た。その彼女の言葉に俺も真剣に応えた)




はい!!愛しています。この言葉に嘘偽りは、決してありません!!




(彼女の父親に反対され、接近禁止令まで言い渡された。それでも、俺は彼女の事を愛していた。周り全員を敵に回しても…俺は彼女を守る…。そう…彼女と出会った図書館のテラスで俺は彼女に誓った筈なのに…俺は彼女の手を離してしまった)




ふふっ…それなら…彼女もきっと同じ気持ちだよ…。君は…乙女心というものをわかってはいないな…。誓い合った愛情は、そう簡単には断ち切れないものだよ…。ましてや、他者の手によってはね…。彼女が別の男性の子を産んだ?フンッ…バカバカしい!!あり得ないな…。私から言わせれば…もしもその程度の女なら…秘宝と呼ぶにはおこがましい乙女だよ!!




(その言葉を聞いた俺は、彼女の胸倉を掴みに行ってしまっていた。それでも彼女は表情一つ変えずに、俺に冷静に言葉を返して来た。その彼女の対応に、俺は手を静かに離してしまう)




どうした!?彼女を侮辱されて怒ったのなら怒り給え…そして殴りなさい…この私を…。いいかい、細野君…君は彼女を愛していると言った。そして君は彼女と別れた時に愛し合ったのだろう?…それなら何故…その一輪の望みを掴もうとしない!?…子供が君とローズ嬢のお子と、何故考えない!?




(その言葉を聞いて、俺は膝から崩れ落ちてしまっていた。彼女自身を信じ切れていなかった。自分自身が憎くなり、屋上の地面に膝を着いて頭を抱え始める。そして心の中でセシリアに謝罪をしていた。申し訳ないと…)




立ちなさい…細野君…私が話した事は、あくまでも仮説に過ぎない…。後継者と呼ぶものが、お子なのかも私達にはわからないのだからね…。全ての答えは、彼女とローズ家が来日すればわかる事だよ…




(俺はゆっくり立ち上がると、俺のスーツの埃を彼女は優しくはたいてくれた。そして俺は橘さんに感謝の言葉と、いくつか聞きたい事を聞き始める)




橘さん、ありがとうございます。俺の迷ってた心を晴らしてくれて……。橘さん、一つ聞いてもいいですか?何故、貴女はそんなにお強いんですか?




(俺の言葉に、彼女は静かに視線をずらして笑みを浮かべると、懐から煙草を取り出し、咥え煙草をすると、俺の背中を叩いて去ろうとする。その俺の背中に、彼女は呟いて…教えてくれた)




…遠い…忘れていた…過去の思い出を、君とローズ嬢が思い出させてくれたからだよ…それではまたな…細野君…




(そして彼女は髪を靡かせ(なびかせ)ながら、屋上から去り部署に戻っていた。そしてその日の夕方、空港にはローズ家の自家用飛行機が到着した)

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