第3話 悲しき涙をコップに込めて
お前、たまには合コンに付き合えよ…お前がいるだけで場は和むんだからよ…
(仕事終わりに俺は同僚から合コンに誘われるも、毎回遠慮して断わり続けていた。でも、今日だけはしつこく言って来たものだから、俺も一回だけならと思い、仕事終わりに合コンに参加した。そして、飲み屋で男女ペアになって楽しく飲んでいる中で俺は、一人でつまみを口にしながら飲んでいた)
人数合わせかよ…それであんなに食ってかかって来てたのか…やれやれ……
(別の席で少し酔って大声ではしゃいでいる同僚を遠目に見ていると、俺の傍にリクルートスーツを着た俺よりも少し年上の女性が、隣に腰掛けて来た)
隣、失礼するよ…あの男は君の同僚かな…品がないね…彼は…がさつで…。周りの空気を読めない男だね…
(確かに彼は今は酔っ払ってはしゃいでいる。でも俺はあいつの本当の姿を知っている。俺よりも周りの目を気にして相手の事を大事に思う、心優しい男なのだと。そんなあいつの一面だけしか見ていない女性に、同僚を侮辱する様な言葉を言われたくなかった。俺は言い返そうとした)
フッ…悪い悪い。冗談だ……君が余りにも暗い顔をしている様だったからね。からかっただけだよ…これで君が友人の事を大事に思っている事は分かって安心したよ…さぁ、気を取り直して乾杯しないか…私と君でな…
(この女性は強い女性だなと言葉から感じ取る事が出来た。その理由は、彼女の心の中に決して倒れない一本の芯のようなものがしっかり立っている人だとわかったからだ。そして彼女の持つコップに軽く当てると、コップを口に当てて酒を飲み始めた。すると、居酒屋のモニターでニュースが報じられた)
来月、欧州ヨーロッパから日本でも有名な、名家のローズ家が来日されます。来日の目的は、後継者を日本の皆様にお披露目する為と報じられています。あのフランスの秘宝と呼ばれるセシリア様も来日為さるようで、今から大盛り上がりの様です。それでは、次のニュースです…
(その報道を聞いた俺は、手元からコップを落としてしまった。彼女が日本に来る。でも俺は彼女に会う事は出来ない。その理由は、彼女の父親から、セシリアに近寄る様なら法的処罰も視野に入れると言われていた為だ。隣で一緒に飲んでいた女性は心配した表情で、俺の肩を何回も揺らして来ていた)
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