第4話 麗しき乙女の決意
…ねぇ…クリス…こんな思いをするのなら…、私…あの人と…出会わなければ…よかったわ…
(日本への出立の日程が決まると、私は自室の椅子に腰かけて、中庭で元気に使用人達と遊んでいる愛しい息子、シャルルを見つめていました。私の椅子の背後に静かに立ってくれている初老の男性執事の長でも男性であるクリス、彼には本当に感謝している。クリスと数名の使用人達だけは、彼の事を決して侮辱したりしなかった。それどころか、私とあの人を陰ながら応援してくれていました。でも、今では、それが本当に正しかった事なのかも、私にわからなくなって来ていました)
セシリア様…私達は…旦那様に処罰を受けるを覚悟を持って、お嬢様とあのお方に手を差し延べたのです…少なくとも私は悔いてなどはおりませぬよ…あの…シャルル様の笑顔こそが……私達の…思いそのものだと思っているからです…
(クリスの言葉を聞いていた私は、涙を流していました。私はこの家にとっては、人形に過ぎないのだと…御父様の言う事を聞いて…世間体に恥じない生き様を国民の皆様に示さなくては…家名に傷が付くと幼少期より、父上から教え込まれて来ました。そんな中で私は…図書館であの人に出会いました。彼は私を決して特別扱いなどしませんでした。それどころか、他の方達は決してしない、私を叱りつけてくれたのです。それが私にとっては、何よりも嬉しかったのです)
…クリス…私…私達は…決して結ばれる事のない夫婦です…そして私は、あの子の母であり…あの人は父親…それだけは覆る事のない事実なのですよね…
(本当は彼からプロポーズを受けた時に、私は正直迷いました。私と結ばれて彼は本当に幸せになれるのか、その答えを出せずにいた私に、彼は言って下さったんです)
セシリア、幸せは決して一人では掴み取る事の出来きないものなんだよ…。幸せは…寄り添う者と…心から信頼する者と手を取り合って…掴み取るもの…。だからね、セシリア…俺は…君の両親に反対されることになろうとも、怖くないよ?心と心が通じ合っていれば、俺達はずっと一緒にいられるんだから…ね!
(会いたい…よ…。貴方に…やっぱり私、まだ貴方が傍にいないと駄目みたい…ごめんなさいね。弱い女で今…貴方はどうしていますか?…私は貴方と別れさせられた後、何回も何十回も縁談の話を持ってこられたわ。でも全て断っているのよ。きっと私達は再び出会えると信じているもの…)
そうよね……清二……
(3年振りに私は彼の名を口にしました。本当は彼の名を口にすることすら許されない事になっています。そけだけ私達は父の逆鱗に触れた。父は清二を未だ許さずにいたのです)
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